「爛れていないから大丈夫。病院に行く必要なし」
火傷をした私に、新卒で入った介護施設の上司はそう言いました。
その瞬間、ふと思ったんです。「爛れるまで頑張らないと、ここでは病院にも行かせてもらえないのか」と。
📌 体験者プロフィール
・年代・性別:女性(体験当時22歳〜24歳、新卒入社)
・業界・職種:「家庭的」を売りにした家族経営の介護施設
・雇用形態:正社員
・在籍期間:2年
・退職状況:退職済み(別会社に転職、現職継続中)
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
新卒で入った「家庭的」な介護施設の看板と、実態のギャップ
これは、新卒で「家庭的」を売りにした介護施設に入り、2年で退職した22歳女性のリアルな話です。
私が新卒で入社したのは、「家庭的」を売りにした介護施設でした。
季節折々のイベントや、食事へのこだわりが強くて、ご利用者様には本当に良い施設だったと思います。
開催されていたイベントを挙げると、こんな感じです。
・お正月、豆まき、夏祭りなどの定番イベント
・各部署ごとのお月見、花見、クリスマス会
・毎月のように行われる小規模イベント
・食事へのこだわり(季節感のある献立など)
ご利用者様の笑顔が見られる、温かい時間が確かにありました。
ただ、その「家庭的」を支えていたのは、職員の見えない労働でした。
介護施設で残業代が出ない?タイムカードを打刻するときの異常なルール
イベントを毎月のように行うということは、それだけの準備が必要になります。
けれど、勤務時間内はご利用者様の対応に追われて、イベント準備どころか、その日の業務や明日の準備すらままならないことが多かったんです。
必然的に、残業をせざるを得ない状態でした。
ところが、この施設では残業手当をつけてもらえませんでした。
タイムカード方式だったのですが、勤務時間を過ぎてからタイムカードを押すことは許されなかったんです。
そして、こんな運用が常態化していました。
例:デイサービスの送迎で渋滞にはまった場合
・タイムカードを持ってセンター長のもとへ行く
・勤務時間内に帰ってこられなかったことを謝罪する
・センター長に「勤務時間内の時間」を記入してもらう
・明日の準備のために仕事に戻る
つまり、遅れて帰ってきても定時に帰ったことになる仕組みです。
配属時に「こうするものだ」と教えられたので、当時の私はこれが普通だと思っていました。
新卒で入った会社の文化を「普通」だと思い込んでしまうのは、社会人なりたての多くの人が陥る罠です。私も、例外ではありませんでした。
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強制参加の職員旅行と、有給の闇
年に1回、職員旅行がありました。
職員旅行自体は、よくある会社行事だと思います。けれど、この施設の職員旅行には、いくつか異常な点がありました。
この施設の職員旅行の特徴
・強制参加(断る選択肢なし)
・有給を使って行く(休日扱いではなく休暇扱い)
・一緒に行くグループは勝手に決められる(話したことのない人と1泊2日)
・宴会ではアルハラ・セクハラが日常的
正直、職員旅行は苦痛でしかありませんでした。
そして職員旅行の有給強制使用と関連して、有給休暇の運用全般がおかしかったんです。
有給休暇の異常な運用
・全部、上司が毎月割り振る
・勝手に使用したことになっている
・自分の意思で取得することはできない
しかも、休日も呼び出されたり、終わらない仕事のために施設に出勤したりで、ゆっくり休める休みは月に2日あれば良い方でした。
用事があって休みたくても、すでにシフトに入れられていることが多々あって、シフトが出るまで予定が入れられない。
家族や友人との約束も、まともに立てられない生活でした。
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介護施設の労災隠し。「施設でケガしたと絶対言うな」という看護師長の指示
現場で働いていると、どうしても職員がケガをしてしまうことがあります。
施設の看護師では対処できない場合は病院に行くのですが、看護師長からは毎回こう言われていました。
「施設でケガをしたと絶対に言わないように」
労災を申請されると、会社が困るからです。
実際にあった事例を挙げると、こんな感じでした。
「家でケガした」ことにされた事例
・指を何針か縫った職員
・骨折をしてしまった職員
すべて「家でケガした」ことになっていました。
新卒だった私は、「会社とはそういうものなのか」と思っていました。
家族経営の小さな世界しか知らなかったから、これが異常だと判断する基準を、そもそも持っていなかったんです。
火傷で、目が覚めた瞬間
私自身が火傷をしたときの話です。
火傷の状態を見た上司は、こう言いました。
「爛れていないから大丈夫。病院に行く必要なし」
幸い、その場にいた看護師の方が上司を説得してくださって、私は病院に行くことができました。
ただ、上司の言葉が、ずっと頭に残ったんです。
「爛れていないから大丈夫」
つまり、爛れるまで頑張らないと、ここでは病院に行かせてもらえないのか。
家族からは「今すぐ辞めて帰ってきなさい」と、何度も言われていました。それでも私は、この施設のブラックさにまったく気づいていなかった。
でも、上司の一言で、ようやく目が覚めました。
