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大手学習塾の塾講師を2年で辞めた話|監視カメラの下で社長の思想を叩き込まれた日々

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「会社は、社員にとって生きる場なんだから、無償で尽くすのが当たり前だ」

大阪の学習塾に新卒で入った私は、本当にそう教え込まれて2年間を過ごしました。

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📌 体験者プロフィール

・年代・性別:20代男性(体験当時20代前半〜半ば)

・業界・職種:学習塾講師(大阪府内の学習塾)

・雇用形態:正社員

・企業規模:中規模(自社ビルを持つ、地元では知名度のある学習塾)

・在籍期間:2年

・退職状況:退職済み

※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。

「良いところに就職できた」はずだったのに

私が就職したのは、大阪にあるそれなりに名の知れた学習塾でした。大阪に住んでいる人なら、名前を聞けばすぐにピンとくるようなところです。自社ビルを持っていて規模も大きく、面接の感じも悪くなかったので、内定が出たときは「ああ、良いところに就職できたな」と、素直にそう思っていました。

塾講師という仕事自体には、それなりに憧れもありました。生徒の成績が伸びたときの顔とか、そういうものを想像して、悪くない仕事だろうと思っていたんです。

ところが実際に入ってみると、外から見ている分には想像もつかないくらい、真っ黒でした。看板の立派さとか自社ビルとか、そういう外側の情報は、内側の実態とはまったく関係がないんだということを、私はここで初めて知りました。

終わらない一日と、代打探しの恐怖

まずおかしいと思ったのは、拘束時間の異様な長さです。塾なので、学校帰りの生徒の都合に合わせて勤務が夜遅くなるのはある程度仕方ありません。それは入る前から分かっていたことです。

でも、連日のように本社会議があるんです。高齢の社長が好き放題しゃべるだけの会議のために、朝8時台から出勤しなければならない。授業がある日は、そこから夜まで働き続けます。しかも終業後には「サロン」と称した謎の勉強会が開かれるので、深夜2時頃まで家に帰れないこともままありました。何のための勉強会なのか、最後まで分からないまま参加していました。

そんな毎日が続き、しかも土日は模試やテスト対策のイベントが常にあって、月の中にほとんど休みがない状態が長く続いていました。

どうしても休みたい日があるときは、代わりに出勤してくれる社員を自分で探して、頭を下げて頼み込む必要がありました。何人かに断られてから、ようやく1人見つかる、というのも珍しくありませんでした。裏を返せば、それは自分が休めるはずの日に、他の社員から代打を頼まれる可能性があるということでもあります。やっと取れた1日の休日なのに、朝起きた瞬間から、メールの着信音が鳴るたびにビクビクしながら過ごす羽目になっていました。友人と会う約束をしていても、頭の片隅はずっと仕事のことでいっぱいでした。

「会社は居場所」、だから無給が当然

その会社では、「社員にとって会社は生きる場なのだから、無償で尽くすのが当たり前だ」という考えが、当然のように横行していました。深夜まで残ろうが、休日を返上しようが、完全なボランティア。残業代の支給など、最初から一切ありませんでした。

しかも社員は全員、入社から半年で取締役に就任するという謎のルールがあったんです。これで、残業代も退職金も支払わなくていいという理屈らしいのですが、正直、今考えても意味がわかりません。取締役という肩書きだけが与えられて、給料も権限も新入社員のときと変わらない。そんな肩書きに何の意味があるのか、当時は誰も疑問に思っていないようでした。

社内にはネット掲示板があって、少しでも会社に異を唱えるような発言があれば、そこで徹底的に糾弾されて降格させられたり、場合によってはクビになることすらありました。誰が書いたかは分からないのに、翌日には社内全員がその内容を知っている。そういう不気味さがありました。声を上げること自体が、危険な行為になっている。そういう会社でした。

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生徒にまで及んだ、社長の「思想」

その会社の社長は、まるで思想家のような、極端な考えの持ち主でした。毎週の会議で延々とその思想をまくし立てるくらいならまだしも、終いには社員だけでは飽き足らず、授業中に社長の論文を生徒に配って、暗唱させたり、感想を書かせたりするような真似まで始めたんです。

勉強をするために塾に来ている生徒からは、当然、猛反発でした。塾に来ているのは受験のためなのに、なぜ社長の論文を読まされるのか、生徒からすればわけが分かりません。保護者の中にはクレームを入れて、塾を辞めさせる人もいたほどです。そんな空気の中、私たち現場の講師は常に白い目で見られ、やりがいを感じるどころか、罪悪感にさいなまれながら授業をする日々でした。

それでも、反発することはできませんでした。各教室には監視カメラがあって、本部が常にそれを見ていたからです。教壇に立つたびに、レンズの位置を意識してしまう。そんな状態で、まともな授業ができるはずがありませんでした。

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あの会社は今、どうなっているか

結局、私はその塾を2年で退職しました。

当然と言えば当然ですが、あの会社は、かつての栄華が噓だったかのように凋落し、今や見る影もない状態になっています。もともと塾以外にも複数の事業を持つ会社だったので、倒産こそしていませんが、塾部門はほぼ終わったと言っていい状態です。

やはり、あまりにもワンマンで柔軟になれなかった社長と、そのイエスマンになって異を唱えられなかった幹部たちが、あの会社を腐らせてしまったんだろうと思います。当時は「これが普通なんだろう」と思い込んで働いていましたが、外に出てから振り返ると、あれはどう考えても普通ではありませんでした。

会社が間違った方向に進んでいるとき、権力者が誤った方針を打ち出したとき、下につく者全員が風見鶏のようにそれに付き従ってしまう組織は、ブラックになるより他ないんだな、と今は思っています。

「会社は居場所」という言葉に、疑問を感じている人へ

「無給で尽くすのが当たり前」「半年で全員取締役」——理屈として筋が通っているように聞かせる仕組みほど、実際は残業代を払わないための言い訳にすぎないケースが少なくありません。異論を唱える手段まで社内で潰されているなら、それはもう一社員の努力で変えられる話ではなく、辞めるという選択肢を早めに検討していい局面です。

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「会社の当たり前」を一度外から眺めてみたい人は、読む・聴くという形で誰かの経験に触れてみるのもひとつの方法です。

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朝8時から深夜まで、心身をすり減らして働いていた頃を思うと、一日の終わりには、目だけでもきちんと休ませてあげてほしいと思います。蒸気で温まるホットアイマスクを使っている人もいます。

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