会議室で、私ひとりが前に出されていました。
「原因分析は?」
「再発防止策は?」
「なんで検知できなかった?」
上司と利用部門から、ずっとそうやって詰められます。でも、その障害、ベンダー側の設定ミスでシステム連携が止まったやつで、私はその設計にも関わっていませんでした。
「いや、その障害、自分関係ないんだけど……」
心の中ではそう思っていても、口に出して「それは別チームの話です」と説明すると、「言い訳するな」で終わりです。
これは、SAPの保守運用を8年担当して、最後は朝に体が動かなくなって休職し、そのまま退職した私の話です。
📌 体験者プロフィール
・年代・性別:30代女性
・業界・職種:デジタルIT系部署でSAPの保守運用を担当
・雇用形態:正社員
・企業規模:中堅企業(従業員300〜999人・メーカー系オーナー企業)
・在籍期間:8年
・退職状況:退職済み
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
オーナー企業のデジタルIT部署で、SAPの保守運用を担当していた
前にいた会社は、メーカー系のオーナー企業でした。社員数はかなり多くて、社内システムも複雑だったのですが、経営判断はとにかくトップダウンの強い会社でした。
私はデジタルIT系の部署で、SAPの保守運用を担当していました。ちょうど大規模なSAP導入プロジェクトが進んでいた時期で、私はその導入後の運用側として現場に入っていました。
仕事内容は、週次・月次処理で発生するエラーの確認、ユーザー部門からの問い合わせ対応、障害調査、ベンダーとの調整、影響範囲の確認などです。文字にすると地味に見えますが、実際は一日中なにかに追われている仕事でした。
朝、出社してまずやるのはメール確認だった
毎朝、会社に着くとまずメールを開きます。
「データ連携が止まってます」
「請求処理がエラーです」
「伝票が更新されません」
「昨日の締めが終わってません」
こういう連絡が大量に来ていて、そこから一日が始まります。出社した時点で、もうその日のスケジュールは自分の手から離れている感覚でした。
SAPは一個直すと、別のどこかが壊れる
SAPって、一個直すと別のところに影響が出たりするので、本当に厄介でした。原因を切り分けるだけでも時間がかかりますし、直したつもりが別の処理を巻き込むこともあります。
しかも、障害の原因が自分の担当範囲じゃないこともかなり多かったです。要件定義の漏れ、導入時の設定ミス、ベンダー側の不具合、テスト不足。かなり上流で問題が起きているケースが、普通にありました。
でも、実際にユーザー部門から怒られるのは運用担当でした。
「なんで私が怒られてるんだろう」
何回もそう思いました。仕組み上、いちばん下流の運用担当に全部の連絡が集まってくるので、責任もそこに集まってくるんです。
残業80時間が、ほぼ1年続いた
朝出社して、気づいたら夜11時とか12時。終電がなくなってタクシー帰宅も普通でした。残業は毎月80時間くらいです。
しかも、それが一時的じゃなくて、ほぼ1年間続いていました。
今思えば完全に異常なのですが、その時は感覚がおかしくなっていて、「辞める」とか「逃げる」みたいな発想が本当に出てきませんでした。周りも疲弊していたので、「ITってこんなものなんだろうな」と思っていました。完全に思考停止していたと思います。
通知音が鳴るだけで、心臓がバクッとなる
平日はずっと会社、休日も携帯が鳴ります。家に帰ってもSlackやメールを確認してしまうし、寝ていても通知音で起きることがありました。
途中から、スマホの通知音が鳴るだけで心臓がバクッとなるようになりました。
「あ、また障害かな」
そう思って身構えてしまう。休んでいる時間まで、体のどこかがずっと仕事につながっている感じでした。
障害のたびに詰められた|「できないなら責任取れ」
上司もかなりきついタイプでした。障害が起きるたびに、こんなふうに詰められます。
「で、クライアントになんて説明するんだ?」
「できないなら責任取れ」
「なんで事前に防げなかった?」
でも、こちらからすると「いや、その障害、自分関係ないんだけど……」というケースもかなり多かったです。防ぎようがなかったものを「なんで防げなかった」と言われても、答えようがありませんでした。
ベンダーの設定ミスなのに、前に出されたのは私だった
ある時、ベンダー側の設定ミスでシステム連携が止まったことがありました。私はその設計にも関わっていなかったのですが、会議になるとなぜか運用担当だけが前に出されます。
会議室で、上司と利用部門からずっと詰められていました。
「原因分析は?」
「再発防止策は?」
「なんで検知できなかった?」
正直、知らんがなって感じでした。でも、「それは別チームです」と説明すると、「言い訳するな」で終わりです。
このあたりから、だんだん気持ちがおかしくなっていった気がします。
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会議室でカロリーメイトを食べて終わる日もあった
昼休みも普通に仕事をしていましたし、夜遅くまで障害対応をして、コンビニのおにぎりを食べながらまた打ち合わせ、みたいな生活でした。会議室でカロリーメイトを食べて終わる日もありました。
金曜の夜も、「やっと休める」と思ったタイミングで障害連絡が来ます。そこからVPNをつないで夜中まで対応、というのが普通でした。
週末になっても、心のどこかで「今日は鳴らないでくれ」と祈っている。そんな感覚がずっと抜けませんでした。
