私立高校で、非正規の教員として10年働きました。
常勤講師、非常勤講師、派遣講師。雇用形態は変わっても、いつも「正社員ではない」立場で、4つの学校を渡り歩きました。
10年やって、結局正規教員にはなれないまま、私は教員という仕事を辞めることになります。
📌 体験者プロフィール
・業界・職種:私立高校の非正規教員(常勤講師・非常勤講師・派遣講師)
・雇用形態:非正規(4校を渡り歩いた)
・在籍期間:合計10年
・退職状況:退職済み(現在は学習塾で勤務、契約社員)
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
私立高校の非正規教員1校目|最下位コース3学年を1人で押し付けられた地獄
これから書くのは、私立高校の非正規教員のリアルです。最下位コース3学年を1人で担当させられた地獄、何度受けても受からなかった常勤試験、派遣切り。すべて実際に体験したことを、正直に書いていきます。
教員を目指している人、すでに非正規で働いていて辛い人に、何か残せたらと思います。
最初に着任したのは、関東の私立高校A校。常勤講師という肩書で、業務内容はほぼ正社員と同じでした。大学を卒業してすぐだったので、まだまだ未熟で、先輩からの指摘も多かったのを覚えています。
ここで2年間働いたんですが、本当に辛かったのは2年目でした。
私立高校って、進学実績を上げるために学力別のコース制を取っているところが多いんです。「特別進学コース」みたいな名前、聞いたことがある人もいると思います。A校でも4つのコースに分かれていて、上位2〜3コースはクラス数が多く、下のコースほど少ない、という構成でした。
問題は、私が担当することになった最下位コースです。
このコースは1〜2クラスしかなくて、しかも他のベテラン教員が誰も持ちたがらない。結果、3学年すべてを私1人で担当することになりました。
「我々は持ちたくないから、1人でよろしくね」
直接そう言われたわけじゃないんですが、職員室の空気は、明らかにそう言っていました。新人の私に拒否権なんて、あるはずもありません。
定期テストを1人で19回作る狂気|2番目に多い先生の倍以上
最下位コースを担当すること自体は、教育的にはむしろやりがいがあります。教えたことをすぐ理解できる生徒ばかりじゃないので、工夫の余地があるし、自分の教務力も上がるからです。
問題は、1人で担当することの物理的な負担でした。
特にきつかったのが、定期テストの作成です。
普通の私立高校なら、同じ学年・教科を担当する教員が分担して作ります。たとえば3人で担当していて、年5回テストがあるなら、2回・2回・1回みたいに割り振る。
でも私の場合、3学年すべてのテストを、1人で作ることになりました。
その年、私が作った定期テストの回数は——19回です。
ちなみに、その学校で2番目にテスト作成回数が多かった先生は9回。倍以上の差があります。
テストを作るって、簡単に聞こえるかもしれません。でも、めちゃくちゃ重労働なんです。問題を考えて、解答を作って、配点を決めて、印刷用の体裁を整えて、解答用紙も作って。1回のテストで、丸2日くらい潰れます。
19回 × 2日 = 38日。1年のうち1ヶ月以上を、テスト作成だけに費やした計算です。
最下位コースの授業崩壊と、人生で一番嬉しかった最終出社日
授業も大変でした。
最下位コースなので、当然ながら授業を真面目に聞かない生徒が多い。寝る、喋る、スマホをいじる、教室を出ていく。何度怒ったか、もう覚えていません。
「来年もまた1人で最下位コース全学年を担当させられたらどうしよう」
そう考えるだけで、吐き気がしました。実際、その兆候はあったんです。職員室の空気感的に、来年もこの体制が続きそうな雰囲気で。
精神的に限界を感じて、その年で辞めることを決めました。
最後の出社日、心の底から「もうここに来なくていいんだ」とホッとしたのを、今でも覚えています。あれが私の人生で一番嬉しかった「最終出社日」かもしれません。
私立高校の常勤試験に3年連続で落ちた絶望|2校目の非常勤講師
次に着任したのは、同じ県内の別の私立高校B校。今度は非常勤講師として働き始めました。
「非常勤講師では生活できないのでは?」という声を聞くこともありますが、私の場合は給料がそれなりに出たので、生活面の心配はまったくありませんでした。
入って1〜2年は、非常勤でゆったりやろうと思っていました。3年目から正社員(常勤)を目指して動こう、と。
B校には、非常勤から常勤にステップアップする社内試験のシステムがありました。私も、この試験を受けることにしました。
結果は、着任2年目、3年目、4年目と、3年連続で不合格。
しかも、私の後に入ってきた非常勤講師たちが、先に常勤になっていくんです。後輩に追い抜かれていく感覚は、想像以上に堪えました。
