求人票に書かれていた勤務時間は、朝8時40分から夕方17時30分まで。完全週休2日制。
でも、実際に働き始めてみると、朝は7時40分までに出社して、祝日も当たり前のように出勤。そして毎晩、日付が変わる頃まで会社に残っていました。
紙に書かれた条件と、目の前の現実が、まるで別の会社の話みたいにかけ離れていたんです。
これは、地元では有名な会社の営業職に「即採用」で入って、うつ病になるまで働いて辞めた私の話です。
📌 体験者プロフィール
・年代:30代(体験当時37歳)
・業界・職種:菓子卸売商社の営業職(観光菓子部門)
・雇用形態:正社員
・企業規模:中小企業(地元では名の知れた会社)
・当時の年収:約450万円
・退職状況:退職済み
・体験形態:実体験ベース
・体験時期:2000年代後半(2007年頃)
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
フードサービスの店長として、店を回す力を身につけた
大学は出たものの、当時は就職難で、なかなか思うような会社には決まりませんでした。
結局、学生時代からずっと続けていたフードサービスのアルバイトを、そのまま卒業後も続けることになったんです。
アルバイトの立場ではありましたが、社長から店長を任せたいと声をかけてもらいました。スタッフの面接から日々の指導、シフトの管理、売上金の管理まで。気づけば、一軒の店を回すのに必要なことは、ひと通り自分の手でやるようになっていました。
その一方で、履歴書だけは書き続けていました。ハローワークや求人雑誌で気になる会社を見つけては、送る。その繰り返しです。
最初に就職できた会社は、早朝から夜遅くまで拘束される勤務で、3年ほどで辞めることになりました。
一度目の就職を辞めてから、一年以上のブランクに沈んだ
問題は、そのあとでした。
また一から就職先を探すことになったのですが、なにしろ就職難の時期です。応募しても、なかなか決まらない。
気づけば、働いていない期間が一年以上に膨らんでいました。
このブランクは、正直こたえました。書類を送っても反応がない日が続くと、自分という人間が、どこにも必要とされていないような気がしてくるんです。
そんなときに見つけたのが、地元では名の知れた会社の、営業職の募集でした。
すぐに応募したところ、面接に呼ばれて、ほとんどその場で採用が決まりました。長く決まらなかったぶん、拾ってもらえたという安堵の方が大きかったのを覚えています。
でも、今振り返れば、あんなにすんなり決まったこと自体が、ひとつの合図だったのかもしれません。
「即採用」で入った初日、会議室で聞かされた話
入社初日。私を含む新入社員4名が、会議室に呼ばれました。
そこでまず告げられたのが、休みは土曜と日曜のみで、祝日は出勤だということ。つまり、ゴールデンウィークのような連休も、普通に働くことになる。
同期の一人は、その場で人事の担当者に食ってかかっていました。求人の内容と話が違う、と。
私はというと、前の職場で長時間の拘束に苦しんだ経験があったので、土日さえ休めればいい、くらいに構えていました。だからこの時点では、まだそこまで深刻には受け止めていなかったんです。
ところが、毎日の出勤の話になったとき、営業職は毎朝会議があるから、朝7時40分までに来るように、と告げられました。
求人票には8時40分と書いてあったはずなのに。ここで初めて、はっきりとした違和感が胸に残りました。
数日で見えてきた、この会社のブラックな輪郭
最初の3日ほどは、朝7時40分に出社して、退職する営業の方の代わりということで、先輩に同行して顧客先を回りながら仕事を覚えていきました。
会社は、菓子類を扱う卸売の商社でした。その中でも私が任されたのは、一般的なお菓子ではなく、観光菓子の部門。
顧客先は、大きな温泉街の売店や、空港の中にいくつも入っている売店など。取引先の企業数は40社、店舗数にすると60店舗ほどになりました。
この数字を聞いた時点で、私は「これは無理があるな」と感じていました。
というのも、前職で観光土産品の卸売営業をしていた経験があって、この業界では一人の営業が担当できるのはせいぜい30店舗が限界、と言われてきたからです。その倍を、一人で持たされることになる。
実際、最初の数日は、ほとんど残業もなく帰されました。ところが、それを過ぎた途端、毎日のように深夜まで働くことになったんです。
しかもそれは、私だけではありませんでした。営業職の約30名が、みんな同じような状態でした。
前の会社でもブラックさは感じていたのに、それを上回る場所に来てしまった。そう気づいたときの不安は、今でもよく覚えています。
