大学4年の春。
私は、ある大手小売業から内定をもらいました。
将来を漠然としか描けていなかった私は、就活でも明確な理由なんてなく、「名前を知っていて、自分にもできそう」というだけでエントリーしていました。
普通なら、そんな浅い学生は落とされて当然です。
それなのに、毎年たくさん採用するその会社には、なぜかスルスルと内定まで進んでしまった。
今思えば——この時点で「1年で同期の3割がいなくなる」と知っていたら、入社しなかったはずです。
まあ、後の祭りですけどね。
📌 体験者プロフィール
・性別:男性
・業界・職種:大手小売業(店舗業務 → 支店業務 → 店長)
・雇用形態:正社員(新卒入社)
・在籍期間:2年
・年収:300万円
・経歴:店舗配属半年 → 支店業務半年 → 入社1年目で店長任命 → 2年で退職
・退職状況:退職済み
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
配属初日から漂っていた、嫌な予感
研修を終えた私は、数人の同期と一緒に、とある店舗へ配属されました。
すぐ上の階には、支店のお偉いさんたちがいる。
彼らは頻繁に降りてきては店舗をぐるりと一瞥して、当時の店長に小言を言い残していきました。
新人の私に、その光景へ言えることなんて何もありません。
ただ「ここは何かおかしい」という嫌な予感だけが、ずっとありました。
そこから、客と上から降りてくる上司に毎日いびられながら、業務をこなしていく日々が始まったんです。
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接客未経験で繁忙店配属、慣れるまで3ヶ月
私はそれまで、接客の経験がまったくない状態で入社しました。
しかも、配属された店は、その地域でも一二を争う繁忙店だったんです。
通常業務に慣れるまで、3ヶ月ほどかかりました。
業務の中身は、本当に多岐にわたります。
・レジ打ちなどの基本接客
・催事の準備、計画
・新人研修の運営
・新入社員の課題管理
正直、新人でなくても手が回るとは思えない量でした。
当時の店長は、毎日のように転職サイトを覗いていました。
ストレスが溜まると、バックルームの商品が入った箱を、何度も殴っている。今思えば、店長自身がもう限界だったんだと思います。
スタッフの方は、みんな気のいい人たちばかりで。
それだけが、唯一の救いでした。
半年で支店業務へ、雑用係としての日々
そうして半年ほどが過ぎた頃、店舗から上の支店業務へ配置換えになりました。
やっと店舗の仕事に慣れてきたところで、また経験値ゼロからのスタートです。
支店での半年間は、まるで雑用係でした。
・支社へコーヒーを届ける
・ゴミ集め
・書類のシュレッダー
・オフィス掃除
こんなことをするくらいなら、店舗にいたほうがましだ。
そう感じるほど、虚無な半年でした。
催事の時期には、朝から晩まで他店舗の応援に駆り出される。
日付が変わるまで、着ぐるみの中に入っていたこともあります。
とにかく売り上げを上げるために、無理やり数字を作る。
そんな風土が、骨の髄まで染みついた会社でした。
入社1年目で店長任命、引き継ぎ30分
ただ、この会社の本当のブラックさが見えてきたのは、支店業務を終えて入社1年が経った頃でした。
店舗経験半年の私が、ある店舗の店長に任命されたんです。
引き継ぎの時間は、約30分。
その30分のあいだに質問しても、大半は「分からない」と返ってきました。
・書類の保管場所
・鍵の管理
・スタッフのデータ情報の見方
何もかも分からないまま、店長としての勤務が始まりました。
極めつけに、前任者が未達のまま放置していた催事目標の期限が、すぐそこに迫っている。
上からは「なんとかしろ」と叱責される始末でした。
店長としての1年は、地獄だった
そこからの1年は、本当に地獄でした。
催事や突発の業務が多くて、通常業務がまるで回らないので、残業は当たり前。
店舗に2日間、ほぼ泊まり込みで滞在したこともあります。
催事のギフトやクリスマスケーキ、おせちのノルマは、軽く数百単位を超えていました。
足りない分は諦めつつ、何度も自費で買って数字を埋めた。
あまりに理不尽な数に耐えかねて直属の上司に相談したら、返ってきたのは「耐えるしかない」の一言だけ。
到底こなせない目標を、明確な道筋もないまま、店舗経験半年の新人が通常業務を回しながら背負う。
どう考えても、無茶な要求でした。
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取材・外回り・店舗内反発の、三重苦
店長業務に加えて、取材対応や突発の外回りも、次々に振られました。
通常業務に支障が出れば、当然スタッフからも反発が起きます。
「またいないんですか」「業務が回りません」。
そう言われても、それは現場で起きていることだから店長のお前が解決しろと、上からは軽く流されるだけ。
理不尽な客対応もありました。
明らかにこちらに非がない場面で、罵声を浴びせられたこともあります。
そうやって、精神が少しずつ摩耗していきました。
心が限界を迎えた、瞬間
最終的に、ある催事の日のことでした。
深夜まで業務をこなしたあと、目標未達を、日付が変わるまで上司から説教された。
その瞬間、私の中で何かがプツリと切れました。
「もう無理だ」と、心の底から思いました。
私はその会社を、2年で辞めました。
退職を決めた、本当の理由
辞める決め手になったのは、あまりに数字至上主義で、それを明らかに経験不足の新人へ丸投げして、結果だけを見て判断する。
そういう会社の体質に、もう続けられないと感じたからです。
ルールや制度がはっきり定まっていない会社は、世の中にたくさんあります。
明らかに理不尽なノルマも、今の世の中に存在します。
全部がそうだとは言いません。
でも、薄利多売で利益を出さなければならない小売業が、ブラックな一面を併せ持っているのも事実です。
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これから小売業を目指すあなたへ
これから小売業で働こうとしている人に、伝えたいことがあります。
もし今、私と同じような状況にいる人がいるなら。
できれば、心身が限界を迎える前に、そういう会社とは早めに見切りをつけてほしいと思います。
この世に、会社は一つではありません。
同じ職種でも、ちゃんと規則やルールを定めて、健全に運営している企業もあります。
そういうホワイトな会社が増えてくれることを、私自身も願っています。
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新卒で入った会社に、潰されそうなあなたへ
店舗経験わずか半年の社員に引き継ぎ30分で店長を任せ、前任者が放置した未達ノルマまで丸投げする。育成を飛ばして責任だけ前倒しする職場は、本人の力量以前に現場が壊れていきます——「同期の3割が1年で消える」のは、その帰結なのだと思います。
合わない職場を早く見切るのは、逃げではなく自衛です。接客や店舗運営で培った力は別の業種でも十分に通用しますから、一人で抱え込まず、今の状況を一度だれかに言葉にしてみてください。
困った時の選択肢
【20代で今の会社から抜け出したい方へ】
新卒で入った会社が合わなくても、20代・正社員経験ありの「第二新卒」は、未経験の別業種にも十分にチャンスがあります。
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そのほか、状況に合わせて選べる窓口です。
・もう自分では退職を言い出せない、引き止めがつらいという方は
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・辞める前に、ほかの業界の働き方や年収・口コミを調べて比べておきたい方は
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・心や身体が限界に近いと感じる方は、抱え込む前に、自分の気持ちを整理するセルフケアから
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公的な窓口としては、総合労働相談コーナー(厚生労働省)や、よりそいホットライン(0120-279-338)が無料で相談に乗ってくれます。
働き方や次のキャリアの選択肢を、まず一冊からつかんでおく方法もあります。
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