教師は、誰にでもふさわしい職業というわけではない。
これは、海外で日本語を教えてきた、ある非常勤講師の話です。
📌 体験者プロフィール
・業界・職種:日本語教師(海外の日本語学校で外国人生徒に日本語を指導・現地語は生徒により異なる)
・雇用形態:非常勤・時間契約(週2日・1回3時間の授業を担当)
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
「これなら自分にもできる」と思ったのが始まりだった
日本語教師になりたいと思ったきっかけは、単純だった。これなら自分にもできるかもしれない、そう感じたからだ。
もちろん、教師といっても科目はいろいろある。私が選んだのは「日本語」という科目だった。
母国語を教えるだけなら、必要なスキルはある程度もう身についていることになる。誰でも子どもの頃から使ってきた言葉なのだから、教える側に立つハードルはそう高くない、というのが最初の感覚だった。
けれど、それを外国語として教えるとなると、話はまったく違ってくる。
現地語が何語であるかにもよるけれど、目の前に座っている生徒たちの文化を理解しておく必要がある。同時に、自分自身も「日本語を代表する人間」としてふさわしい言動を心がけなければならない。ふと気を抜いた一言が、生徒にとっての「日本語話者のイメージ」そのものになってしまう。そのことに気づいたとき、この仕事の入り口に立っただけで、もう身が引き締まる思いがした。
週10〜15時間、”パートよりはいい”はずなのに生活はできない
教師生活のスケジュールは、正直に言うと拍子抜けするほど短い。週に2日、1回3時間の授業。時間だけを見れば、フルタイムどころかパートタイムとしてもかなり少ない部類に入る。
けれど、実際の労働時間はそこで終わらない。
教材を読み込む時間。授業のための準備の時間。宿題やテストの採点。生徒からメールで届く質問への返信。これらをすべて積み上げると、週の労働時間は最低でも10時間から15時間くらいにはなる。
なんとも中途半端な時間数だ。フルタイムには到底届かないし、パートタイムとして見てもかなり時間が少ない。
お給料は、普通のパートタイムの仕事よりはかなり良いほうだと思う。時給換算すれば、悪くない数字が出るはずだ。
ただし、この仕事ひとつで生活を成り立たせるのは、正直かなり難しい。
学期の合間はゼロ円、生徒が集まらなければクラスごと消える
学期と学期の間には、授業そのものがなくなる。当然、その期間の収入はゼロになる。
もっと怖いのは、一定数以上の生徒が集まらなかった場合、クラスそのものがキャンセルになることさえあるという点だ。そうなれば、その学期はまるまる空白になってしまう。
だから、1学期だけの仕事だと割り切って別の収入源を探すか、長期でうまく穴を埋められるような仕事を並行して探すか、どちらかを選ぶことになる。日本語教師という仕事は、不安定要素がかなり濃い部類の職業なのかもしれない、と思う。
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授業を自分でデザインできる楽しさと、生まれる生徒との信頼関係
それでも、この仕事はとても楽しい。
教科書などはある程度決まっていることが多い。でも、それ以外の授業内容は、自分自身でアレンジしてデザインしていける。
おもしろい授業内容を作ることができれば、生徒たちはものすごく喜んでくれる。そしてそれは、自分自身にとっても非常に楽しい時間になる。
この授業内容を組み立てるプロセスや、生徒たちとのやり取り、ちょっとしたアクティビティを通して積み重なっていく関係性のなかで、生徒と教師のあいだに信頼関係が生まれてくる。それは、テストの点数やカリキュラムの進捗だけでは測れない種類の手応えだ。
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非ネイティブの生徒たちだからこそ見える面白い視点
生徒たちは外国人であり、日本語の非ネイティブスピーカーだ。だからこそ、彼らなりの面白い観点から、こちらが教える立場でありながら色々と学ぶこともある。
当たり前だと思って使っていた言葉や表現が、生徒の質問ひとつでまったく違う角度から見えてくる瞬間がある。そういうとき、とてつもなく刺激のある時間を過ごすことになる。
日本語教師という職業を題材にした書籍も多く出版されていて、なりたいと思ったことがある人も少なくないと思う。それだけ、外から見ても魅力を感じやすい仕事なのだろう。
「誰にでもふさわしい仕事ではない」— 手本であり続ける重さ
教師は、人と人とのコミュニケーションが非常に重要な職業だ。教科の内容以外の部分でも、生徒たちのお手本となるような態度そのものが、教えの一部になってしまう。
だからこそ、実はこの仕事は、誰にでもふさわしい職業というわけではないのだと思う。
とくに、様々な文化圏で育った経歴やバックグラウンドを持つ生徒たちを相手にするのだから、それなりの頭の良さは必要になる。コミュニケーション能力は高くなければならないし、自分自身の性格も良好でなければ、生徒たちからの信頼を獲得することはできない。
言葉の奥深さに立ちすくむ瞬間と、終わりのない勉強
それに、言語というのはとてつもなく深い。
普段は何気なく使っているけれど、すべての言葉には歴史がある。生き物のように変化していくものだし、たったひと言で物事がまったく違った方向に進んでいくこともある。だから、決しておろそかにすることはできない。
生徒の中には、「なんでそんなことを知りたいんだろう」「なんでこんなことが気になるんだろう」というような、意外な質問を投げかけてくる子がいる。そして、それが教師をとても困らせてしまうことも多い。
「先生なのに、どうして知らないの?」「自分自身で勉強したことはないの?」
生徒が教師に求めていることが高すぎる場合、教師は生徒以上に勉強をしていく必要が出てくる。その勉強の時間は、無限に続く訓練と修行の場のようなものだ。週15時間程度の労働時間など、雀の涙ほどに感じられるくらい膨大な時間と化していくこともある。
もちろん、あまり深いことを気にしない生徒も多い。けれど、自己嫌悪におちいるような質問に一度も出くわさない教師はいないと思う。必ず、説明が困難になるような壁となる質問がふってわいてくることが、運命づけられているようなものだ。
このことによって、教師自身の自尊心や自己肯定感が薄れてしまうこともある。そういった精神的な圧力とも、戦わなければならないことがある。
自然に覚えるのが理想、でも現実は効率化の工夫がいる
言語は、ふさわしい環境に囲まれながら自然と覚えていくことができれば、それが理想だと思う。でも、そうでない場合は、無理にでも脳に詰め込んで覚えて習っていかなければならない。
その際には、どうやって効率性を上げていくのか、まるで数学の方程式のような仕組みを使う方法さえ考えなければ、第二言語として頭に詰め込んでいくのは難しい。
効果がなければ、生徒からは飽きられてしまう。けれど、自分自身でも勉強してマスターしていけば、上手に教えることはできるようになっていく。
教師とは、自分に対しても教えるスキルが不可欠な仕事なのだと思う。これからも教師を夢見る人たちが、素敵な教師生活について考えていけるような人生になればいいと、心から願っている。
日本語教師という夢に向き合っているあなたへ
授業を自分でデザインできる自由さと、生徒とのあいだに生まれる信頼関係は、この仕事でしか得られない手応えです。ただしその裏側で、非常勤という働き方の構造そのものが、収入を学期のスケジュールに強く縛りつけています。夢を諦めろということではなく、この働き方の輪郭を先に知っておくことが、遠回りに見えて一番の近道になるはずです。
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宿題の採点や教材の読み込みで夜遅くまで目を使った日は、そのまま日をまたがせずに労ってほしい。そんなときに蒸気で目もとを温めるホットアイマスクを使っている人もいるようです。

