契約書にサインした日、目に飛び込んできたのは「雇用形態:業務委託」という文字でした。
求人に書いてあった「正社員」の文字は、どこに行ったんだろう。
このときの違和感を見過ごしたことが、その後の3か月を地獄に変えることになります。
📌 体験者プロフィール
・年代:20代(体験当時25歳)
・業界・職種:浄水サーバーの飛び込み営業・ブース営業(求人上は「商品企画・プロモーション」)
・雇用形態:求人は正社員、契約は業務委託(フルコミッション)
・企業規模:共同オフィスで複数のオーナーが個別に事業を行う小規模の会社
・在籍期間:3か月
・退職状況:退職済み
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
ホテル業界を辞めて見つけた、「未経験歓迎」の求人
25歳のとき、3年間働いたホテル業界を辞めることにしました。理由はスタッフの人手不足、夜勤中心の生活で体も気持ちも限界に近づいていたこと、それから、そろそろ違うことに挑戦してみたいという気持ちもありました。店舗の支配人と面談して退職日が決まり、それを機に転職活動をスタートさせました。
行きたい業界にこれというこだわりはなかったので、様々な業種・職種に目を向けていました。そんな中である日目に留まったのが、のちに酷い目に遭うことになる、その会社の求人でした。
転職サイトで見つけた求人は「商品企画・プロモーション」。商業施設やコンサートホールなどのイベント会場で、より商品が売れるような取り組みを企画・運営する、という内容でした。学歴不問、職種・業種未経験歓迎、第二新卒歓迎。誰でも挑戦できる書き方でした。
「商品企画を未経験でも挑戦できるのはやりがいがありそう。ホームページのブログもみなさん楽しそうな感じがするし、良さそう」
そう感じて、すぐに応募しました。
最終面接の合格通知、「明日から入社できるよ」に驚いた入社日
一次面接のWEB面接を無事通過し、最終面接は企業のオフィスで行われました。オフィスは比較的綺麗ではありましたが、少し狭いような印象でした。
面接官は代表取締役で、企業の詳細や業務内容を説明してくれました。そのときに言われたのが、
「最初の1ヶ月程度は皆さん営業をしてもらいます。その後は皆さんの力量や希望によって、進みたいキャリアに配属させて頂きます」
という言葉でした。正直、営業はあまり好きではありませんでしたが、最初の1ヶ月くらいなら頑張ってもいいかと思い、承諾しました。人柄が良さそうな方で、緊張しながらも終始和やかな雰囲気だった気がします。
最終面接の結果は合格。決まった瞬間は喜びが爆発して、興奮していたのを覚えています。これが地獄の始まりだとは、この時は知る由もありませんでした。
合格通知は電話で来ました。嬉しさも束の間、話は雇用契約締結日と入社日をいつにするかという内容に移ります。契約書類の作成など、企業側も準備に時間を要するだろうから、入社は数週間後になるのかな、と考えていました。
でも、このとき返ってきた言葉が、
「いつから出勤する?ちなみに明日から入社できるよ」
でした。
「えっ!?」って思いました。そんなにすぐ入社できるものなのか、書類など企業側は本当に問題ないのかと、耳を疑いました。ただ、私自身すぐにでも働きたかったので、翌週の初めに契約書にサインして、翌日に初出勤する、ということになりました。
契約書にサインした日に気づいた、「正社員」と「業務委託」の食い違い
契約日の当日、契約書にサインするのに立ち会ったのは、最終面接の面接官をしていた代表取締役ではなく、別の企業のオーナーでした。実は私が受けた企業のオフィスは、様々なオーナーが共同で事業を行う共同オフィスだったようで、そこで初めてそのことを知りました。
まあそんなことは特に気にせず契約書に目を通していたのですが、ここでおかしな点を見つけました。契約書に「雇用形態:業務委託」と書かれていたのです。私が応募した求人は「正社員」だったはずです。しかも、契約する企業も応募した企業ではなく、共同オフィスで事業を行っている別の企業との契約でした。
さすがに内容が違ったので、「契約って業務委託なんですけど、合ってますか?」と聞きました。そのときオーナーは、
「他のみんなも同じ契約書で契約してるよ、問題ないよ」
と言っていました。契約期間についても3か月とあり、これもオーナーは、
「これも期間が過ぎたら自動でこちらで更新しとくから大丈夫だよ」
と。この時もっと突っ込んで確認しておけば良かったと、今ではとても後悔しています。当時は何の知識もなかったので、そんなものかと思い、サインしてしまいました。これが最終的に悪夢を生んでしまうきっかけになりました。
関連記事:営業の激務でうつ病になり退職|求人票と真逆の勤務時間、応募前に社員の退勤を確認すべきだった
入社初日の明るい空気と、飛び込み営業という現実
入社初日、緊張しながらオフィスに向かうと、他の社員の方が笑顔で迎え入れてくれました。オフィス内はとても明るく、皆さん和気あいあいと話されていて、良い企業に入ったなと感じていました。
朝礼が始まると、前日の営業成績上位者の発表と、オーナー陣からの営業アドバイス、営業のロープレを行います。朝礼が終わると、皆さん一斉に外出して営業をスタートさせます。ちなみに営業内容は飛び込み営業。各地の飲食店や企業を手当たり次第訪問して、商品を売り込むというものでした。商材は当時、浄水サーバーでした。
飛び込み営業は営業の中でも一番レベルの高い営業で、正直かなり難しいです。最初は先輩社員と一緒に回っていましたが、ある程度学んだ後は独り立ちして、各地を回るようになりました。やはり契約を獲得するのはとても難しく、件数はそこまで多くありませんでした。ただこの時は「1ヶ月頑張れば良いんだ、やれるだけのことはやろう」というマインドでした。
初任給日、口座に振り込まれた金額はゼロだった
