「教師は楽でいいね」「夏休みもたっぷりあるんでしょ」。そう言われるたびに、笑って受け流すしかない。
正直に書くと、私はこの仕事が好きだ。好きな教科を子どもたちに教えて、その成長に立ち会える喜びは、ほかの仕事ではなかなか味わえない。
それでも、給食を5分でかき込み、休憩らしい休憩のないまま一日が終わっていく現実もある。
これは、教員という仕事のやりがいと過酷さ、その両方を内側から見てきた話です。
📌 体験者プロフィール
・業界・職種:公立小中学校の教員(教科担当)
・雇用形態:正社員(正規教員)
・性別:女性
・退職状況:現職継続中
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
好きな教科を、次の世代に教えられる
教師という仕事の大きな魅力は、自分の好きな教科を次の世代に教えられることだと思っている。学生時代に一生懸命学んできたことが、そのまま仕事になる。それまでの経験をこれほど生かせる仕事は、なかなかないんじゃないだろうか。
授業を作るために、教材研究を重ねる。でもそれは好きな教科を掘り下げて深めていく作業だから、大変でも苦にならない。苦にならないことでお金がもらえるのは、本当にありがたいと思う。
そして、その授業を子どもたちが分かってくれたときは、何より嬉しい。自分の授業で子どもの世界が少しでも広がっている実感があると、「次もがんばろう」と素直に思える。
何年も先の未来に、種をまく
子どもたちに教える中身には、すぐ効果が出るものと、何年も経ってからようやく効果が出るものがある。教科の内容はその場で伝わるけれど、5年後10年後になって、やっと実感してもらえることもある。
卒業した生徒と、何年か経って社会人として再会することはよくある。そのときに「あの時に先生にこう声をかけてもらったから、今の仕事に打ち込めている」なんて言われると、泣きそうになる。
今の世の中は「即戦力」「すぐ役立つ」ばかりが重視される。でも、何年も先の未来に向けて種をまくような教育のあり方には、希望があると思う。
目の前の生徒が大人になったとき、どんな力が必要になるのか。未来を想像しながら今日の授業を作っていく作業は、純粋に面白い。さまざまな価値観に出会うであろう子どもたちが、それぞれの価値観を大切にできるような授業を作れたらと、日々思いながら働いている。
子どもの成長と、自分自身の成長
教師をしていて一番の魅力だと感じるのは、やっぱり子どもの成長に寄り添えることだ。50点しか取れなかった生徒が、一生懸命勉強して80点以上を取れるようになる。そんな瞬間は本当に喜ばしい。
成績だけじゃない。人間的な成長も間近で見られる。友人関係がうまくいかなかった生徒が、いろんな相手と関わるなかで、自分なりの人間関係の築き方を学んでいく。その現場に立ち会い、ときには一緒になって悩める仕事だ。
それに、子どもたちや同僚の先生から学ぶこともたくさんある。学校の中は毎日が勉強だ。仕事を通して自分も成長できている実感がある。子どもの成長に負けないよう、自分も学び続けようと思える職場だ。
女性が働き続けやすい職場
意外に思われるかもしれないが、女性にとっては働き続けやすい職場だと感じている。
産休や育休の制度が充実していて、育休は3年取ることができる。実際に3年取る先生も多い。制度が整っているぶん、産休・育休への理解もほかの職場より進んでいると思う。復帰したときの立場も保証されているし、産休中も勤続年数はそのまま保持される。
生理休暇やつわり休暇といった制度もあって、体調に合わせて休むことも一応できる。仕事の内容に男女差はほとんどなく、男性とほぼ対等に働ける。女性が多い職場なので、家庭と仕事の両立についてアドバイスをくれる先輩が多いのもありがたい。
休憩時間が、実質ない一日
ここからは、世間ではあまり語られないほうの話だ。
よく言われるとおり、教師の仕事にはブラックな面が確かにある。8時から17時までの勤務時間のなかに、休憩時間は実質ない。制度上はあることになっているけれど、実際にゆっくりできる時間はほぼゼロだ。
普通の仕事なら昼休みに昼食をとると思う。でも小中学校だと、昼食はたいてい給食で、生徒と同じ教室で一緒に食べる。その時間は配膳からアレルギー対応、片付けまで指導しなければならない。自分が食べるのは5分くらい。慌ててかき込んで、あとは指導をしている。早く食べ終えて、生徒が提出したものの丸付けに回すこともよくある。
授業のない空き時間があっても、連絡帳のチェックや別の授業の準備に追われていて、休めるような時間はほとんどない。
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時間外労働と給特法、そして部活のボランティア
勤務時間は8時から17時と設定されている。でも、その時間外の労働が当たり前のように組み込まれている。
8時始業のはずなのに、8時前にはもう子どもたちが学校に来ている。子どもが来る以上、学校を開けないわけにはいかない。部活動は放課後6時までと決められていても、毎日のように時間外労働が前提になっている。
「残業した分、残業手当が出て稼げるんでしょ」とよく言われる。でも、残業手当にあたるものは出ていない。給特法という法律で、給料の4%を上乗せするかわりに残業代は出さない、という仕組みになっているからだ。
平日の部活動は、実質ボランティアだ。土日の部活には手当が出るけれど、遠征の交通費は出ないので、交通費と弁当代で足が出てしまうこともある。
部活に取られる時間は長いのに、その分は強制的なボランティア。これは大きなデメリットだし、本当に改善してほしい点だと思っている。
やりがいと過酷さが、いつも同じ顔をして毎日やってくる。それでも今のところ、私はまだこの仕事を続けている。
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編集部より
教員の働き方の核心は、給特法という仕組みにあります。公立学校の教員には残業代が支給されず、かわりに給料月額の4%にあたる教職調整額が一律で支払われる。問題は、8時前から始まる朝や平日の部活動指導といった青天井の時間外労働が、この一律4%に丸ごと飲み込まれる点です。「平日の部活は実質ボランティア」「土日は手当が出ても交通費と弁当代で足が出る」というこの体験談の言葉は、その構造をそのまま映しています。やりがいと過酷さが同じ顔で毎日やってくる仕事だからこそ、続けるかどうかの判断は簡単ではありません。
「好きで選んだ仕事なのに、なぜこんなに苦しいのか」——そう感じるのは、あなたの覚悟が足りないからではありません。やりがいが本物であることと、働き方が過酷であることは、両立してしまうからです。辞める・続けるをすぐ決める必要はありません。今の働き方が自分にとって続けられるものか、一度立ち止まって整理してみることが、次の一歩につながります。
困った時の選択肢
【続けるか迷いながら、働き方を整理したい方へ】
このまま教員を続けるか、それとも——答えを急ぐ前に、自分が何を大事に働きたいのかを整理したい。そんな20代〜30代(22〜39歳)の方には、転職を前提にせずに相談できるキャリアコーチングという選択肢があります。キャリートは、自己分析や「自分らしい働き方」を一緒に言葉にしていくサービスです。
→ 転職前提なしで働き方を整理する【キャリート】(22〜39歳)
そのほか、状況に合わせて選べる窓口を挙げておきます。
・40代・50代で、これまでの教員経験を棚卸ししながら今後の働き方を考えたい方は → 経験の棚卸しから始めるキャリア相談【キャリフト】(40〜50代)
給特法のもとでの時間外労働や部活動の負担については、総合労働相談コーナー(厚生労働省)で無料相談できます。つらさを一人で抱えきれないときは、よりそいホットライン(0120-279-338)も24時間無料で相談に乗ってくれます。

