医療機器ディーラー5年で限界|パワハラ・居眠り事故・上司の一言で退職した話

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私は23歳から28歳までの5年間、医療機器のディーラーとして働いていました。

正社員として年収400万円、ボーナス2ヶ月分程度。額面だけ見れば悪くない条件に見えるかもしれません。

でも、その実態は病院の奴隷でした。

朝7時出勤、夜12時まで働いて残業代はほぼゼロ。土日も病院から呼び出されれば飛んでいく。罵声と誹謗中傷が飛び交うパワハラ職場。机を叩きながら「お前みたいなカスは他社で役に立たない」と毎日のように怒鳴られる日々。

最終的に、私は高速道路で居眠り運転による事故を起こし、その後の上司の一言で全てが冷めて退職しました。

これから書くのは、知られざる医療機器ディーラー業界のリアルです。これから医療業界への転職を考えている人、医療機器メーカー・ディーラーの違いを知りたい人、現在ディーラーで疲弊している人に、何かのヒントになれば嬉しいです。

私のプロフィール

性別:男性

職業:医療機器ディーラー(営業職)

勤務期間:23歳〜28歳の5年間

年収:400万円(ボーナス2ヶ月分含む)

退職後:医療機器メーカーの製造工場へ転職

医療業界への就職を考えている人へ、最初に伝えたいこと

これから医療業界に就職・転職しようとしている人に、最初に伝えたい大事なことがあります。

働くなら、メーカーにしておきなさい。

これは私の5年間の経験から、声を大にして言いたいことです。

医療業界には大きく分けて「メーカー」と「ディーラー(代理店)」があります。同じ医療業界でも、この2つは全く別の世界です。

ディーラーは本当の本当の本当に、ガチで病院の奴隷です。人権なんてありません。

なぜそんなに違うのか。それを理解してもらうために、ディーラーのリアルな日常を順番に説明していきます。

朝7時出勤、3病院をまわる日々

私の会社は始業時間が9時でした。でも実際には、毎朝7時には出勤していました。

理由はシンプルです。毎日、病院に医療器材を納入しないといけないから。

医療器材って、想像してもらえれば分かると思いますが、注射針、マスク、手袋、ガーゼなどは基本的に使い回しせず、一回きりで使い捨てます。当たり前のことですが、衛生的な理由で必須です。

そのため、病院は毎日大量の新品消耗品を必要とします。それを朝の業務開始までに納品するのが、ディーラーの仕事の一部です。

私は3つの病院を担当していました。これらすべてを朝の業務開始前に回るためには、7時には会社を出発しないと間に合わない。これが「9時始業なのに7時出勤」の正体でした。

病院は患者の命を預かる場所、だから24時間対応

ディーラーの仕事の特殊性を、もう一つ説明しておきます。

病院は患者の命を預かる場所です。もし医療器材が足りなくなったら、患者さんが死ぬ可能性があります。

だから病院から「これ足りないから、今すぐ持ってきて」と連絡があったら、何があっても従わないといけません

休日:土曜の朝でも、日曜の夜でも、関係なく駆けつける

深夜:夜中の2時に呼ばれることもある

正月:新年の挨拶を中断して病院へ

つまり土日出勤は当たり前で、24時間体制で病院の要求に応える必要がありました。

毎日毎日、夜12時まで働いて、それでも残業代はほぼ出ない。給料体系がほとんど固定給で、いくら残業しても収入は変わりませんでした。

ディーラーの仕事は配送だけじゃない

「配送だけならまだマシでは?」と思う人もいるかもしれません。

でも、ディーラーの仕事は配送だけじゃないのです。

医療機器ディーラーは、一般的に病院から注文された商品をメーカーから仕入れて、販売することで利益を上げるビジネスです。

仕事内容を整理すると、

・病院への配送

・新規受注の獲得(営業活動)

