「保育士になりたい。でも幼稚園と保育園、どっちに勤めるべき?」
これから保育の道に進む人、転職を考えている保育士、そんな悩みを抱えている人は多いと思います。
私は、新卒で幼稚園に勤めた後、転職して保育園で働いた経験があります。同じ「子どもを預かる仕事」なのに、幼稚園と保育園では本当に多くのことが違うことを、両方経験して初めて実感しました。
給料、上下関係、勤務時間、書類仕事の量、行事の力の入れ方、職員の年齢層。すべてが異なる別の世界です。
これから書くのは、両方の現場で働いた私が感じた、幼稚園と保育園のリアルな違いです。これから保育士を目指す人、現在の職場に違和感を感じている人、転職を検討している人に、何かのヒントになれば嬉しいです。
幼稚園に勤めて感じた現実:厳しい上下関係
新卒で勤めた幼稚園は、私自身が幼い頃に通っていた園でした。
懐かしい気持ちで入職しましたが、知っている先生はほとんどいなくなっていて、新しい先生ばかり。「あの優しかった先生は…」という思い出は、現実の職場には存在しませんでした。
幼稚園は基本的に一人担任制です。新人の私も、1年目から自分のクラスを任されました。フォローとして、ベテランの先生が複数のクラスをサポートに入る体制。新人は年少クラスを持たされることが多く、ベテランの指導を受けながらクラス運営をしていくのが一般的です。
そして、勤め始める前の研修期間。この時点から、先生方の上下関係の厳しさを肌で感じました。
朝は新人から、帰りは上が出るまで帰れない
幼稚園の暗黙のルールで、最も辛かったのがこれです。
朝の出勤:新人・若手の先生から順番に出勤
帰りの退勤:上の先生が帰るまで、下の先生は帰れない
決まりではないのですが、園内の暗黙の了解として徹底されていました。
自分の仕事が終わっていても、上の先生がデスクで作業していたら、勝手に帰れない。「お先に失礼します」と言える雰囲気じゃない。結果として、勤務時間が長くなる構造ができていました。
これは新人の精神を確実に削っていきます。「自分の仕事は終わっているのに、なぜ帰れないんだろう」という理不尽さが日々積み重なる。
お茶は新人、掃除も新人、雑務はすべて下から
朝晩の勤務時間問題に加えて、日中の雑務も新人の役目でした。
主な暗黙ルール
・保育終了後の施設内清掃は、下の先生が率先して行う
・お茶の時間には、新人の先生がお茶を入れる
・備品の準備、片付けは新人の役割 ・コピー取り、書類整理も若手担当
「決まり」ではありません。でも、やらないと冷たい目で見られる。だから、誰もが新人時代に従ってきた、暗黙のルールが生きていました。
「私もこういう新人時代を過ごしてきたから、あなたも当然やるべき」という思考が、世代を超えて受け継がれている世界でした。
行事は「保護者に見せるための発表会」だった
幼稚園のもう一つの特徴が、行事への異常な力の入れ方です。
運動会、発表会、生活発表会、お遊戯会。年間を通して、ありとあらゆる行事があります。表向きは「子どもの成長を促す活動」とされていますが、実態は違いました。
実際は、保護者に良い作品を見せるための発表会です。
「子どもがどれだけ成長したか」より、「保護者の前でどれだけ立派な発表ができたか」が評価軸。素晴らしい発表ができたクラスの担任は「すごい先生」として保護者から称賛され、園内でも評価されます。
逆に発表が地味だと、「あの先生のクラスは大したことなかった」と言われる。先生の腕の見せ所として、行事の発表が機能していました。
持ち帰り作業がデフォルト
行事の準備は、子どもへの指導だけでは終わりません。
会場の飾り付け、衣装の制作、小道具作り。これらの作り物は、勤務時間内には絶対に終わりません。
結果、ほぼ毎晩のように作業を家に持ち帰ります。週末にミシンを踏み続ける日々。
