親方は報酬をすべて使い果たしていて、給料を「返せ」と言っても請求できない。
だから乱闘でボコボコにするくらいしか、手段がなかった。
植木職人とか庭師って、老後に気楽にできる仕事だと思っている人が多い。
私が農業関係の学校を出てアルバイトとして入った現場は、その真逆だった。
これは、植木職人業界のリアルな話です。
📌 体験者プロフィール
・業界・職種:植木・庭師(アルバイトとして現場経験)
・雇用形態:アルバイト
・企業規模:個人経営(親方制)
・退職状況:退職済み(庭師にはならず、資格取得後に別業種へ転職)
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
ガーデニングブームで、お得意様が消えていった
私がアルバイトで植木や庭を手入れする職人になろうとしていた時期の話です。
そもそも、ガーデニングブームというのは植木職人の側からすると逆風でしかなかった。
誰でも植木とか庭の手入れができるようになってしまったため、以前は仕事を頼んでくれていたお得意様も、自分でやるようになって頼まなくなっている。
お得意様が消えていくのに、新規顧客はそう簡単に増えない。仕事の奪い合いがすでに始まっていた業界だった。
ビラ配り雑用と、テレビを見ている親方
新規に顧客を獲得するためにする仕事といえば、ビラ配り。
当然、ビラを配っている最中に給料なんて出ない。アルバイトの仕事として、ただひたすら配るだけ。
問題は、その間に親方たちが何をしているかだった。
当の植木や庭師の職人本人は、ビラ配りを手伝ってもくれない。テレビを見ていたり、パチンコに行っていたりする。
そしてビラを配ってお客様が興味を持ってくれても、マーケティングをするのはアルバイト。顧客が獲得できないと、怒られる。罵声を浴びせられることもしょっちゅうだった。
「集めて来い」と命じられて街に出されているのに、肝心の親方は事務所にもいない。
アルバイトの間で「これは何の仕事なんだ」という空気が流れるのは、当然だったと思う。
報酬を一切提出しない親方の手口
植木や庭師の仕事は、お客さんの家に行って仕事をして、初めてお金をもらう。
よそ様の家で庭や植木の手入れをして得た報酬をかき集めて、ようやくみんなの給料になる仕組み。
恐ろしいのはここからで、親方自身も現場で仕事をしている。本来であれば、その親方の分の報酬も一度プールに提出して、皆で分け与えないといけない。
ところが、提出せずそのまま自分が使う、ということを平気でしていた。
植木や庭の手入れの1軒あたりの報酬は、多い場合だと1回あたり10万円くらいの所もあり、少なくても3万円は取れる。
3万から10万円の報酬の分け前を、親方が丸ごとピンはねしていた計算になる。
それを知っているアルバイトとは、当然、喧嘩になる。
乱闘がしょっちゅう、ボコボコにするしかなかった
喧嘩になると、買収されている正社員が出てきて、親方はどこかに消える。
正社員も同じやり方で、アルバイトが本来得るはずだった報酬をピンはねしている側だった。
だから乱闘になることはしょっちゅう。
しかも親方も社員も、全部の給料をすでに使い果たしているらしく、こちらが「返せ」と言っても請求できない。
請求できないなら、相手の社員をボコボコにするくらいしかできない。
気楽に働けるような職場では、まったくなかった。
60歳過ぎが「気楽な仕事」と思って応募してくる
定年後に「アルバイトとして、あるいは正社員として気楽に仕事ができる」と思って、60歳を過ぎた人が応募してくることが多かった。
ところが、全然気楽に仕事をするような仕事ではない。ただ働き同然の日もある。
応募してきた人たちが現場の実態を見て、すぐに来なくなるのも珍しくなかった。
庭師免許の正体——誰でもできる仕事だった
よっぽど「職人」という肩書きを欲しがらなければ、たぶん、庭師なんてならない方がいい。
そもそも、庭師と呼ばれる免許を取るためには、誰か職人と呼ばれる人について指導を仰ぐことで免許を取る準備ができる、というだけ。
