「保育士を辞めた」と聞くと、ブラックな職場から逃げ出したんだろう、と思うかもしれません。でも、7人の元保育士の話は、どれも少し違っていました。
仕事は好きだった。子どもも、好きだった。それなのに、続けられなかった。
この「好きなのに」という引っかかりの正体を、編集部の視点でほどいていきます。
「記録できてない」と、夜中に飛び起きる
ある元保育士は、深夜にはっと目を覚ますようになりました。「記録できてない…!」。夢の中で、まだ書類に追われている。
最初は数か月に一度。それが月に一度、週に一度と増えていったといいます。
保育士の一日は、子どもと過ごす時間だけでできているわけではありません。その裏に、カリキュラム作成、製作の準備、そして何種類あるのかも分からない記録がある。1人で30人近くを担任すれば、それが勤務時間に収まるはずもなく、家と眠りに食い込んでいく。
劇の衣装を家でミシンで縫った人も、パートなのに持ち帰りが当たり前だった人もいました。形は違っても、仕事が家までついてくることは同じです。
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好きなまま、限界が来る
保育士の辞め方には、独特の切なさがあります。嫌いになって辞めるのではなく、好きなまま、体のほうが先に音を上げる。
24時間勤務の認可外で働いた人は、「自分はこんなにも子どもと過ごす時間を幸せに感じるんだ」と驚くほど、この仕事が好きでした。それでも仮眠2〜5時の勤務で不眠症になり、その症状は今も消えていません。
好きだから、限界のサインに気づくのが遅れる。もっとできるはずと、自分を追い込んでしまう。優しい人ほど深く削られていくのは、そのためです。
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その「つらさ」は、保育士のせい? 園のせい?
辞めたいと思ったとき、切り分けてほしいことがあります。つらいのは保育士という仕事そのものなのか、それとも今いる園なのか。
7人の話を並べると、資格も仕事の中身もほぼ同じなのに、園によって働きやすさがまるで違う。園長が柔らかい人ばかりで自由にやれた園もあれば、主任の新人いびりを園長が見て見ぬふりする園もある。私立と公立、幼稚園と保育園でも、給料も人間関係も別世界だといいます。
つまり、辞めたいの答えが、転職ではなく“転園”で見つかることもある。この一点を知っているだけで、選べる道は増えます。
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女性ばかりの職場、という別のしんどさ
業務のきつさとは別に、人間関係で削られる人もいます。ほぼ全員が女性、という園は珍しくありません。
先輩が、わざと聞こえる距離で陰口を言う。そんな「女の園」で、同期との連帯だけが救いだった、と振り返る人がいました。
ただ、これも園しだいで大きく振れます。だからこそ人間関係は、次の給料と並んで、園選びの決め手になります。
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やりがいは、家賃を払ってくれない
保育士の薄給はよく知られています。でも7人の話で引っかかったのは、その安さが「やりがいがあるんだから」で正当化されることでした。
この構図をいちばん鋭く突いていたのは、保育士ではなく、保育園で働いた管理栄養士の証言です。同じ園なのに職種で給料に差がつけられ、4年制大卒で国家資格を持つ自分が、保育士に下に見られる。「やりがいだけでは続けられなかった」と彼女は書いています。
やりがいは本物です。でも、やりがいでは家賃は払えない。ここを直視できるかどうかも、続けるか離れるかの分かれ目になります。
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子どもだけでなく、親とも「一緒に悩む」時代
保育士の仕事は、いつのまにか子どもだけを見る仕事ではなくなりました。
核家族化で、子育ての悩みを一人で抱える家庭が増えた。保育士は保護者と一緒に悩む、準・福祉職のような役割まで担うようになっています。遠足の集合写真で「うちの子の写りが少ない」と毎年クレームが来る、という園もありました。
面白いのは、24時間保育の園ではモンペのトラブルがほとんどなかったこと。朝から晩まで同じ職員が関わり、保護者に顔と状況が見えていたからです。ここでも効いてくるのは、やっぱり園のかたちでした。
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辞めた人ほど、この仕事を悪く言わない
最後に、7人に共通していたことを。辞めた人ほど、保育士という仕事を悪く言いませんでした。むしろ離れてから、尊敬が増したという人が多い。
続けられる人の条件を、こう言い切った人がいます。「思っている以上に子どもが好きなこと」。そして、「『まぁ、いっか』と、力を抜けること」。
続けられるかどうかは、根性ではありません。好きの強さと、肩の力を抜ける余裕。もし今、そのどちらも枯れかけているなら、それは離れどきのサインかもしれません。
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保育士を続けるか、離れるか、迷っているあなたへ
好きなのに続けられないと感じることは、甘えでも根性不足でもありません。持ち帰りの多さも、薄給も、人間関係も、その多くが個人の頑張りではなく、園の運営や制度の側にあります。
そして「保育士を辞めたい」の答えは、必ずしも「保育士をやめる」ではありません。園を変えるだけで働き方が一変することもある。辞めるのも、別の園に移るのも、どちらも逃げではありません。まずは今の園の外に、どんな選択肢があるのかを知ることから始めてみてください。
困った時の選択肢
【今の園がつらい・保育士を続けるか迷っている方へ】
同じ保育士でも、園によって働き方は大きく変わります。持ち帰りや残業の少ない園に絞って探せる、保育士専門の求人サービスがあります。(対応エリアが決まっているので、お住まいが対象かどうかは確認してみてください)
そのほか、状況に合わせて選べる窓口を挙げておきます。
・辞めるかどうかも含めて、一度立ち止まって整理したい方は
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・他園や他業界の給料・口コミを、まず具体的に知っておきたい方は
公的な窓口としては、総合労働相談コーナー(厚生労働省)や、よりそいホットライン(0120-279-338)が無料で相談に乗ってくれます。
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かがんで子どもと目線を合わせ、抱っこをして、一日中立ちっぱなし。腰への負担は、保育士の職業病のようなものです。少しでもやわらげたくて、腰をやさしく支えるサポートベルトを使っている人もいます。

