素手で触れた土器の欠片は、思っていたよりずっと軽くて、ずっと脆かった。
指に少し力を入れただけでぱきっと割れてしまいそうで、水道の前でずっと息を止めていた気がする。
これは、縄文土器がたくさん出る土地に住んでいたことがきっかけで、半年だけ歴史研究所のパートを経験した私の話です。
📌 体験者プロフィール
・業界・職種:歴史研究所(発掘資料の洗浄・保存処理・データ入力)
・雇用形態:期間限定パート(ハローワーク紹介)
・企業規模:財団法人(半官・利益を追わない組織)
・在籍期間:半年契約→3ヶ月延長で約9ヶ月
・退職状況:契約満了で退職済み
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
ハローワークで紹介された、財団法人ののんびりした空気
もともと縄文土器がたくさん発掘される土地に住んでいて、綺麗な模様の土器を間近で見たり触ったりできることに、ただ単純に楽しさを感じていました。
きっかけはハローワークです。半年間の期間パートとして紹介されたのが、この歴史研究所でした。
財団法人だったので、半官という感じで福利厚生がしっかりしていて、半年間の期間パートでも有給休暇がもらえるくらいでした。利益を追求する民間企業と違って、わりとのんびりとした雰囲気だったのを覚えています。
半年経った頃、まだ仕事が残っているという理由で、3ヶ月延長してもらえることになりました。結局、休むタイミングがなくて有給はほとんど消化できなかったんですが、それでも短期のパートでここまでしてもらえるとは思っていなかったので、ありがたい話でした。
最初の仕事は土器のかけら洗い。手が荒れて虫にも刺された
ここでの仕事は、発掘された土器や鉄器、木器を綺麗にしたり、手を加えたりすることでした。
最初に任されたのは、土器のかけらを洗う作業です。土の中から出てきたばかりでとにかく汚れているので、パートのおばちゃんたちと一緒に水道の前に一列に座って、ひたすら水洗いしていきます。
土器はもろくて、あまり力を入れると割れてしまいます。この力加減の調節が、思っていた以上に難しかったのを覚えています。
やりがいはあって楽しい作業なんですが、困ったのは手荒れでした。普段は使わないハンドクリームをわざわざ買ったのに、あっという間になくなってしまって。肌荒れのせいなのか、虫がついていたのか、手や腕がかゆくなったのもけっこうつらかったです。
私自身は関わりませんでしたが、洗い終わった土器のかけらに番号をふるという仕事もあって、これは次の工程のためのものでした。番号をふったあとは、そのかけらをつなぎ合わせていく作業に進みます。
つなげていくと、少しずつもとの壺などの形になっていくんです。これはパートの間で「パズル」と呼ばれていた作業でした。土の中から出てきたばかりの破片が、だんだん形になっていくのを見ていると、それだけでワクワクしました。もとの形になったところを見ると、これを使っていた昔の人のことを想像して、なんだか不思議な気持ちになったのを今でも思い出します。
鉄器の保存作業。腐食してぽろぽろ崩れるのがちょっとイライラした
土器の仕事のあとは、鉄器の保存作業に携わりました。劣化した鉄器に色を塗って、元の状態に近づけていく仕事です。
絵はもともと上手じゃないので、うまく塗れませんでした。ただ、芸術作品を作っているわけではないので、そこまで上手じゃなくていいらしいというのが救いでした。
鉄器はどれも腐食していて、触っているとぽろぽろと崩れてきてしまうんです。せっかく色を塗っても崩れてしまうと、正直ちょっとイライラしました。
木器の保存作業。何のためにやっているのかわからないまま終わった仕事
鉄器の次は木器の保存作業もありました。これも同じように、木器に色を塗る作業です。
研究所側もあまり時間がなかったみたいで、詳しい説明を聞く暇がありませんでした。研究所の歴史を研究している先生や先輩が言うとおりに、ただ作業を進めていく感じで。正直なところ、何のためにやっているのかよくわからないまま、パートの期間が終わってしまいました。
