「大学の実習助手」という仕事、聞いたことありますか?
おそらく多くの人にとって、馴染みのない職業だと思います。大学の先生でもない、事務員でもない、研究員でもない。理系大学に存在する、ちょっと特殊な立ち位置の職員です。
私は新卒でこの実習助手として採用されて、22歳から28歳までの6年間、ある理系大学で働いていました。年収は300〜400万円、勤続6年で任期満了により退職。
これから書くのは、そんな大学実習助手のリアルな仕事内容、待遇、向き不向き、そして辛かったことです。実習助手を目指している人、就活で大学職員系の進路を考えている人、すでに働いていて将来を悩んでいる人に、何か届けばと思います。
📌 体験者プロフィール
・年代・性別:女性(体験当時22歳〜28歳)
・業界・職種:理系大学の実習助手
・雇用形態:任期制(5〜6年の任期)
・在籍期間:6年(任期満了まで勤続)
・年収:300〜400万円
・退職状況:退職済み(任期満了による退職)
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
実習助手って結局なに?「大学の何でも屋」が実態
理系大学に通っていた人なら経験があると思いますが、理系の必修科目には、学生実験や実習が必ず組み込まれています。
普段の研究室の実験は、各研究室の先生や院生が準備します。でも、学科共通で行う基礎実験については、話が別。これを準備して、運営するのが実習助手の主な仕事でした。
実験の準備、器具のセットアップ、試薬の調合、当日の進行サポート、後片付け、データ整理。これだけでも、結構な業務量です。
でも、実習助手の仕事はこれだけじゃありません。
私の業務範囲は、こんな感じでした。
・学科共通実験・実習の準備と運営
・非常勤講師の授業サポート
・学科運営のサポート(書類作成、会議準備など)
・一般事務(電話対応、メール対応、備品管理)
・オープンキャンパスの運営補助
・定期試験・入学試験の試験監督
・答案整理、誘導業務
・学生の進路相談、生活相談
・OB・OGとの連絡調整
・取引業者との折衝
大学で発生する雑多な業務の、受け皿。それが実習助手でした。
正直に言うと、「大学の何でも屋」というのが、一番しっくりくる表現です。同じ実習助手でも、配属先によって業務内容はまったく違うので、配属ガチャの要素も大きい仕事でした。
衝撃の事実:実習助手には「任期」がある
これから目指す人に絶対知っておいてほしいのが、任期制度です。
実習助手の仕事には、助手の先生と同じく任期があります。採用されたら定年まで続けられる、という仕事ではありません。
所属する学校にもよりますが、助手以下のポジションは2年更新で最長◯年まで、と決められている場合がほとんど。
特に実習助手の場合、その上のポジションへの昇格ルートが用意されていないこともあって、現在は最長5年まで(私が働いていた頃は最長6年)しか勤められない、と決められていることが多いと思います。
私が勤めていた大学では、どんなに優秀な人でも5年以上の更新はしてもらえず、任期満了と同時に全員が退職していました。
つまり、5〜6年後には必ず職を失う仕事です。これを最初に理解せずに就職すると、後で本当に困ります。
採用試験は意外とシビア
実習助手の採用試験は、年に1回、だいたい夏頃に募集がかかります。
配属先の数が限られていて、定員も決まっているので、募集人数は「若干名」と書かれることがほとんど。競争率はそこそこ高いと、覚悟したほうがいいです。
もし自分の通っている大学で採用試験を受ける予定なら、在籍している学科の現役実習助手に、その年の退職者数を聞いてみるといいです。退職者数=採用予定数になることが多いので、おおよその採用人数が分かります。
採用試験の内容:論文と面接
私が受けた採用試験は、論文と面接でした。
面接は集団面接形式で、執行部の教授およそ10名 vs 受験生3名、という構成。
これ、想像してみてください。教授10人に囲まれるんですよ。しかも執行部レベルの、偉い先生たち。受験生は、たった3人。
面接官から感じる圧は、本当にものすごかった。在校生や卒業生が主な受験生なので、知っている顔の先生もいる中で、緊張しないわけがありません。
採用後に、試験に関わった教授へ「論文や面接って、どう評価されているんですか?」と聞いたことがあります。詳細は教えてもらえませんでしたが、「論文も結構シビアに採点しているよ」とは言われました。
事前にしっかり論文(作文)の練習をしておいて、本当に良かったと思います。これから受ける人は、論文対策を侮らないでください。
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向いている人の特徴:従順さとコミュ力
「大学で先生として働くんだから、学力が高くないとダメでしょ?」
そう思われるかもしれませんが、実習助手の仕事自体は、一般的な業務をこなせる常識のある人なら、問題なくできる仕事です(一部、実験に関する専門知識が必要になる場合はありますが)。
ただ、実際に働いてみると、向き不向きがはっきり出ます。向いている人の特徴は、2つです。
①従順な人
実験・実習を運営するには、先生方からの指示を間違いなくこなす必要があります。実験書に書かれた通りの材料や道具を準備しないと、実験そのものが成立しません。だから、与えられた指示を従順にこなせる人が向いています。
正直、私は我が強いほうの人間でした。「これ、もっとこうしたほうが効率的じゃない?」と思っても、上の指示通りにやるしかない場面が多くて。折り合いをつけるまでが、大変でした。
②コミュニケーションが好きな人
実習助手は、本当にいろんな人と関わります。
職員、教員、外部講師、学生、OB・OG、取引業者。立場も年齢もバラバラの人たちと、毎日コミュニケーションを取り続けます。さらに、その人たちの橋渡し役になることも多い。
「先生、業者さんがこう言ってるんですが」「学生さん、先生からこういう連絡がきました」「OBの方からのお問い合わせ、こう対応していいですか?」