「自分の何がダメなんだろう」「いつまでこの状態を続ければいいんだろう」「同期はもう正社員で、結婚もしているのに」
考えれば考えるほど、病みます。このままじゃ精神的に持たないと判断して、4年目で退職を決めました。
習熟度別授業は意味がある?3校目で見た「名ばかり」の実態
実家に戻ることにして、地元の私立高校C校に非常勤講師として着任しました。
C校でも常勤にはなれず、契約満了で終わり。偏差値はあまり高くなくて、A校に比べればまだまともでしたが、授業態度の悪い生徒もそれなりにいる学校でした。
ここで一番辛かったのが、習熟度別授業です。
聞こえはいいんですよ、習熟度別授業って。「成績でクラスを分けて、その生徒に合った指導をする」と言われると、合理的な仕組みに思えます。
でも、実態は違いました。
ただ上下2分割して、クラスを組み直すだけ。しかもテストは全クラス同じ問題なので、結局は同じ内容を教えなくてはならない。習熟度別の意味が、ほぼゼロでした。
むしろ、上下に分けたことで成績の格差は広がりました。下のクラスは「自分は下だ」というレッテルを意識して、ますますやる気を失う。上のクラスはそこそこ頑張る。結果、二極化が進むばかり。
今でも私は、習熟度別授業は学力を下げる最高の授業法だと思っています。教育的な意味がほぼないのに、学校側は「うちは習熟度別をやっています」と謳いたいだけ。形だけの教育改革の、典型例でした。
私立高校の派遣講師は切られる?4校目、派遣切りで終わった1年
4校目のD校は、派遣会社経由で派遣講師として働きました。
D校は1校目と同じくコース制で、4つのコースに分かれていました。ここで初めて、私は上位コースも担当することになります。
このとき気づいたのは、コースによって授業内容がまったく違うということです。
最下位コースの3年生に教えていたのは、ほぼ「算数」レベルの内容でした。これは決して、レベルを低くしているわけじゃありません。就職する生徒が多いコースだったので、就職試験に対応した内容を扱う必要があったんです。
実際、この「算数」を教えた3年生たちは、本当にいい生徒が多くて、楽しく授業ができました。
このとき強く感じたのが、生徒に見合った適切な教材を選ぶことの大切さです。変に難しい問題をやらせると、生徒は混乱するだけで、むしろ学力が下がる。
これが、10年の教員生活で得た、私にとって一番大きな真理です。
ただ、そんな手応えを感じていたD校でも、私の運命は1年で終わります。派遣切りでした。
関連記事:公立中学校の非常勤講師を辞めた話|時給制・教諭からの差別・修学旅行に行けない現実
教員を辞めたあとの仕事|派遣切りから学習塾へ
D校を派遣切りされたあと、派遣会社の人が「学習塾なら人手不足ですよ」と紹介してくれて、学習塾で働き始めました。
数年働いたあと、別の学習塾に移りました。そこではほぼ正社員(1年目は契約社員、待遇はほぼ同じ)として働けるようになりました。
10年の高校教員生活は、決して楽ではありませんでした。それでも、なんとか生活はできていた。それだけは良かったと思っています。
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私立高校の教員はやめとけ?教員を目指している人へ、10年やった私から
最後に、私の経験から、正直に言わせてもらいたいことがあります。
教員、特に私立高校の非正規教員は、なるもんじゃないです。
これは私の本心です。
正規になれないまま、何年も非常勤や派遣で働き続ける人がたくさんいます。私も、その1人でした。常勤試験を受けても受からない、派遣切りに怯える、責任は正社員と同じなのに待遇は全然違う。
教員という仕事自体は、生徒との関わりも含めて、やりがいはあります。でも、非正規というポジションでこの仕事を続けるのは、本当に消耗します。
これから教員を目指す人は、最初から正規採用を狙うか、それが難しいなら、早い段階で別のキャリアを考えることをおすすめします。
10年費やした私が言うので、間違いないです。
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非正規教員を辞めたい、教え続けることに限界を感じている人へ
ある年、この人が一人で作った定期テストは19回で、2番目に多い先生の倍以上でした。
誰も持ちたがらない最下位コースの全学年が立場の弱い非正規に回ってきて、責任は専任と変わらないのに、常勤試験は落ち続け、最後は派遣切りという不安定さに振り回されました。
10年で得た「生徒に見合った教材を選ぶ大切さ」は学習塾や予備校など別のフィールドでも強みになるので、つらいなら一人で抱え込まず、下の窓口に状況を話してみてください。
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