「ここはおかしい」
退職を決意した瞬間でした。
家族経営ならではの「ごますり文化」
なぜこの施設で長く働き続けられる人と、すぐ辞めていく人がいるのか。
2年間観察してきて、気づいたことがあります。勤務年数が長い職員ほど、上司にごまをするのが上手い人でした。
家族経営だったので、人間関係はとても濃くて、独特の空気がありました。
家族経営の人間関係の特徴
・会長や専務に気に入られないと、冷たい対応
・上司の機嫌を読むスキルが必須
・実力よりもコミュニケーションの上手さが評価軸
・新人は先輩からの圧力にも耐える必要
どんな会社でもそうかもしれませんが、特に家族経営の施設では、この傾向が極端に強かったように思います。
私はそういうごますりが上手にできなかったので、結果的に長くは続けられなかったのかもしれません。
ただ、無理して続けていたら、もっと心身を削られていたと、今は思います。
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同僚と先輩の存在だけが、唯一の支えだった
ここまでブラックな環境でも、2年続けられた理由が1つだけあります。
同僚や先輩が、本当に良い人ばかりだったことです。
体力的にきつくても、文句ばかり言われても、2年勤め上げられたのは、彼らの存在のおかげでした。
支えになってくれた人たち
・休日に一緒に出かけてくれた先輩
・愚痴を言い合いながらモチベーションを保った同僚
・親身に話を聞いてくれたパートのスタッフ
特にパートで働いていた年配の女性スタッフには、本当に救われました。今でも感謝しています。
職場のブラックさは、人間関係の良さで多少は耐えられます。けれど、人間関係だけで乗り切るには限界があるということも、この経験で痛感しました。
介護施設で得られたもの
退職したからといって、この2年間がすべて無駄だったとは思いません。
施設には、本当に多種多様な人がいました。
施設で出会った人々
・施設を利用されている高齢者の方
・働き盛りの世代の同僚
・高卒で働き始めた若い子たち
・小さいお子さんがいて、パート勤務の女性
・送迎のために来ているドライバーの方
この人たちと、それぞれに合わせて話をしなければなりません。
退職するときには、コミュニケーションが苦手だった私でも、仕事を円滑に進めるために雑談したり、要望を聞き出したりできるようになっていました。
上長との間に挟まれて困ったこともありますが、結果的にコミュニケーション能力を養ってくれた経験だったと感じています。
転職してから見えた「普通の会社」
退職後、別の会社に転職しました。
驚いたのは、どの会社も「すごく良い会社」だと感じられるようになっていたことです。
あの介護施設より悪い環境には、その後一度も出会っていません。だから転職先でも、その後どこに移っても、楽しく過ごせるようになりました。
転職後に「普通だった」と気づいたこと
・残業した分は、ちゃんと残業代が出る
・有給は自分の意思で取得できる
・ケガをしたら労災を申請できる
・職員旅行があっても自由参加
・休日は本当に休める
これらすべてが「当たり前」にあったんです。
2年間「これが普通」と思っていた自分の世界が、いかに歪んでいたか。転職して、初めて理解しました。
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これから介護職を目指す人へ
最後に、これから介護職を目指す人へ伝えたいことがあります。
介護の仕事自体には、確かにやりがいがあります。ご利用者様の笑顔、感謝の言葉、季節のイベントでの一体感。
ただし、施設選びは慎重にしてください。特に「家庭的」「アットホーム」を強く打ち出している施設は、要注意です。
入社前に確認したいポイント
・残業代の支給ルール(タイムカードの運用は実態通りか)
・有給休暇の取得方法(自分の意思で取れるか)
・労災の取り扱い(ケガしたら正しく申請できるか)
・家族経営かどうか(経営者一族との関係性)
・離職率(ベテランと若手の比率)
これらをしっかり確認してから、入社を決めてください。
新卒で入った会社が「普通」だと思い込んでしまう罠は、本当に怖いものです。
外の世界を知らないまま無理を重ねるよりも、「ここはおかしいかもしれない」と感じた自分の感覚を、信じてください。
爛れるまで頑張らないと病院に行けない職場は、絶対に普通ではありません。
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「アットホーム」を掲げる施設で消耗している人へ
この施設の「家庭的」を支えていたのは職員の見えない労働で、残業はタイムカードに残させず定時に書き換え、業務中のケガは「家でのケガ」にし、有給は職員旅行に強制で充てる——労災隠しを含め、どれも労働関係の法令に触れるおそれが強い運用なのに、新卒で最初に入った職場だと、それすら「普通」と刷り込まれてしまいます。
決定打が「爛れていないから病院に行く必要なし」の一言で、彼女が目を覚ましたのも当然でした。
「ここはおかしいかも」と感じた感覚はたいてい正しいので、外の基準を一つ知るためにも、一人で抱え込まず、今の状況を一度だれかに言葉にしてみてください。
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