入社して1ヶ月となり、給料が入る25日になりました。4月中旬に入社しているので、そこまで多くはないだろうとは思っていましたが、久々の給料に気分はウキウキしていました。
ですが、ここで事件が起こります。給料が一切入ってこないのです。夜になっても、翌日になっても、1円も入ってきません。さすがにこれには唖然としました。応募した求人には「給与:月給26万以上+インセンティブ」と記載があったので、なぜこんなことが起こっているのか分かりませんでした。ただこの時は、「多分、私が入ったのが最近だからまだ給与反映されてないだけだ、来月には確実に反映されるはず」と、そこまで重く見ていませんでした。
この時期の私はブース営業というものをやっていました。商材は同じ浄水サーバーで、営業する場所が飛び込みではなく、商業施設の一角をお借りして、買い物客に対して行う営業でした。この営業はオフィスに行かず、直接現場に出勤して、時間が終わり次第直帰します。そのため、給料が反映されない理由を聞くタイミングがなかったのも事実です。ただ、この後、先輩社員から衝撃の事実を告げられることになります。
先輩社員から聞かされた、フルコミッションという名の真実
1週間後、ブース営業中に、先輩社員と同時期入社した社員3人で、企業に関して話し合う機会がありました。そのとき私は意を決して、先輩社員に給料やその他企業のことを尋ねました。ちなみにこの時点でも、まだ給料は一銭も入っていません。
「給料ってどういう仕組みなんですか。交通費とかどう申請したらいいか、何も聞かれてないのですが」
そのとき先輩社員が発した言葉を、今でも鮮明に覚えています。
「給料はフルコミッション(完全歩合制)だよ。営業で稼いだ分しか入らないし、もし契約がクーリングオフとかでキャンセルになれば0円だよ。交通費はその日契約獲得しないと申請できなかったはず」
頭が真っ白になりました。まさかフルコミッションだなんて、全く思ってもいませんでした。これに関しては求人にも記載はなく、最終面接時や契約時の説明、契約書の記載にも一切ありませんでした。
先輩社員が言うには、浄水サーバーの契約獲得において報酬が入るのは、顧客の元に浄水サーバーが届いて初めて発生するとのこと。クーリングオフ制度があるため、浄水サーバーが届くのは契約してから2週間後以降の設定になる。そして報酬の支払いに関しては、浄水サーバーが届いた月の換算となり、翌月に支払われるとのことでした。つまり全てをまとめると、固定給は存在しない、契約獲得した報酬は翌月以降に振り込まれるため、今月の給料が0円であったということです。給料は支払われなかったのではなく、そもそも発生していなかったのです。もう1人いた同時期入社の社員の方も知らなかったそうで、私と同じように唖然としていました。
結果、こうして騙されてしまいました。改めて騙された点をまとめると、まず雇用形態は求人では正社員との記載でしたが、実際は業務委託。先輩社員によると、正社員はほとんど雇っていないとのことでした。給料は「月給26万以上+インセンティブ」との記載でしたが、これも嘘で、完全な営業のフルコミッションでした。実際に契約1件に対しての報酬も低く、キャンセルされると0円になるため、結果、3ヶ月働きましたが給料は合計約9万円でした。貯金は入社当時100万円程度ありましたが、30万円まで落ちてしまいました。福利厚生も交通費全額支給や各種社会保険完備等たくさんありましたが、これもほとんどが嘘。社会保険も個人事業主扱いのためありませんでした。全てとは言い切れませんが、唯一あったのは商材として使っていた浄水サーバー使い放題くらいでした。業務内容も「商品企画・プロモーション、イベント運営」でしたが、これも良いように書いているだけで、実態はゴリゴリの営業でした。応募を多数募るために書いているだけだったんです。結果、大半が嘘で固められていたことが判明しました。
退職時のやり取りと、これから転職活動をする人へ伝えたいこと
退職の際、契約時に立ち会ったオーナーと話す機会がありました。「給料や福利厚生等、一切説明がなかった」と伝えたのですが、
「あれっ?言ってなかったっけ?」
ととぼけられました。労働基準法では、契約時に給料や勤務時間等の契約内容を明記、もしくは口頭で伝えなければいけません。つまり労働基準法に違反していたことになります。ただ、その際の契約書の写真を撮っていなかったりと証拠がなかったため、通報することができませんでした。なので、もうしょうがないと割り切って、良い人生の勉強になったと気持ちを切り替えました。契約時にしっかりここを確認しなかった私自身が原因でもあると思っています。
次は失敗しないようにと、現在は慎重に転職活動をしております。
関連記事:ブラック企業の面接官だった私が伝える求人と面接の見分け方|9年勤めて心を病んで辞めた話
契約書を読み返す隙を、与えない会社へ
求人と契約の中身をずらす会社ほど、契約日に立ち会う人を面接官と入れ替えたり、「他のみんなも同じだから」と即決だけを急がせたりして、内容を読み返す隙を与えません。
給与体系や雇用形態が求人と食い違っていないか、契約書はその場で最後まで読み、写真に残してから持ち帰るくらいの慎重さがあってよいはずです。
「みんな同じだから」は、確認しなくていい理由にはなりません。
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契約書の内容を鵜呑みにしないためにも、働き方やお金にまつわる本から知識を仕入れておくという方法もあります。
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毎日知らない扉をノックしては断られる飛び込み営業は、体力より先に心がすり減っていく。そんな一日の終わりに、肩や首をじんわり温めてくれるマッサージクッションを使っている人もいる。

