事務所に響く、上司の怒鳴り声。
その手には、ハサミが握られていました。
ノルマに届かなかった先輩が、その前で謝ることしかできずに立っています。
- 📌 体験者プロフィール
- 内定が出ない中で決まった大手企業。営業職で入社して、1年半で辞めました
- 研修は定時で終わり、福利厚生も手厚い。表向きは本当にホワイトでした
- 配属先には先輩しかいなくて、「研修受けたんだろ」という空気でした
- 「ノルマに達せないなら、自分を犠牲にしてでも達成しろ」と怒鳴られる先輩
- 先輩たちは自爆営業をしていた。自分や家族、架空の人の名前で契約して
- 新卒だから免除、は続かなかった。未達の月は先輩がカバーしてくれた
- 事務所に戻れば詰められて、外では上司の着信を無視して架空のアポを報告していた
- 人事部に告発したら、「仕方ないこと」と言われました
- 「結婚が決まったので」と伝えて辞めました。いまは二人の子どもを育てています
- ノルマと上司の圧に追われて、毎日が苦しい営業職の人へ
📌 体験者プロフィール
・年代:20代前半(体験当時22〜23歳)
・業界・職種:大手企業の営業職(店舗配属)
・企業規模:大企業
・在籍期間:約1年半(新卒入社)
・退職状況:退職済み
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
内定が出ない中で決まった大手企業。営業職で入社して、1年半で辞めました
これは、新卒で入った大手企業で、ノルマと上司の圧に追い詰められていった私の話です。
大学を卒業するころ、周りも私も、なかなか内定をもらえずにいました。
そんな中でやっともらえたのが、この会社でした。
内定の連絡をもらったときは、ほっとして力が抜けたのを覚えています。
会社の名前を言えば、周りからは「すごいね!」と言われます。
私もそのたびに、ちょっと誇らしい気持ちになっていました。
でも実際に中に入ってみたら、とんでもないブラックで。
今は、あの会社を辞められて本当によかったと思っています。
入社したのは22歳のとき。辞めたのは、その1年半後の23歳でした。
最後のほうは、会社へ向かう電車の中で、毎日胃が痛くなるようになっていました。
研修は定時で終わり、福利厚生も手厚い。表向きは本当にホワイトでした
営業職として入社した私は、最初の3か月ほど、同期のみんなと研修を受けました。
研修所に毎日こもりっぱなしの、缶詰みたいな日々です。
でも、始まりと終わりの時間もきっちり決まっていて、残業はありませんでした。
福利厚生はしっかりしているし、研修の中身も整っている。外から見れば、文句なしのホワイト企業だったと思います。
3か月も毎日顔を合わせていれば、同期とはすっかり仲良くなります。
「この同期たちと一緒なら、これからも頑張っていける」。本気でそう思っていました。
新卒の私にとって、あの3か月は大きな支えでした。
ところが、3か月が終わって配属が決まると、その同期たちと会うことがなくなったんです。
営業は、担当する地域によってお客さんの色がぜんぜん違います。
相談しようにも話が噛み合わなくなって、会う機会も、連絡する回数も、少しずつ減っていきました。
表向きはあれだけホワイトに見えた会社の、ブラックな中身。
それが見えてきたのは、配属されてからでした。
配属先には先輩しかいなくて、「研修受けたんだろ」という空気でした
配属された店舗に、同期は一人もいません。
同じ店舗に同期が二人入ることはなくて、全員が一人一店舗ずつ。まわりにいるのは、先輩たちだけでした。
先輩たちは、いつ見ても忙しそうです。
わからないことがあっても聞きづらい雰囲気で、「研修受けたんだろ」と言われているような態度でした。店舗に入るなり手取り足取り教えてくれる人は、誰もいませんでした。
私は、研修で習った電話応対をひたすらやるしかありませんでした。
自分に振り分けられたお客さんのところへ挨拶に行くことになって、上司と一緒に出かけた日のことも覚えています。
てっきり、お手本を見せてもらえるものだと思っていました。でも、そんなことは一切なくて。いきなり、すべてを私に任されました。
ほかの先輩に同行してもらうこともありました。
でもそれは、先輩が自分の時間を割いて、私の営業先についてきてくれているということです。その分、先輩の仕事は止まってしまいます。
そう思うと申し訳なくて、「ついてきてほしい」「教えてほしい」とは、どうしても言い出せませんでした。
「ノルマに達せないなら、自分を犠牲にしてでも達成しろ」と怒鳴られる先輩
そんなある日、先輩がパワハラを受けている場面を、目の当たりにしてしまいました。