一個潰しても、次の日には別の障害が出る
いちばんきつかったのは、「頑張っても終わらない感覚」でした。
障害を1個潰しても、次の日にはまた別の障害が出ます。しかも、自分でコントロールできないところの問題も多いので、どうしようもありません。なのに、責任だけは全部現場に来ます。
ゴールが見えないどころか、走っても走っても後ろに線路が伸びていくような感覚でした。
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床で寝落ちした朝に「追加障害です」の連絡
ある時、深夜まで障害対応をして、朝方に一度家へ帰ったのですが、風呂にも入らず床で寝落ちしていました。
起きたらまた携帯に着信が入っていて、「追加障害です」という連絡でした。
その時、「あ、もう無理かもしれない」と思いました。
でも、その段階でも「辞めよう」ではなく、「今日も行かなきゃ」が先に来るんですよね。完全に感覚が麻痺していたと思います。
朝、体が動かなくなって、休職した
結局、プロジェクト開始から10か月くらい経った頃に、限界が来ました。
朝、会社へ行こうとした時、体が動かなくなりました。駅まで行こうとしても吐き気がして、そのまま動けなくなったのを覚えています。
その後、休職を申し込みました。上司からは、「みんな大変なんだけどね」とだけ言われました。いや、お前が言うなよ、と思いました。
そのまま復職はせず、退職しました。今振り返ると、本当にもっと早く辞めればよかったです。
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いま振り返って思う|責任だけ押し付けられること
特にきつかったのは、「問題解決」ではなく、「責任だけ押し付けられること」でした。あと、人を壊している自覚がない管理職が、普通にいることです。
現場は慢性的に人不足でした。誰かが潰れて休職しても、「じゃあ次の人」みたいな空気でした。だから、自分が消耗品みたいに感じることもありました。
もちろん、IT業界の全部がこうだとは思いません。実際、周りにはまともな人もいました。ただ、私の場合は完全に配属ガチャと上司ガチャを外した感じです。
今でも当時の上司については、「人生をかなり壊された」という感覚があります。本気で「自分の人生を返してほしい」と思っていました。かなり恨んでいましたし、正直、今でも思い出すとイラっとします。
同じ環境にいる人へ|壊れる前に逃げていい
ただ、今になって思うのは、「壊れる前に逃げる」のは本当に大事だということです。
当時は、「ここで逃げたら終わり」みたいに思っていました。でも実際は、会社を辞めても人生は普通に続きます。むしろ、壊れるまで耐える方が、後から長引きます。
もし今、同じような環境にいる人がいるなら、「自分が弱いからだ」とは思わない方がいいです。環境がおかしいケースは、普通にあります。
あと、「有名企業だから安心」とも限らないです。結局、どこの会社でも、現場と上司次第で天国にも地獄にもなるんだな、と思いました。
編集部より
SAPのような基幹システムの保守運用は、トラブルの起点が要件定義や導入時の設定、ベンダー側の不具合という上流にあっても、問い合わせと障害連絡が運用担当一人に集まりやすい構造を持っています。ベンダーの設定ミスなのに会議で前に出されたのが運用担当だった、というこの体験談の場面は、その典型です。自分でコントロールできない範囲の説明責任まで背負うと、本人の能力とは無関係に消耗が進みます。残業80時間が1年続く中で「辞める」発想すら出てこなくなるのは、それだけ追い込まれていたということです。
朝に体が動かない、通知音で動悸がするという反応が出ている時点で、心と体はもう限界のサインを出しています。「自分が弱いから続かなかった」のではなく、人員体制や上司との相性という環境の問題が大きいことは少なくありません。壊れる前に距離を取る判断は、その後の回復を早めます。一人で抱え込まず、下記の窓口で状況を言葉にしてみてください。
困った時の選択肢
【心身が限界で、退職を考えている方へ】
退職後の生活費が不安で動けない、という方もいます。雇用保険の手当などの申請を見据えて相談できる窓口があります。これは退職を代行するサービスではなく、退職後の公的な給付の申請を整理する立場のサポートです。受け取れる金額や受給できるかは人によって異なるため、まずは自分のケースを相談してみる、という使い方になります。
→ 退職後の給付申請について相談する【転職×退職サポート窓口】
そのほか、状況に合わせて選べる窓口を挙げておきます。
・上司に詰められて、自分から「辞めます」と言い出せない方は → 退職代行という選択肢があります。女性向けは わたしNEXT(女性の退職代行)、性別を問わず使えるのは 弁護士法人ガイアの退職代行 です。
・「有名企業でも現場と上司次第」を、辞める前に他社の口コミで確かめておきたい方は → ワンキャリア転職(口コミ・選考体験談で他社のリアルを知る)
・心身が限界に近いと感じる方は、抱え込む前に自分の状態を整理するセルフケアから → 心のAIパートナー【Awarefy】(自己理解・セルフケアアプリ)
心身がつらく一人で抱えきれないときは、よりそいホットライン(0120-279-338)が24時間無料で相談に乗ってくれます。長時間労働やパワハラ的な扱いについては、総合労働相談コーナー(厚生労働省)でも無料相談できます。