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観光営業という、競合と奪い合う最前線
営業とひと口に言っても、私が入った観光営業部は、いわゆるルート営業とは中身がまるで違いました。
たとえばスーパーマーケットを担当する社員なら、在庫が切れないように受注をして、新商品が出たときに商談をする。それが仕事の中心です。
でも観光営業は、毎日が商談でした。競合他社との争いが激しくて、少しでも手を抜けば、すぐに売り場を取られてしまう。そういう世界だったんです。
前任者は、温泉街には週に1度、空港には週に2度、という頻度で回っていました。
けれど、空港を担当している競合他社のほとんどは、専属の担当を置いて毎日足を運んでいる。それを知って、私はやり方を変えました。温泉街は週に2度、空港には週に4度、通うことにしたんです。
結果は、はっきり出ました。働き始めて半年も経たないうちに、前年度の売上を上回る数字を記録したんです。
社長や営業部長からも高く評価してもらえて、あのときは確かに、手応えのようなものを感じていました。
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百六十時間を超える残業の果てに、心と体が壊れた
ただ、その数字の裏側で、私の残業時間は、月に160時間を超えていました。
最初のうちは、自分でもおかしいと気づいていませんでした。深夜に帰宅しても、なぜか眠れない。布団に入っても、頭のどこかがずっと動いている。そんな夜が、来る日も来る日も続きました。
さすがにおかしいと思って心療内科に行ったところ、うつ病と診断されました。
そして「死にたい」という気持ちまで、少しずつ膨らんでいったんです。就職難のさなかで、やっと決まった仕事ではありましたが、このままだと自分の身が危ない。そう感じて、私は退職を決めました。
売上を伸ばして評価された自分と、心を壊して辞めていく自分が、同じ半年の中にいた。今振り返っても、あの会社での日々は、そのふたつが地続きだったように思います。
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営業職への転職を考えている人へ
求人票に並んでいた勤務時間と、実際に働き出してからの一日は、まるで別物でした。もし応募する前に、その会社の社員が「何時に帰っているのか」を確かめられていたら、この半年は少し違っていたのかもしれません。
書かれた条件だけで判断せず、口コミや在籍者の声で実態を一度たしかめること。それだけで、入ってから「話が違う」と気づく事故は、ずいぶん減らせるはずです。
困った時の選択肢
【応募前に、会社の”中の実態”を確かめたい方へ】
求人票に並ぶ勤務時間や休日は、実際の働き方と食い違うことがあります。転職の口コミサイトなら、在籍していた人・辞めた人の生の声や、残業・年収のリアルを、応募する前にのぞけます。「入ってから話が違った」を防ぐ意味で、一度確かめておく価値はあります(正社員として働いた経験のある方向け)。
→ 社員の口コミから会社のリアルを調べてみる(ワンキャリア転職)
そのほか、状況に合わせて選べる窓口を挙げておきます。
・首都圏で、営業の経験を活かして次の会社をきちんと選び直したい方は
→ 大手総合の転職エージェントに相談してみる(type転職エージェント・首都圏中心)
・もう限界で、明日から会社に行くのがつらいという方は
→ 退職代行に相談してみる(弁護士法人ガイア・性別不問)
・眠れない、気持ちが晴れないなど、心身のサインが出ている方は、まず自分の状態を整理するセルフケアから
→ 心のAIパートナー【Awarefy】(自己理解・セルフケアアプリ)
・うつなどで働き続けるのが難しく、生活から立て直して復帰を目指したい方は(対象:東京・千葉・神奈川・埼玉・愛知・大阪・京都・兵庫・奈良)
→ うつ症状に特化した就労支援を見てみる(atGPジョブトレ)
公的な窓口としては、総合労働相談コーナー(厚生労働省)や、よりそいホットライン(0120-279-338・24時間無料)が、無料で相談に乗ってくれます。ひとりで抱えこむ前に、声を聞いてもらうだけでも構いません。
働き方や心の疲れについて書かれた本を、すきま時間に読んだり聴いたりするだけでも、頭の中が少し整理されることがあります。
・読んでみる → Kindle Unlimited(30日間無料体験)
・聴いてみる → Audible(30日間無料体験)
深夜に帰ってどうしても寝つけない夜が続くなら、光や音を遮って休むための快眠アイマスクや耳栓を、手元に置いている人もいます。