毎日こういう調整業務が発生するので、コミュ力が低いと地獄です。
逆に、学生に対しては「身近な相談相手」としての役割もありました。先生よりも年齢が近いこともあって、学生から進路相談や生活相談を受けることも多かった。親身に話を聞いてあげられる人にも、向いている仕事です。
良かったこと:給与の安定と人脈
6年働いた中で、良かった点もたくさんありました。
①給与が比較的安定している
年収300〜400万円。決して高くはありませんが、20代の女性としては十分安定した収入でした。ボーナスも出ますし、福利厚生も整っていました。
②専門知識が得られる
職場の性質上、その分野の研究者たちが集まっているので、最先端の知識に触れる機会が多かったです。雑談レベルでも専門的な話が飛び交う環境は、知的好奇心が刺激されました。
③人脈が広がる
外部の研究・教育機関やOB・OGと接点を持てる機会も多くありました。実際、在職中にサポートしていた先生から、退職後の仕事を紹介された同僚もいます。
私自身も、10代から60代まで幅広い年齢層の人たちと交流しながら働けたのは、本当に大きな財産です。ここで培ったコミュニケーション力は、後々どこに行っても活かせる能力だと、退職した今でも実感しています。
辛かったこと①:サービス残業の温床
ここからが、実習助手のリアルな闇の部分です。
私が働いていた当時、大学教員の勤怠管理は、驚くほどゆるいものでした。
1日1回、タイムカードを切ればOK。それだけ。出退勤の細かい時刻管理はなくて、「その日に出勤した」ことさえ証明できればよかったんです。
一見すると、これは「遅刻・早退し放題!?」とも取れる、ゆるい管理に見えます。でも、実態は逆でした。
残業させ放題だったんです。
雇用条件には「原則9:00〜17:00」と書かれていましたが、退勤時間を証明する仕組みがないので、残業しても当然のようにサービス残業になります。
実験の準備や片付けが終わらなければ、夜遅くまで残るしかない。残業代は1円も出ない。これが日常でした。
配属される学科によっては連日残業が続いて、ある先輩は「時給換算すると涙が出る」と漏らしていました。今思い出しても、完全にブラック企業の働き方です。
時代も変わって、今はオーバーワークへの社会的バッシングが強くなっているので、さすがに改善されていると思います。でも、当時は本当にきつかった。
関連記事:私立高校の非正規教員10年で辞めた話|テスト1人19回・常勤試験3連敗の地獄
「終わりがある」ことのメリット
任期制度は、デメリットばかりに見えます。でも、実はメリットでもあるんです。
何かに挑戦中の人には、最適な職場なんですよ。
私自身、実は公務員浪人をするために、実習助手の試験を受けました。「公務員試験は受け続けたいけど、生活費は稼ぎたい」というニーズに、5〜6年の任期がぴったりハマったんです。
教員試験、公務員試験、司法試験。長期戦になる挑戦をしている人にとって、実習助手は働きながら挑戦を続けられる環境です。任期があることで「いつまでもダラダラ続けてしまう」リスクもありません。
ただし、配属先によっては勉強時間が確保できるか保証できない、という面はありますが…。
大学によっては対策講座をやっているところもあって、職員特典でそういう講座を利用できる場合もあります。試験対策に職場を有効活用できる、というのも実習助手ならではのメリットでした。
教員志望者にとっての隠れたメリット
これも知らない人が多いと思うんですが、実習助手の経歴は「教員の実績」として加算されるらしいです。
詳しい仕組みは大学や採用先によって違うと思いますが、教員を目指している人にとっては、大きなメリットになるかもしれません。
「いずれ大学教員になりたい」「研究職に就きたい」と考えている人は、実習助手の任期を、キャリアの踏み台として戦略的に活用することもできます。
6年働いて、退職して
私は、任期満了で退職しました。
正直、もっと続けたかった気持ちもあります。職場の人間関係も悪くなかったし、業務にも慣れてきていたし、何より給与が安定していた。
でも、任期制度の前ではどうにもなりません。優秀な先輩たちも、みんな同じように任期満了で去っていきました。
それでも、6年で得たものは確実にありました。
幅広い人脈、コミュニケーション力、調整能力、専門分野の知識。これらは退職後の人生でも、確実に活きています。
これから実習助手を目指す人へ
最後に、これから実習助手を目指す人にアドバイスを。
・任期制度を必ず理解してから応募する:5〜6年で必ず職を失うことを、最初から認識しておく。
・配属ガチャを覚悟する:業務内容や残業時間は配属先次第。どこに配属されてもやれる覚悟を持つ。
・次のキャリアを早めに考える:任期満了の半年前くらいから、次の仕事を探し始める。
・何かに挑戦したい人にはおすすめ:公務員試験・教員試験などの受験生にとっては、最高の踏み台。
実習助手は、メジャーな職業ではありません。でも、正しく理解して活用すれば、自分のキャリアを形作るうえで意外と良い選択肢になり得る仕事だと、6年経験した今でも思っています。
任期付きの働き方で、次の一手を考えている人へ
大学の実習助手のいちばんの特徴は、最初から「終わり」が決まっていること——5〜6年の任期上限があり、どれだけ優秀でも全員が満了で去っていきます。
腰を据えて長く働くには弱点ですが、資格試験など次の目標がある人には「生活費を稼ぎながら、ダラダラ居続けずに次へ進める区切り」として機能する——同じ任期制が、立場によって弱みにも強みにもなるわけです。
要は、任期のあいだに次の一手をどう仕込むかで価値が変わる働き方。不安があるなら早めに、一人で抱え込まず頭の中を整理しておくと役立ちます。
困った時の選択肢
【任期のあいだに、次のキャリアを設計しておきたい方へ】
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そのほか、状況に合わせて選べる窓口を挙げておきます。
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