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病院の地下・薬品倉庫で働いた1年|女性9割の閉鎖空間と「ただの業者」扱いに削られた話

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エレベーターの扉が閉まる音と一緒に、舌打ちが聞こえました。

カートに医薬品を積んで乗り込んだだけで、相手は小さく「はあ……」とため息をつく。病院の地下では、こういう小さな棘が、毎日どこかに刺さっていました。

これは、ある大規模病院の地下にある薬品倉庫で、1年だけ働いた私の話です。期間は短かったのですが、おかげでこの業界のことは、それなりに知ることができたと思います。

📌 体験者プロフィール

年代・性別:40代男性

業界・職種:中規模の病院・介護法人の薬品倉庫(在庫管理・病棟への納品など裏方の物流業務)

雇用形態:正職員

企業規模:中規模(従業員300〜999人)

年収・月収:年収約330万円/月収18万円+賞与年2回(計約20万円)

在籍期間:約1年(2025年4月〜2026年3月)

退職状況:休職を経て退職(現在は転職活動中)

体験時期:2025年〜2026年

※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。

病院の地下には、患者の知らない「裏側」がある

この業種は少し特殊で、一般の方にはあまり知られていません。

病院の地下には、薬品倉庫やリネン業者、医療材料を扱う業者などが集まっていて、病院の“裏側”を支えています。患者さんが直接目にすることはほとんどありませんが、病院がちゃんと回るためには欠かせない部門です。

医師や看護師が医療行為をできるのも、必要な薬品や材料が滞りなく届いているからで、その意味では、まさに縁の下の力持ちのような仕事だと思います。ただ、その「縁の下」という言葉には、後で書くような重さもありました。

9時5時で夜勤なし、時間の安定だけは本物だった

先に、良かった点を書いておきます。

基本的に病院の稼働時間に合わせて動くので、勤務時間は比較的安定していました。私のいた職場は9時〜17時という、公務員的な時間帯で動くことが多く、残業も極端には多くありませんでした。

医療業界というと激務のイメージを持たれがちですが、少なくとも薬品倉庫に関しては、時間がある程度きっちりしている。生活リズムを整えたい人や、夜勤が苦手な人には向いている面もあると思います。実際、この一点だけは、辞めた今でも悪くなかったと感じています。

女性が9割の職場で、一度ついた評価は動かない

問題は、人間関係と、その特殊な環境のほうでした。

他の病院のことは分かりませんが、少なくとも私がいた地下倉庫は、女性比率が非常に高くて、感覚的には9割ほどが女性でした。そのぶん独特の人間関係があって、陰口や告げ口、パワハラ的な空気が、日常の中に普通にありました。

もちろん全員がそうではありません。親切に教えてくれる人も、困っている時にフォローしてくれる人もいました。ただ、閉鎖的な場所だからか、一度「仕事が遅い」「覚えが悪い」と思われると、その評価がそのまま固まってしまう。そういう雰囲気は、確かにあったと思います。

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白衣を着ていない人間は、「ただの業者」だった

薬品・材料倉庫は、はっきり言って裏方業務です。

患者さんから直接感謝されることはほとんどありませんし、院内でも、やや軽く見られることがあります。薬品管理という大事な仕事であることは変わらないのですが、医師でも看護師でもない私たちは、一部の医療関係者から「ただの業者」「小間使い」のように扱われることもありました。

白衣を着ているかどうか。たったそれだけのことで、同じ建物の中に、見えない線が引かれている。そう感じる場面は、一度や二度ではありませんでした。

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業者用エレベーターの、ため息と舌打ち

その「線」を一番感じたのが、業者用エレベーターでした。

ある日、いつもの病棟に医薬品を納品するため、倉庫からカートを押して出発しました。エレベーターに乗ると、中には別会社の、医療材料を扱う女性スタッフがいました。

その人は、まるで業者用エレベーターを自分専用のように扱う人で、私が乗るだけで「はあ……」とため息をついたり、「チッ」と舌打ちをするような人でした。

もちろん毎日ではありません。でも、「また同じ人と鉢合わせしたら嫌だな」と思う程度には、地味に効いてくる。病院という閉じた空間では、こういう小さなストレスが、少しずつ積み重なっていきます。表面的には些細なことでも、それが毎日になると、じわじわと精神を削っていくんです。