幼稚園の給料は保育園より良いですが、残業代はつきません。家で作業した時間は、すべてサービス残業になります。年収換算してみると、給料の高さが時間外労働で帳消しになっている、というのが正直なところでした。
幼稚園の良かった点
ただ、幼稚園にも良い面はありました。
①行事後の達成感 忙しい分、行事を成功させた時の達成感は本当に大きかったです。
②子どもの成長を実感できる 特に年長クラスを担任すると、保護者から「先生のおかげで成長できた」と声をかけてもらえる瞬間があります。これは何物にも代えがたい喜びでした。
③季節を感じられる 四季ごとの行事を通じて、季節を強く感じられる仕事でした。プライベートでは季節行事にゆっくり浸る余裕はなくなりますが、職場で季節を感じられるのは独特の魅力です。
④長期休みに有給が取れる 春・夏・冬の長期休み期間中、職員は完全に休みではありませんが、交代で有給を使って休暇を取れる仕組みがありました。これは保育園にはない大きなメリットです。
幼稚園の人間関係の本音
正直に書きますが、幼稚園の人間関係は良いとは言えませんでした。
上の先生は、下が動いて当然という感覚を持っている人が多く、新人時代は精神的にきつい日々が続きました。勤務時間も長く、退職を真剣に考えるレベルで疲弊していました。
幼稚園の人間関係に疲れて辞めたのは、私だけではないようです。同じく私立幼稚園で保育士として働き、女社会の陰口や保護者対応に疲弊して結婚を機に退職した元保育士の体験談も、こちらの記事で紹介しています。
保育士を辞めて専業主婦になった話|女社会の陰口とモンペに疲れ果てた私の本音
そして、私は転職を決意しました。次に勤めたのが保育園です。
保育園に勤めて衝撃を受けたこと
幼稚園から保育園に転職して、最初の数日間はカルチャーショックの連続でした。
「同じ業界なのに、こんなに違うものなのか」
そう感じる場面が次々と現れました。
シフト制で複数担任、雰囲気が全然違う
幼稚園との最大の違いは、勤務体系でした。
保育園では、勤務時間がそれぞれシフトで動きます。一人の先生がクラスの子どもを最初から最後まで見るのではなく、数人の先生が入れ替わりで見る体制です。
開所時間が長いので、早番・中番・遅番のローテーション。複数学年が合同で保育される時間も多くあります。
これだけで、職場の雰囲気が劇的に変わります。「朝は新人から出勤、上が帰るまで帰れない」みたいな幼稚園のルールが、構造的に存在しないのです。
職員の年齢層の違い
雰囲気の差を作るもう一つの要因が、職員の年齢層です。
幼稚園にいた頃は、年齢層が割と高めでした。新人の私の上にはずっと先輩が連なっていて、なかなか後輩ができない状態。だから、いつまでも自分が「下」の立場でした。
一方、保育園には若い先生が圧倒的に多く、雰囲気が全然違いました。
明るく、活気があって、若い先生も積極的に上の先生に意見を言えます。「あなたの考えはどう?」と新人にも意見を求める文化があり、フラットな人間関係が成立していました。
幼稚園の暗黙ルールに苦しんでいた私にとって、これは本当に救いでした。
給料は保育園のほうが圧倒的に低い
ただ、保育園に転職してすぐに気づいた致命的な違いがあります。
給料が幼稚園より大幅に低いのです。
特にボーナスの差が大きく、年収ベースで比較すると驚くほどの差が出ます。「同じ保育職なのに、なぜここまで違うのか」と、最初は呆然としました。
ただ、これには理由があります。
幼稚園は私学(私立幼稚園)が多く、独自の運営方針で給料水準を決められます。一方、保育園は認可保育園の場合、自治体の補助金で運営される割合が大きく、給料水準が抑えられがち。
「働きやすさ」と「給料」は、トレードオフの関係にあるのが現実でした。
書類仕事の量は保育園のほうが圧倒的に多い
もう一つ、保育園で驚いたのが書類仕事の多さです。
幼稚園では作り物が多くて持ち帰り作業が常態化していましたが、保育園では:
主な書類仕事
