医療法人の老健施設で介護士10年|稟議書地獄と人事異動の闇

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医療法人所属の介護福祉士、10年目の私

私は医療法人と名のつく会社の老人保健施設(老健)で、介護福祉士として10年勤務しています。

会社全体としては病院を中心に、老健、グループホーム、小規模多機能施設、通所リハビリ施設など、合計10もの事業所を抱えています。一見、安定した大きな組織に見えますよね。

実際、安定はしています。子育てをしながら長く働ける職場であることも事実です。

でも、10年働いた今だから書ける、医療法人ならではのブラックな現場事情があります。今回は、介護士として勤務するリアルな実態を、ホワイトな面とブラックな面の両方からお伝えします。

これから介護士を目指す方、医療法人での就職を検討している方、現役介護士で職場に違和感を感じている方の参考になれば嬉しいです。

老健の仕事内容と勤務形態

まず、私が働いている老人保健施設での仕事内容から説明します。

主な業務は、食事介助・排泄介助・入浴介助といった、利用者の日常生活を支援する業務です。利用者の多くは介護が必要な高齢者なので、24時間体制で施設は稼働しています。

そのため勤務形態は完全シフト制で、早番・遅番・日勤・夜勤を組み合わせて回しています。月の休みは10日ほど。

体力的にきつい部分もありますが、シフト制の介護施設としては平均的な労働時間です。

この仕事の良かったこと

10年続けてきて、良かったと思えることもたくさんあります。

良かった点

・働きながら介護福祉士の資格が取得できた(実務経験3年で受験資格取得)

利用者とのコミュニケーションが日々の楽しみ

・レクリエーションや行事の企画でやりがいを感じる

・利用者が楽しんでくれる瞬間が報われる

特に印象的なのは、レクリエーションや季節行事を企画する瞬間です。利用者が楽しめる内容を考えて提供して、笑顔を引き出せた時の達成感は、他の仕事ではなかなか味わえません。

「先生、今日のレク楽しかったよ」と声をかけてもらえる瞬間に、この仕事を選んでよかったと思います。

辛かったこと|他事業所への応援という名の雑用係

ただ、辛い瞬間も当然あります。

特に消耗するのが、他事業所への応援勤務です。

医療法人として10事業所もあるため、人手不足になった事業所に応援要員として派遣されることが定期的にあります。

問題は、事業所によって業務内容が全然違うこと。

例えば、私は老健勤務なので老健の業務には慣れていますが、グループホームや通所リハビリの業務は別物。応援に行っても即戦力にはなれず、結果として雑用係になってしまうんです。

応援先で任される雑用の例

・寝具交換を何時間も延々と行う

・居室やトイレの掃除

・備品の整理

・記録に関係ない事務作業

こういった作業を一日中こなして、肝心の利用者と接する時間がほとんどない。これが本当に苦痛でした。

「私は介護士として働きたいのに、ただの雑用係じゃないか」

応援から自分の事業所に戻る時、毎回そう思っていました。

ブラックな実態|稟議書地獄

ここからが、医療法人ならではのブラックな話です。

施設運営に欠かせない物品や備品の購入が、信じられないほど面倒なんです。

例えば、施設の洗濯機やテレビが故障した時。普通の感覚なら「壊れたから買い替えましょう」で済む話ですよね。

ところが、私の職場ではそうはいきません。

1万円以上の品物を購入する時の手順

・所定の稟議書に品名・必要な理由・金額を記入

壊れた品物の写真(壊れた箇所と購入年月日がわかるもの)を添付

購入したい品物をネット検索して価格比較した書類を作成(複数業者の見積もり比較)

・稟議書を役員回覧に出す

役員全員の合意印が揃うまで購入不可

これだけの書類と確認プロセスを経ても、稟議が下りないことがあるのです。

「いやいや、洗濯機壊れてるから買い替えるだけなんですけど」

そう言いたくなる気持ちを毎回飲み込んで、せっせと書類を作る日々。

しかも、稟議が下りるまでの間、利用者には不便な思いをさせないよう現場で工夫が必要です。例えば洗濯機が1台故障したら、残った洗濯機を他のフロアと共有するためのスケジュール調整が発生する。

こういう書類作成や調整は、当然ながら時間外労働になります。利用者の介護を最優先にする以上、書類仕事は勤務時間内に終わらないのです。

サービス残業で稟議書を書く介護士、笑い話のようですが、これが私たちの日常でした。

医療法人ならではのブラック要素は稟議書地獄ですが、家族経営の介護施設にはまた別の闇があります。「家庭的」を売りにした介護施設に新卒で入社し、タイムカード打刻禁止や強制職員旅行を経験して2年で退職した方の体験談には、組織形態によって介護職の苦しみが大きく異なる実態が綴られています。

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ホワイトな点|子育て世帯への配慮

ただ、すべてがブラックというわけではありません。

私の職場には子育て世帯の職員が多く勤務していて、そのことが職場文化にいい影響を与えています。

子育て世帯に優しい職場文化

・子供の行事や授業参観の指定休が取りやすい

・お互いに協力して休みを融通する文化が根付いている

家族の体調不良や感染症による突発休みにも対応してくれる

・「お互いさま」の精神で職員同士が助け合う

これは10年働いて本当にありがたいと感じている部分です。

子供が急に熱を出した時、罪悪感を感じずに休める職場というのは、想像以上に貴重です。「明日休みます」と連絡した時に「了解、お子さん大丈夫?」と返してくれる同僚がいる安心感は、何物にも代えがたい。