一度で覚えて、一度で動く——許されないという前提

倉庫の中では、スピードも求められました。

覚えることは本当に多くて、薬品名、配置場所、病棟ごとの流れ、伝票処理、納品ルート。一度にものすごい量の知識を頭に入れないといけません。そのうえで、言われたことを一度で理解して、すぐ実行することが求められます。

たとえば、つい先日教わったことを忘れてしまうと、すぐに教育係へ報告がいくこともありました。悪意というより、「医療現場だからミスが許されない」という考え方が、それだけ強いんだと思います。頭では分かるのですが、覚えることが多い時期は、やはりかなりのプレッシャーでした。

受け身でいると、この場所では置いていかれる

はっきり言いますが、この仕事で「受け身な姿勢」はかなり厳しいです。

分からないことは、自分からその日のうちに聞きにいく。空気を読みながら周りに溶け込んで、仕事をどんどん覚えていく。そうやって動かないと、誰かが丁寧に手を取って教えてくれる、という環境ではありませんでした。

待っていても、何も始まらない。それは早い段階で、嫌でも分かりました。

女性ばかりの職場に、男が一人で入るということ

女性が多い職場に男性が入る場合、仕事ができないと、居場所を作るのが本当に難しいと感じました。

もちろん男性職員もいましたが、かなり気の強い人が多かった印象です。薬品倉庫では、長年働いているベテランもいれば、派遣社員や新人が数日で辞めてしまうことも珍しくありませんでした。

つまり、仕事の覚えの早さ以上に、人間関係に適応できるかどうかが、ものすごく大きなウェイトを占める職場だったということです。

窓のない地下で、時間の感覚が薄れていく

地下という環境そのものも、人によっては負担になると思います。

倉庫には窓がなく、外の景色も見えません。気づくと時間の感覚が曖昧になっていて、なんとも言えない閉塞感がありました。空気が悪いというわけではないのですが、どこか「詰まる」ような感覚が、ずっと胸のあたりに残るんです。

外気に触れる機会が少ないので、気分転換もしづらい。昼に外に出られないというのは、思っていた以上に、こたえました。

「私が黙ってると思って舐めないでよ」——気の強い人が残る世界

向いているのは、少々のことでは落ち込まない人、感情を表に出しすぎない人、必要ならはっきり意見を言える人だと思います。医療業界全体に言えるのかもしれませんが、比較的「気の強い人」が生き残る印象でした。

実際、職場で女性と男性が言い合いになっている場面を、目撃したことがあります。机を並べて仕事をしていた二人の間で、何かトラブルがあったのでしょう。女性職員が「私が黙ってると思って舐めないでよ!」と強い口調で言い放って、そのあと、その男性はかなり無口になっていました。

かなりピリついた空気でした。あれは、この職場の人間関係の厳しさを、そのまま象徴するような出来事だったと思います。

ルーティンの合間を縫って走る、突発対応

仕事内容自体は、一度覚えてしまえばルーティンも多いです。

ただ、病院という場所柄、突発対応は少なくありません。重症の患者さんのための薬が急に必要になって、卸業者へ大急ぎで発注をかける。看護師さんからの電話で、薬品の伝票処理を急ぎで対応する。そういう場面が、淡々とした作業の合間に、突然差し込まれてきます。