庭を手入れする仕事自体は、実は素人でもできる。だから需要は無い。
本当にプロかどうかの違いは、庭を整備するために肥料をきちんと選ぶことができるかどうかなど、そういう部分にしかない。
そういう違いはあっても、庭の手入れ自体は誰でもできる。
最近では、シルバー人材派遣センターで購入を受けて庭の手入れをする60歳過ぎの人も多いはず。
「免許持ちの庭師」と「シルバー人材の高齢者」が同じ仕事をしている、というのが業界の実態だった。
自分が親方になった未来が見えて、辞めた
私の場合は、農業関係の学校で庭師になるための勉強をしていたので、仕方なく庭師の仕事をしていた。
ただ、将来性は無いに等しいと感じてからは、転職を決めた。
何より、自分が今度親方になったとして、会社を経営して回すことができるかを考えた時に、答えは出なかった。
この親方と同じことをして、アルバイトに押し付ける未来が見えた。
それが嫌になり、仕事をやめたと言ってもいい。
職人という肩書きがあっても、仕事が無いんじゃどうしようもないし、将来性が無いと判断したため、とっとと資格だけ取って退散した方が身のため、というのが私の結論だった。
再度、庭師の仕事がピックアップされて必要になった時に、免許を持って再度庭師になれば良いだけ。わざわざ、仕事が不安定な時に庭師になって働く必要は無い。
実際、同じように免許を取得するだけして庭師にならなかった人も、結構いたように思う。
転落しても、治療費は自分持ち
庭師の仕事は、高い所に昇って仕事をすることが多い。
ところが、転落した際に手当てなんて付かないし、治療費も自腹。会社は何もしてくれなかった。
よっぽどの怪我をして裁判にでもならない限り、会社から治療費を出してくれることは無い。
脚立を蹴り倒し、退院した社員がまた仕返しをする
そのため、高所での作業で嫌いな社員を蹴り倒して落とすようなことを、平気でするアルバイトもいた。
脚立で仕事をするため、脚立の脚を足で払うだけでも十分バランスを崩せる。
特に給料を持ち逃げしていた社員は、アルバイトからも嫌われていて、大怪我をすることもあった。
ところが退院した社員が、今度は似たようなことをアルバイトにする。
自己責任の世界とはいえ、相手に対しわざと怪我を負わせようとするような職場で働きたいかと聞かれたら、働きたいとは思わない。
資格取得にあたって「いた」というだけ。それ以外で収入として考えた場合、おすすめはできない仕事だった。
庭師全部がブラックではない、でも構造的にそうなる現状
庭師の仕事のすべてが、このようにブラックだとは思わない。
ただ、どうしてもブラックにならざるを得ないのが現状だ、と感じている。
やろうと思えば誰でもできる仕事な上、専門の学校を出ている人たちの方が現役の庭師よりも知識が豊富だったりする。
そこでもトラブルが起きることが多くて、アホらしくなって辞めていく人も多い。
「将来性のある職人仕事」というイメージで入ると、たぶん、同じことを思うはずだ。
編集部より
植木・庭師の現場が荒れやすいのは、個人経営の親方制という構造に理由があります。報酬は1軒ごとの請負で、親方が自分の取り分をプールに戻さず使い込んでも、外からは見えません。しかも庭の手入れ自体は参入障壁が低く、シルバー人材と仕事を奪い合う需要難も重なります。お金の流れが不透明なまま、現場の力関係だけが残る——この体験談の乱闘や無給のビラ配りは、その帰結です。ビラ配りに賃金を払わない、現場で得た報酬を渡さないという運用は、本来れっきとした賃金未払いです。
「職人=手に職・将来安泰」というイメージだけで飛び込むと、この体験談のようなギャップに直面しかねません。資格や肩書きより先に、その仕事でお金がどう回り、どんな契約形態で守られるのか(あるいは守られないのか)を見ておくことが、自分を守る材料になります。今の現場がおかしいと感じるなら、一人で抱える前に下記で状況を整理してみてください。
困った時の選択肢
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