きっかけは、「ノルマに達していない」ということでした。
上司がハサミを手に持って、先輩を脅していたんです。
事務所の中に、上司の大声が響きます。
「ノルマに達せないなら、自分を犠牲にしてでもノルマを達成しろ」。
先輩は、謝ることしかできません。
まわりの人たちは、見て見ぬふりでした。きっとこれが、この事務所では日常茶飯事だったんだと思います。
私は、その様子をただ見ているしかありませんでした。
定時になっても、先輩が怒鳴られている横で「失礼します」と出ていくのは気が引けて。
毎日、胃がキリキリと痛みました。
先輩たちは自爆営業をしていた。自分や家族、架空の人の名前で契約して
蓋を開けてみると、ノルマに届かない月にやっていたことは、先輩たちみんな同じでした。
自分の名前で契約する。自分の家族の名前で契約する。ときには、架空の人の名前まで使う。
いわゆる自爆営業です。
もちろん、その契約のお金は、自分たちで支払います。
ハサミの先輩だけが特別だったわけではなくて、先輩方は全員そうだったんです。
私は新卒だったので、まだ定時で上がらせてもらえていて、ノルマも課されていませんでした。
でもそれは、今だけなんだとわかってしまいました。
いずれ私も、あの先輩たちのようになる。
そう思ったときの恐ろしさは、今でもはっきり覚えています。
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新卒だから免除、は続かなかった。未達の月は先輩がカバーしてくれた
最初は「新卒だから」と免除されていたノルマも、だんだん私に課されるようになりました。
でも、私には、それを達成できる自信がありませんでした。
結局、届かなかった月は、ほかの人がカバーしてくれるのが当たり前になっていきました。
それが、いちばん堪えました。
「自分のせいで、先輩が犠牲になっている」。その現実を、届かない月が来るたびに突きつけられて、心が痛かったです。
お礼を言っても、その「カバー」の裏で何が起きているのか、考えるのが怖くなりました。
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事務所に戻れば詰められて、外では上司の着信を無視して架空のアポを報告していた
事務所に戻ると、上司への報告が待っています。
「今日は何をしていた」「どこの誰と、何時からアポを取っていた」「何件取れた」。細かく聞かれて、詰められました。
この時間が、苦痛で仕方ありませんでした。
外回りをしていると、仕事用のケータイに、上司からの不在着信が何件も入っていることがありました。
画面に並ぶ上司の名前を見るたびに、心臓が縮む思いでした。
私は、あえて無視しました。
そして、その場でっち上げた架空のアポを報告するようになっていったんです。
嘘をつき続けている自分にも、ほとほと嫌気がさしていました。
人事部に告発したら、「仕方ないこと」と言われました
パワハラが日常になっていることを、人事部に告発しました。
ここなら聞いてもらえる、と思って、勇気を出して話したつもりでした。
でも、人事部にいる人たちは、みんな元営業の人です。
現場の実態はもう把握していて、「仕方ないこと」と言われて、取り合ってもらえませんでした。
その一言で、会社の中に私が頼れる場所はなくなりました。
結局、泣き寝入りするしかなかったんです。
「結婚が決まったので」と伝えて辞めました。いまは二人の子どもを育てています
それでも、体も心も、もう限界でした。
こんなことは続けられない、と思いました。
「大手なのにもったいない」と言われるかもしれない、とも思いました。でも、このまま続けるほうが怖かったです。
当時の私は、彼氏と同棲していました。
「結婚が決まったので」と伝えて、会社を辞めました。
その後は派遣社員などを経て、いまは二人の子どもを育てています。
関連記事:新卒営業を3年で退職|年収220万・朝4時半起床→深夜帰宅でも前年比160%達成した話
ノルマと上司の圧に追われて、毎日が苦しい営業職の人へ
人事部まで元営業だった、というところが、この会社でいちばん重いところだと思います。
ノルマ未達を自分の財布で埋めるのが当たり前になった職場では、止める側も同じ文化の中にいて、社内に訴えても動いてもらえないことがあります。
会社の中だけで解決しようと抱え込む前に、外の相談先を知っておくだけでも、気持ちは少し楽になります。
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