落ち着いて見える日ほど、いつそれが来るか分からない。その緊張感は、地味に消耗するものでした。

薬を一つ間違えれば、それは医療事故になる

当然ですが、薬を間違えれば、重大な医療事故につながる可能性があります。

だからこそ、現場全体に「絶対に間違えられない」という強い緊張感が、常に流れています。指導が厳しくなる背景には、患者さんの命を預かっているという事実が、確かにあるのだと思います。

その重さ自体は、理屈では理解できます。ただ、その重さの中に、毎日ずっと身を置き続けるというのは、また別の話でした。

積み重なった結果、体が動かなくなった

結局、私はその環境に適応できませんでした。

常に張り詰めた空気の中で働く緊張感。多数の女性の中に、男性一人として入っていく孤独感。閉鎖的な地下環境と、人間関係のストレス。それらが少しずつ積み重なって、最終的に体調を崩してしまいました。

医師に相談したところ休職を勧められて、1ヶ月ほど休養を取りました。それでも心身の状態は戻らず、最後は退職という選択をしました。今は傷病手当金の受給を検討していて、失業保険の延長申請も行う予定です。

時間が安定していることは、確かに魅力でした。でも、時間が安定しているというだけでは、人は働き続けられないんだと、辞めてみて思い知りました。

それでも、向き不向きがはっきり分かれる仕事だと思う

最後に、総評のようなことを書いておきます。

勤務時間が安定している点や、医療を支える社会的意義のある仕事という点では、確かに魅力があります。一方で、人間関係の密度、閉鎖的な環境、精神的なプレッシャーはかなり強くて、はっきり人を選ぶ職場だと感じました。

引っ込み思案な人や、人間関係に強くストレスを感じやすい人には、正直おすすめしにくいです。逆に、フラットに人と付き合えて、特定の派閥に入らず、自分から学ぶ姿勢があって、メンタル面が強い人なら、長く続けられる可能性は十分にあると思います。

「メンタルの強さ」「主体性」「対人への適応力」。この三つが求められる仕事だということを理解したうえで、応募を検討してもらえたらと思います。

編集部より

今回の体験で印象的なのは、労働時間や夜勤の有無といった「条件面」はむしろ恵まれていたのに、それでも続けられなかったという点です。病院という組織は、医療を行う人とそれを支える人のあいだに、見えない線が引かれやすい場所でもあります。地下という物理的な隔離と、少人数で閉じた人間関係が重なると、一度ついた評価や立場が、なかなか動かなくなる。条件の良し悪しだけでは測れない働きやすさが、確かにあるのだと思います。

辞めるか続けるかを決める前に、何が一番つらかったのかを一度言葉にしてみるだけでも、見える景色は変わります。一人で抱え込まず、信頼できる人や、下記の窓口に話してみてください。

困った時の選択肢

【すでに退職した方・退職を決めた方へ】

仕事を離れたあとは、手続きやお金まわりの不安が一気に押し寄せてきます。退職給付金や失業給付(公的な制度)の進め方を、何から手をつければいいか分からないという方は、退職後の手続き相談をLINEで無料で受けられる窓口に、現状を整理する目的で話を聞いてみるのも一つの方法です(退職代行とは役割が異なります)。

退職後の手続き・お金まわりの相談窓口に整理してもらう

そのほか、状況に合わせて選べる窓口を挙げておきます。

・今の職場に、自分から「辞めます」と言い出せない男性は → 男性向けの退職代行(退職相談は無料)

・性別を問わず、有給消化や未払い分のことまで含めて相談したい方は → 弁護士運営の退職代行にLINEで相談する

・辞める前に、他業界の働き方や口コミ・年収を調べて比べておきたい方は → ワンキャリア転職(口コミ・選考体験談で他業界を知る)

・心身が疲れていると感じる方は、抱え込む前に、自分の気持ちを整理するセルフケアから → 心のAIパートナー【Awarefy】(自己理解・セルフケアアプリ)

公的な窓口としては、総合労働相談コーナー(厚生労働省)や、よりそいホットライン(0120-279-338)が無料で相談に乗ってくれます。

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