・カリキュラム作成(月案・週案・日案)
・個別計画書(一人ひとりの発達記録)
・保護者への連絡ノート(毎日、一人ずつ手書き)
・各種報告書 ・行事計画書
これらをすべて、勤務中にこなさなければなりません。
お昼寝の時間も自分の仕事はできない
「子どもがお昼寝している時間、先生は楽そう」
外から見るとそう思われがちですが、全然そんなことはありません。
お昼寝の時間にやること:
・子どもの寝顔チェック(呼吸確認、体位の確認)
・教室の掃除
・自分の昼食を急いで摂る
・連絡ノートの記入 ・書類仕事
特に乳児クラスは、時間差で起きる子がいるので、ほとんど自分の仕事はできません。
「お昼寝中に書類仕事を片付ける」という想定で書類量が設定されているのに、実際にはお昼寝中に集中して作業できる時間はほぼゼロ。これが保育園の隠れた辛さです。
残業代は出るが、園は残業を嫌がる
保育園では幼稚園と違い、残業代はちゃんと出ます。これは大きなメリットでした。
ただし:
①一日の残業時間に上限がある ②園的には「なるべく残業せずに終わらせてほしい」という雰囲気がある
結果として何が起きるか。
「保育園で出来ない作業は家に持ち帰り、保育園でしかできない作業を保育園で終わらせる」という流れになるのです。
つまり、幼稚園と同じく持ち帰り作業が発生する。サービス残業が「園内残業」と「持ち帰り作業」に分散しただけ、とも言えます。
保育園で良かった点
それでも、保育園には保育園の良さがありました。
①子育て中の先生が多く、急な休みに寛容 保育園は子育てしながら働く先生が多く、子どもの体調不良などによる急な休みに対する理解があります。
②人間関係がフラット 幼稚園のような暗黙の上下関係がなく、若手も意見を言える雰囲気。
③シフト制で勤務時間が読める 退勤時間が明確に決まっているので、プライベートの予定が立てやすい。
④作り物が少ない 幼稚園ほど大規模な行事がないので、衣装作りなどの負担は軽い。
幼稚園と保育園、どっちに勤めるべきか
両方経験した私の結論を、率直に書きます。
給料を最優先する人 → 幼稚園 ただし上下関係と長時間労働、サービス残業を覚悟する必要あり。
働きやすさを最優先する人 → 保育園 ただし給料は低く、書類仕事の多さで疲弊する可能性あり。
子育てしながら働きたい人 → 保育園 急な休みに寛容、職員に子育て経験者が多い。
行事や発表会で達成感を得たい人 → 幼稚園 労力に見合う達成感が得られる場面は確かにある。
人間関係のストレスを避けたい人 → 保育園 若い職員が多くフラットな雰囲気、暗黙ルールが少ない。
保育士の働き方は、幼稚園・保育園の違いだけでなく、認可外保育園など多様な選択肢があります。認可外保育園で子連れ勤務をした元保育士の体験談も、こちらの記事で紹介しています。 認可外保育園で子連れ勤務1年9ヶ月|パート保育士の責任の重さで限界きた話
現場で生き残るための心構え
最後に、これから保育士として働く人へのアドバイスを。
①どちらも「忙しい」のは同じ 幼稚園も保育園も、表面上の働き方は違っても、忙しさは大差ありません。「保育園のほうが楽」と思って転職すると、書類仕事の多さでまた疲弊します。
②自分の優先順位を明確にする 給料か、人間関係か、勤務時間か。何を一番大事にするかで、選ぶべき職場は変わります。
③園見学を必ずする 同じ「幼稚園」「保育園」でも、園ごとに雰囲気は全然違います。就職前に必ず見学して、職員の表情や働き方を見てください。
④合わなければ転職を恐れない 私は幼稚園が合わなくて保育園に転職しました。今は保育園のほうが自分に合っていると感じています。最初の選択が永遠ではないことを、覚えておいてください。
保育の仕事は、本当にやりがいのある仕事です。だからこそ、自分が長く健康に働ける場所を選んでください。それが、子どもたちにとっても一番良いことだと、私は信じています。
