大学4年の春、内定を取った大手小売業
私が大手小売業から内定をもらったのは、大学4年の春頃でした。
将来のことを漠然としかイメージできていなかった私は、就職活動でも明確な理由はなく「名前を知っていて、自分にもできそうな仕事」というだけでエントリーしていました。
通常であれば、そんな浅い考えの学生は落とされて当然だと思います。それなのに、毎年採用人数の多いその大手小売業には、なぜかスルスルと内定まで進めてしまいました。
今思えば、この時点で「1年で同期の3割がいなくなる」と分かっていたら入社しなかったはずです。後の祭りですが。
配属初日から漂っていた嫌な予感
入社して研修を終えた私は、数人の同期とともにとある店舗に配属されました。
すぐ上の階には支店のお偉いさんたちがいる構造で、彼らは頻繁に降りてきては店舗を一瞥し、当時の店長に小言を言い続けていきました。
新人の私には、その光景に対して言えることなど何もありません。ただ「ここは何かおかしい」という嫌な予感だけがありました。
その後は、客と上から降りてくる上司に毎日いびられながら業務をこなしていく日々が始まりました。
ちなみに「初日から違和感」というのは、小売業界では正社員だけに起こることではありません。大学生時代にスーパーで半年アルバイトをして、初日に違約金5000円のサインと制服代5000円を取られた男性の体験談もあります。
違約金5000円・制服代5000円|大学生時代に半年で辞めたブラックスーパーのリアル
接客未経験で繁忙店配属、慣れるまで3ヶ月
私はそれまで接客経験がまったくない状態で入社しました。
加えて、配属された店はその地域でも一二を争う繁忙店だったのです。通常業務に慣れるまで3ヶ月ほどかかりました。
業務内容は多岐にわたります。
・レジ打ちなどの基本接客
・催事の準備、計画
・新人研修の運営
・新入社員の課題管理
正直、新人でなくとも手が回るとは到底思えない量でした。
当時の店長は毎日のように転職サイトを覗きながら、ストレスが溜まるとバックルームの商品が入った箱を何度も殴っていました。今思えば、店長自身がもう限界だったのだと思います。
スタッフの方は皆さん気の良い人たちばかりで、それだけが救いでした。
半年で支店業務へ、雑用係としての日々
そうして約半年が過ぎた後、店舗から上の支店業務へと配置換えになりました。
やっと店舗業務に慣れてきたところで、また経験値ゼロの仕事の始まりです。
支店での半年間は、まるで雑用係でした。
・支社へコーヒーを届ける仕事
・ゴミ集め
・書類のシュレッダー
・オフィス掃除
正直、こんなことをやるくらいなら店舗にいたほうがましだと感じるほど、虚無な半年でした。
催事期間には朝から晩まで他店舗の応援に駆り出されました。日付が変わるまで着ぐるみの中に入っていたこともあります。
とにかく売り上げを上げるために無理やり数字を作る、そんな風土が染みついた会社でした。
入社1年目で店長任命、引き継ぎ30分
しかし、この企業の本当のブラックさが見えてきたのは、半年の支店業務を終えて入社1年が経った頃でした。
店舗経験半年の私が、ある店舗の店長に任命されたのです。
引き継ぎ時間は約30分。その30分の間に質問しても、大半は「分からない」と返されました。
・書類の保管場所
・鍵の管理
・スタッフのデータ情報の見方
何もかもが分からない状態で、店長としての勤務が始まったのです。
極めつけに、前任者が未達のまま放置していた催事目標の期限が間近に迫っており、上からは「なんとかしろ」と叱責される始末でした。
店長としての1年は地獄だった
そこからの1年は、本当に地獄でした。
催事や突発的な業務が多く、通常業務がまったく回らないので残業が当たり前。店舗に2日間ほぼ泊まり込みで滞在したこともあります。
催事に関するギフトやクリスマスケーキ、おせちなどのノルマは軽く数百単位を超えていました。足りない分は諦めつつも、何度も自費で購入して数字を埋めました。
あまりに理不尽な数に耐えかねて直属の上司に相談したところ、返ってきたのは「耐えるしかない」の一言だけ。
到底不可能な目標を、明確な道筋もなく店舗経験半年の新人が通常業務を回しながらこなすのは、あまりに理不尽な要求でした。
取材・外回り・店舗内反発の三重苦
店長業務に加えて、取材対応や突発的な外回りの仕事も次々と振られました。
通常業務に支障が出ることでスタッフからも反発が起きます。
「またいないんですか」「業務が回りません」と言われても、それは現場で起きていることだから店長のお前が解決しろと、上からは軽く流されました。
理不尽な客対応もありました。明らかにこちらに非がない場面で罵声を浴びせられたこともあります。
そうして精神が少しずつ摩耗していきました。
心が限界を迎えた瞬間
最終的に、ある催事の日のことでした。
深夜まで業務を行ったあと、目標未達を日付が変わるまで上司から説教された瞬間、私の中で何かがプツリと切れました。
「もう無理だ」と心の底から思いました。
私はその会社を2年で辞めました。
退職を決めた本当の理由
退職を決めたのは、あまりにも数字至上主義であり、それを明らかな経験不足の新人に丸投げし、結果だけを見て判断する企業風土に、とても続けられないと感じたからです。
ルールや制度がはっきりと定まっていない会社は、世の中にたくさんあります。明らかに理不尽なノルマも、今の世の中にも存在します。
全てがそうとは言いませんが、薄利多売な商品を売って利益を上げる必要のある小売業は、ブラックな側面を併せ持っているのも事実です。
数字至上主義で新卒を疲弊させる構造は、小売業に限った話ではありません。観光土産の営業職として年収220万円・朝4時半起床で働き、前年比160%を達成しても辞表提出した瞬間に上司の態度が一変した男性の体験談も、こちらの記事で紹介しています。
新卒営業マン年収220万・朝4時半起床→深夜帰宅でも前年比160%達成した3年間
これから小売業を目指す人へ
これから小売業を仕事にしようとしている人に、伝えたいことがあります。
もし今現在、同じような状況にある人がいるならば、可能であれば私のように精神を病む前に、そういった会社とは早々に見切りをつける判断をしてほしいと思います。
この世に会社は一つではありません。同じような職種でも、ちゃんと規則やルールを定めて健全に運営している企業もあります。
私と同じように、新卒で配属された会社の理不尽さに早期で見切りをつけた女性の体験談もあります。彼女は半年で退職した後、次のサービス業事務職で11年働き続けています。
新卒18歳で入った調剤薬局のお局3人地獄|半年で退職して事務職11年続いた話
そういったホワイト企業が増えてくれることを、私も願っています。