パソコン経験を買われてデータ入力へ。知識は増えたけど、ちょっと退屈でもあった
少し仕事に慣れてきた頃、パソコンの経験がある人が何人か集められて、私もそこに呼ばれてデータ入力の仕事をすることになりました。
発掘されたもののデータを、エクセルに入力していく仕事でした。入力しているうちに、いろいろな名前や用語を知ることができて、知識が増えていくのがうれしかったです。
もともとオペレーターをしていたので、パソコンの入力自体には慣れていて、この作業はやりやすかったです。ただ、その分ちょっと新鮮味がなくて、退屈に感じる部分もありました。
これをもとにデータベースを作ると聞いていたので、今どこでどう使われているのか、今でも気になっています。どこかの博物館か図書館か学校で、未来のある子どもたちや学生さんの役に立っているといいなと思っています。
この仕事は発掘現場から始まっている。10キロ痩せたという先輩の話
土器も鉄器も木器も、もとをたどれば土の中から掘り出されるものです。それを見つける発掘作業をしている人たちが別にいました。
一度、発掘現場を見学させてもらったことがあります。建築現場のような雰囲気で、外での作業だったので、暑さや寒さと戦いながらみなさん頑張っていました。
かなりの重労働らしく、経験のある人に話を聞いたら、最初に行ったときは10キロ痩せたと言っていました。「ダイエットになりそうですね」と言ったら笑われてしまいましたが。
契約期間が終わったあと、発掘作業のほうをやってみないかという打診をいただいたこともありました。ただ、そのときはもう別の仕事が決まっていたので、行きませんでした。いつかは経験してみたいなと、今でも思っています。
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この仕事の面白さは、汚れ仕事の先にある想像力とやりがい
正直なところ、あまり綺麗な仕事ではなくて、汚れ仕事でもあります。それでも、研究の一部になっているという実感は、この仕事ならではのやりがいでした。
もしかしたら、自分たちが洗った土器や、色を塗った鉄器や木器の中に大きな発見があって、いつか世界中の人の目に触れて、社会を変えるようなことが起きるかもしれない。そんな想像をかき立ててくれる、創造性のある仕事でもあったなと思います。
パートを指導してくれた先生は大学を出た専門家で、そういう人と一緒に働けたことも、いい勉強になったなと感じています。
この仕事をしたと話すと、「いろんな仕事があるんだね」と言われるくらい、レアな仕事だったと思います。この仕事に一度でも携われて良かったなと、今でも思っています。
「レアな仕事、やってみたかった」と思っているあなたへ
歴史研究所のような求人はそう多くなく、ハローワークでこの仕事に出会えたのは運が良かったのだと思います。半官の財団法人ならではの、利益を急がないのんびりした空気の中で歴史の遺物に触れられたのは、今振り返っても貴重な経験でした。
「変わった仕事に挑戦してみたい」という気持ちがあるなら、今の仕事を続けながら求人情報だけ広く見てみるのもいいかもしれません。
困った時の選択肢
今の職場の働き方や人間関係に納得がいかないときは、一人で抱え込まずに公的な相談窓口を頼るのも一つの手です。残業代の未払いやハラスメントで悩んでいるなら総合労働相談コーナー(厚生労働省)、誰にも言えずに気持ちがふさいでしまっているならよりそいホットライン(0120-279-338)に、まず話してみるだけでも気持ちが軽くなることがあります。
発掘現場で知った歴史の断片は、ほんの入り口に過ぎません。もっと深く知りたくなった方は、読書や耳からのインプットで歴史や考古学の世界に触れてみるのもおすすめです。
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土器や鉄器を洗ったり色を塗ったりする手仕事は、想像以上に手や指に負担がかかるものです。仕事終わりのケアに、指先までしっかり潤すハンドクリームを取り入れてみるのもおすすめです。