・医療器材に関する商品説明

・医療従事者からの問い合わせ対応

・メーカーへの問い合わせ仲介

・在庫管理 ・納品書、請求書の処理

ありとあらゆる業務をこなさないといけません。

利益率10%の薄利多売ビジネス

ディーラーの収益構造を知ると、なぜここまでブラックな労働環境になるか理解できます。

代理店の利益のほとんどは、医療機器で使われる消耗品から構成されます。そして、その消耗品の利益率は約10%程度しかありません。

しかも最近は、どの病院でも消耗品の価格をシビアにチェックしています。

「他社からはもっと安い見積もりが来ている」 「コスト削減のため、もっと値下げしてほしい」 「他のディーラーに切り替えるかも」

こういう値下げ交渉が日常的に来ます。そのしわ寄せは、すべてディーラーに来ます。

利益率を維持するために、薄利多売で膨大な数の注文を取るしかない。だから院内のいろんな診療科や部門を回って、注文を取りまくる必要がある。

結果として、医療機器ディーラーは仕事量が異常に多い業界になっています。

「ドンキーコング」のように机を叩く上司

労働時間の長さに加えて、私を本当に追い詰めたのはパワハラでした。

俗に言う「やりがい搾取」というやつです。

うちの上司は、まさにドンキーコングでした。漫画やゲームに出てくるあのドンキーコング、机をバンバン叩いて怒り狂うイメージそのままの人物。

毎日のように、上司は机を叩きながら怒鳴っていました。私も含め、若手社員は毎日のように罵声を浴びていました。

「お前みたいなカスは、他の会社に行っても何の役にも立たない」

この言葉を、5年間で何回聞かされたか分かりません。もう思い出したくもないくらい、繰り返し聞かされました。

新卒だった私は、これが普通だと勘違いしていた

今思えば、これは完全な洗脳でした。

でも当時の私は、社会人として最初の会社だったので、「世の中の会社はこんなものなんだ」と勘違いしていました。

「上司に怒鳴られるのは普通」

「夜12時まで働くのは普通」

「土日出勤するのは普通」

「残業代がほぼ出ないのは普通」

何が普通で、何が異常なのかの判断基準が、完全に狂っていました。

新卒で入った会社の文化を「普通」だと思い込む。これは社会人になりたての多くの人が陥る罠です。私自身、そこに見事にはまっていました。

退職のきっかけ:高速道路での居眠り事故

毎日のように遠方の病院へ車を走らせる生活。睡眠時間は明らかに足りていませんでした。

ある日、高速道路で居眠り運転をして事故を起こしてしまったのです。

幸い、命には別状ありませんでしたが、車は大破。自分の体も少し怪我をしました。

事故直後、ショックと混乱の中で、私はすぐに上司に連絡しました。「上司ならまず私の体を心配してくれるはず」と、無意識に期待していたのかもしれません。

返ってきた第一声がこれでした。

「車は大丈夫か?」

私の体ではなく、車の心配。上司にとっては、私のことなどどうでもよかったのです。

この言葉を聞いた瞬間、5年間の何かが全部冷めた音がしました。

「自分はこの会社で、何のために働いてきたんだろう」

「人として扱われていなかったんだ」

「こんな会社にいることが、人生の恥だ」

事故というショッキングな出来事と、上司の一言が組み合わさって、退職を即決断しました。

長時間労働による居眠り運転のリスクは、運送業界でも深刻な問題です。同じく長時間労働の運送業から転職した元トラック運転手の体験談も、こちらの記事で紹介しています。 運送業4年で限界|朝5時から深夜0時の拘束、居眠り運転のリスクで転職した話

友人の紹介で工場勤務へ転職

転職先は、友人の紹介で見つけました。

友人は医療機器メーカーの製造工場で働いていて、「人が足りていないからこないか?」と声をかけてくれたのです。

もう一秒でもあの会社にいたくなかったので、即オッケーしました。

転職後の世界、これが普通だった

工場勤務に転職して、私は本当の意味で「社会人として普通の働き方」を知りました。

  • 土日:完全休み
  • 残業:あったら100%残業代が出る
  • パワハラ:なし
  • 机を叩く上司:いない
  • 深夜呼び出し:当然なし
  • 休日出勤:強制なし

これらすべてが、当たり前にあったのです。

5年間「これが普通」と思っていた自分の世界が、いかに歪んでいたか、転職して初めて理解しました。

メーカーとディーラー、選ぶならどっち

ここで改めて、これから医療業界を目指す人に伝えたいことがあります。

医療業界に憧れる人は多いです。「人の命を救う仕事に関わりたい」という志を持っている人もいるでしょう。

でも、メーカーとディーラーは全く別の世界です。

メーカー

・残業代がきちんと出る

・休日もちゃんと休める

・パワハラ文化はディーラーよりずっと少ない

・専門性が身につく ・キャリアパスが明確

ディーラー

・薄利多売で長時間労働

・病院の奴隷的な働き方

・パワハラ文化が根強い

・利益率が低く給料も上がりにくい

・体力勝負

同じ「医療業界で働く」でも、選ぶ会社のタイプで人生の質が全く変わります。

「社員は家族だ!」という会社は危険信号

最後に、これから就職・転職する人へのアドバイスを。

求人広告や面接で「社員は家族だ!」「みんなで一致団結して頑張ろう」とアピールしてくる会社は、ブラックの可能性が非常に高いです。

理由を考えてみてください。

家族だから何ですか?

会社と社員の関係は、労働力と給料を提供し合っている雇用関係にすぎません。それ以上でも、それ以下でもないのです。

「家族だから当然だろ?」

「家族なんだから給料以上に働くのは当然」

「家族なんだから休日出勤も笑顔でやるべき」

こういう論理で社員を搾取するふざけた会社が、世の中にはたくさん存在します。私が在籍した会社も、そういう類のものでした。

労働は等価交換です。給料以上のものを要求する会社は、根本的に間違っています。

そういう会社は、世の中から絶滅してほしいと心から思っています。

5年間を振り返って

医療機器ディーラーで過ごした5年間。決して無駄ではなかったとは思います。

ただ、もう一度繰り返します。

働くなら、メーカーにしておきなさい。

同じ「医療業界で働く」でも、人生の質が全く違います。私のように居眠り事故を起こす前に、ブラックな会社からは逃げてください。

社会人として「普通」とは何かを、自分の五感で確かめてください。おかしいと感じたら、その感覚は正しいのです。

これを読んだ誰かの参考になれば嬉しいです。

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