介護士に向いている人

10年働いてきて分かったのは、介護士に向いている人の条件です。

介護士に向いている人

・排泄処理や入浴介助に抵抗がない

コミュニケーション能力が高い(最重要)

・他職種との連携が苦にならない

・利用者家族とも良好な関係を築ける

特に重要なのが、コミュニケーション能力です。

介護士の仕事は、一見すると「介護技術」が中心に見えますが、実は人間関係の構築が業務の半分以上を占めています。

介護士が日常的に関わる人々

・利用者(高齢者):日々のケアの相手

・医師:医療判断の連携相手

・看護師:医療ケアの連携相手

・栄養士:食事管理の連携相手

・リハビリ師:機能訓練の連携相手

・利用者家族:施設利用の意思決定者

これだけ多くの専門職と毎日連携を取る仕事なので、コミュニケーションが苦手だと本当にきついです。

逆に、コミュニケーション能力が高い人は、この仕事を心から楽しめます。利用者との関係構築、家族との信頼関係、他職種との協力体制。これらをスムーズにこなせる人は、職場での評価も自然と上がっていきます。

私が介護士になったきっかけ

ちなみに、私が介護士になったきっかけは少し変わっています。

子供が小学生になり、正社員として仕事を探していた時のこと。何の資格もない自分が、一体どんな仕事ができるのかわからずに悩んでいました。

そんな時、母がこう言ったんです。

「あなたは介護士に向いているよ」

私のことを誰よりも知る母が言うのだから、と素直に受け止めて介護士の道を選びました。

これが10年続いている今、母の言葉は正しかったと感じています。

したい仕事が見つからないなら、身近な人の意見を参考にしてみるのもひとつの選択肢です。自分では気づかない適性を、家族や友人は意外と見抜いていることがあります。

得られるスキルとキャリアパス

介護士として働くと、明確なキャリアパスが見えるのも魅力です。

介護士として目指せる資格・ポジション

介護福祉士(実務経験3年+国家試験合格)

ユニットリーダー(現場のまとめ役)

ケアマネージャー(介護計画の立案)

サービス提供責任者(訪問介護)

施設長(管理職)

スキルアップすれば収入アップにも直結しますし、何より介護職の求人は全国的に常に多いので、引っ越しても再就職に困らない強みがあります。

「資格を取れば、どこでも働ける」

この安心感は、介護士として働く大きなメリットです。

メリットとデメリット

10年働いた率直な感想として、メリットとデメリットを整理します。

メリット

安定した収入が得られる(高額ではないが、夜勤や資格手当が充実)

・全国どこでも働ける

・人として成長できる

・高齢者から学ぶことが多い

デメリット

・体力的にきつい

命が尽きる瞬間に立ち会うことがある

・血液や窒息など、ショッキングな場面に遭遇する

・精神的な負担が大きい

特にデメリットの**「命が尽きる瞬間に立ち会う」**は、介護士特有の経験です。

機能障害や認知症など、何らかの既往歴がある高齢者を相手にする以上、病院でなくても死に直面することがあります。

この覚悟ができていない人は、介護士として長く続けるのは難しいかもしれません。

待遇は人事異動次第|知られざる闇

最後に、医療法人ならではの問題点として人事異動の話を書いておきます。

事業所が10もあるため、人事異動は日常茶飯事です。

良い人事異動の例

・必要とされる人材が、必要とする事業所に異動する

・本人の希望が通って、希望する事業所に異動する

・スキルアップのための異動

これは普通の会社でもよくある、納得感のある異動です。

問題は、悪い人事異動です。

悪い人事異動の例

・利用者家族とのトラブルにより、別事業所へ「飛ばされる」

・職員同士のトラブルにより、引き離しのために異動させられる

・役員に命じられた、本人の希望を無視した異動

特に役員命令の異動は、現場を破壊します。

理不尽な異動を命じられた職員は、ほぼ全員が異動先に納得できず、短期間で退職していきます。10年見てきた中で、何人もこのパターンで会社を去っていきました。

自分の希望する事業所・施設を選んで働くことが、医療法人で長く続けるための最大のコツです。

これから介護士を目指す人へ

10年介護士として働いてきて、これから介護士を目指す人に伝えたいことがあります。

介護士として長く続けるコツ

コミュニケーション能力を磨く(業務の半分以上を占める)

・人事異動の少ない、規模の小さい職場も選択肢に入れる

・子育てしながら働きたいなら、職員の年齢層を確認

・稟議書文化のある医療法人系は覚悟しておく

そして、何より大事なのは**「自分が長く健康に働ける場所」を選ぶこと**です。

介護士の仕事は、確かに体力的にも精神的にもきつい部分があります。でも、適切な職場を選べば、10年以上続けられる仕事でもあります。

私自身、稟議書地獄や応援勤務の雑用係に消耗することもありますが、子育て世帯への配慮があり、利用者とのコミュニケーションでやりがいを感じられる今の職場を、概ね気に入っています。

これから介護士を目指す方の参考になれば嬉しいです。

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