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新任担任が経験したモンスタークレーム|豹変した母親の裏にあった家庭の危機

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消しゴムが一本、なくなった。

それだけの、些細な出来事でした。

新学期から数か月、あんなに気さくに話しかけてくれていた母親から、ある日を境に、怒りのこもった電話が頻繁にかかってくるようになりました。

「うちの子が、お友達に何かされたはずです」

これは、新任1年目の担任として受け持ったクラスで、実際にあった話です。

📌 体験者プロフィール

業界・職種:小学校教員(学級担任)

当時の立場・役職:新任1年目の担任

退職状況:現職継続中

体験形態:実体験ベース

※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。

新学期、初めて受け持ったAさんという生徒

新学期が始まって、Aさんのクラスの担任になりました。

前の年は男性の先生が受け持っていたクラスで、私にとっては新任1年目、初めて一人で任されたクラスのひとつでした。

Aさんは、何でも器用にこなせる子でした。

でも、母親の期待に応えなきゃという重圧を、小さな体でずっと抱えているような子でもありました。自分の意見をあまり表に出さない。おとなしいというより、出さないようにしている、という感じでした。

友だち関係になると、それが逆転します。自分の意見を強く主張して、うまくいかずに悩む場面がよくありました。自信家で、時々友だちを見下すような素振りを見せることもありましたし、小さな嘘をつく癖もありました。悪気があるようには見えなかったけれど、周りの子からすれば気に入らないことも多かったんだと思います。

Aさんの母親は、シングルマザーでした。

行事にはいつも積極的に参加してくれて、個人面談の場では、新任の私にもとても気さくに話しかけてくれました。

「頑張ってね。色々言ってくるお母さんもいるけど、気にしないで」

明るくはきはきと話す方で、懇談会でみんなが集まる場面でも、率先してクラスを良くしようと意見を出してくれたり、他の保護者に意見を求めてまとめ役を引き受けてくれたりする、そういう人でした。

Aさんについては、学校での様子とは真逆で、家では割とおとなしくて自分の意見を押し殺してしまうタイプだと心配しているようでした。だから私も、機会があるたびにAさんの学校での様子をこまめに伝えるようにしていました。

気さくだった母親が、少しずつ変わっていった

数か月が経った頃から、Aさんの嘘をつく癖が友だちにも指摘されるようになりました。

本人も家で、学校でいじめられているというような話をするようになったようです。

Aさんにはクラスに仲良しの子が一人いましたが、他のグループの子にも興味を持ってほしくて、積極的に話しかけていました。でも話が大きくなったり、物言いが強かったりして、思うように友だち関係を作れていないようでした。周りからすれば明らかに嘘とわかる内容でも、本人は大真面目で、嘘をついているという意識はまったくないようでした。

そのことを、家では自分を主人公にして話していたんだと思います。

その頃から、母親から「今日、帰ってきてこんな話をしているんですが、どういうことか説明してほしい」という連絡が、頻繁に来るようになりました。

そんなある日、Aさんが新しく買った消しゴムが、持ってきた初日になくなるという出来事がありました。

みんなで探しましたが見つからず、Aさんには「家に帰ったら、今日のことをお母さんに話してね」と伝えました。Aさんは以前から身の回りのことに少しだらしないところがあって、忘れ物やなくし物をよくする子でした。探せばポケットの中から出てくる、ということも頻繁にあったので、「次からは片付けるときに気をつけようね」ということで、その日は終わりました。

――ところが、それを聞いた母親は違いました。

自分の子がいじめられて、私物を隠されたのだと思い込み、怒って電話をかけてきたのです。

何に怒っているのか分からなくなるほどのクレームが続いた

そこから、母親の態度が急に変わっていきました。

子どもの話を聞いて頻繁に電話をかけてくることが増え、些細なことをきっかけに、どんなことにもクレームをつけてくるようになりました。自分の子どもの心配だけならまだしも、周りの子の家庭の事情にまで口を出してくることもありました。

当時のことを思い返すと、とにかく何に怒っているのか分からなくなってしまうくらい、色々なことに一つひとつクレームをつけてくる、という印象でした。

学校に直接来て話を聞きたい、ということもありました。

私のところではなく、前年度受け持っていた担任のところへわざわざ行って、こんなことがあったから聞いてほしいと訴えることもあり、状況はどんどんエスカレートしていきました。

前年度の担任に話すと、少し気持ちが落ち着くようでした。自分の行動を振り返って、「心配しすぎてしまって申し訳ない」というようなことを話してくれることもあったそうです。もっと自分の子の様子をよく見てほしい、担任はきちんと見てくれているんだろうか。そういう不安な気持ちの表れだったんだと思います。

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半年越しにわかった、本当の理由

後から分かったことですが、母親が頻繁にクレームを言ってきたり、些細なことに敏感に反応してしまっていた時期には、家庭の事情がありました。

Aさんには、中学生になる兄がいました。

その兄が、ちょうどその時期に、学校で嫌なことが続いたことをきっかけに、学校に行かなくなっていたそうです。そのことで、母親と兄の喧嘩が毎日のように続いていたということでした。

同じ時期に、Aさんから学校でいじめられているという話を聞かされて、心配になり、学校へのクレームが続いていたんだと思います。

Aさん自身も、家庭内で母親と兄の様子を見ていて、不安を募らせていたんでしょう。自分のことをもっと見てほしくて嘘をついたり、母親に心配してほしくていじめられていると話したりしていたんだと、今なら分かります。

兄の学校での状況が落ち着いてくるにつれて、母親の気持ちも落ち着いていきました。Aさんへの過剰な心配も、少しずつ収まっていきました。

もうすぐ担任を離れる、というタイミングで、母親は最初の頃と同じように、気さくに話しかけてくれるようになっていました。

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保護者の豹変に戸惑っている先生へ

モンスターペアレントと呼ばれる保護者の怒りは、多くの場合、学校そのものへの不信感というより、家庭内で抱えきれなくなった不安が、担任という一番近い相手にあふれ出しているだけのことがあります。

今回のケースのように、時間が経ってから理由が分かることも少なくありません。

怒りの矛先に立たされる先生自身の心が先に削れてしまわないよう、一人で抱え込まずに済む選択肢を知っておくことも大切です。

困った時の選択肢

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