「定時で帰らせてもらえませんか」
そう上司にお願いした次の日から、未婚の女性上司に毎日のように嫌味を浴びせられるようになりました。
1歳の子どもを保育園に迎えに行くため、休日出勤を増やしてでも平日は早く帰りたかった。ただ、それだけでした。
これは、IT企業のプログラマーとして働いていた私が、2度のパワハラを乗り越えて、子どもの頃の夢だった保育士にたどり着くまでの話です。
📌 体験者プロフィール
・性別:女性
・経歴:理系大学卒業 → プログラマー(前々職) → 保育園パート(無資格時代) → 正社員保育士(現職)
・雇用形態の変遷:正社員 → パート → 正社員
・家族構成:夫・子供1人(1歳のときに職場復帰)
・保有資格:保育士(独学・2回目で合格)
・現在の状況:2歳児クラスの担任として勤務中(現職継続中)
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
プログラマーは、私にとって「天職」だった
理系の大学を卒業した私が選んだのは、第一希望のプログラマー職でした。
学校を卒業したらもう勉強は終わりだと思っていたのに、現場に出てみると、毎日が新しい知識との戦いです。それでも当時は、本当に充実していました。
自分が書いたコードが動く瞬間、ユーザーの手に届く瞬間の達成感は、何ものにも代えがたいものでした。
「これが私の天職だ」
入社して数年は、迷いなくそう思えていたんです。
独り立ち後に始まった、終電と土日出勤の地獄
ところが、ひとり立ちしてから状況が一変しました。
毎日の帰りは終電、土日も出勤が当たり前。会社は裁量労働制を採用していたので、どれだけ働いても給料はほとんど変わりません。納期が近づくと、深夜2時、3時まで会社に残るのも珍しくありませんでした。
好きで始めたプログラミングの仕事が、いつしか苦痛に変わっていました。
それでも当時は「IT業界はこういうもの」「ここで諦めたら負け」と自分を奮い立たせて、なんとか働き続けていたんです。
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結婚・出産後、育休復帰で待っていた現実
学生時代から付き合っていた彼と結婚し、子どもにも恵まれました。
産休と育休は最低限保証されていましたが、私が住んでいた地域は、保育園の入所が非常に厳しい地域でした。子どもが1歳になるのを待たずに、4月の区切りで職場復帰することにしたんです。
復帰後の時短勤務は、子どもの誕生日の6月までという条件付き。それを過ぎたら定時勤務に戻り、案の定、復帰前と同じように残業が続く日々が始まりました。
子どもは毎日、保育園の閉園ぎりぎりのお迎え。最後のひとりになっていることもしばしばで、保育士さんに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
「定時で帰らせてください」と言った日から始まった嫌味
さすがに子どもがかわいそうになって、私は意を決して上司に相談しました。
「休日出勤を増やしますので、平日は定時で帰らせてもらえませんか」
そう告げた次の日から、毎日のように未婚の女性上司から嫌味を言われるようになりました。
「子どもがいる人はいいよね、好きなときに帰れて」
「私たちは独身だから、残業して当然なんですよね」
直接的な暴言ではありません。でも毎日浴びせられる言葉は、確実に私の心を削っていきました。
そしてある日、限界を迎えて退職を決意します。あれほど好きだったプログラミングの仕事が、思い出すだけで胸が苦しくなるものに変わってしまったんです。
退職して気づいた「再就職の壁」
退職届は、あっさり受理されました。
子どもの体調不良で休むことが多かったし、また子どもを生むかもしれないと思われていたのかもしれません。今振り返ると、上司の嫌味は遠回しな肩たたきだったのかも、とさえ思います。
しかし退職してから、現実が襲ってきました。子どもを保育園に通わせ続けるためには、すぐに次の仕事を見つけなければなりません。経済的にも、厳しい状況でした。
私はあらゆる転職サイトに登録し、必死に転職活動を続けました。利用したサービスは、以下の通りです。
・BIZREACH
・リクナビNEXT
・doda
・リクルートエージェント
・マイナビエージェント
それでも、1歳の子どもがいるという事実は、企業にとって大きなハードルでした。書類選考は通っても、面接で「お子さんがいらっしゃるんですね」と言われた瞬間に、空気が変わるのを何度も経験しました。
最終的にハローワークに相談して、近所の保育園のパートとして働くことに決めたんです。
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保育園パートを選んだ理由は「子どもの頃の夢」
毎日子どもを保育園に送り届けているうちに、ふと、子どもの頃の夢が頭をよぎりました。
「将来の夢は、保育園の先生」
幼稚園や小学校の文集に、何度も書いた言葉でした。すっかり忘れていたのに、毎日保育園に通ううちに、記憶の奥から浮かび上がってきたんです。
「どうせなら、やってみたいことにチャレンジしてみよう」
そう思って、保育園パートを選びました。正直、パートだから気楽だろう、という気持ちも少なからずありました。
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待っていたのは、プログラマー時代を超えるパワハラ
しかし保育園での現実は、想像をはるかに超えるものでした。
私を待っていたのは、プログラマー時代よりもさらにひどいパワハラだったんです。
毎日の業務は雑用、雑用、また雑用。子どもたちと関わりたくて飛び込んだ世界なのに、子どもに近づくたびに「これやっておいて」「あれもお願い」と、新しい仕事を頼まれる日々でした。
そして保育士資格を持っていない私は、時給が正社員保育士の半分以下しかありませんでした。同じ時間働いても、同じ空間で過ごしても、評価はまったく違います。
「無資格パート」という肩書きが、これほど重いものだとは思っていませんでした。
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同期との出会いが、転機になった
そんな中、私より少し早く同じ職場に入った女性と仲良くなりました。
話してみると、彼女もIT業界から保育業界に転職してきた経歴の持ち主でした。
「働きながら保育士資格を取ったよ。あなたも絶対取った方がいい」
彼女はそう言って、保育士試験の勉強の仕方を教えてくれて、自分が使った問題集と参考書まで譲ってくれました。
不思議なものです。プログラマー時代もパワハラを受けて辞め、保育園パートでもパワハラを受けている私に、こんな形で道を示してくれる人が現れるなんて。
苦しい状況の中にも、必ず光は差し込んでいました。
育児の合間で勉強、2回目で合格
保育士試験は、10科目すべてで6割以上を取れば合格、という仕組みです。
私は1回目では一部科目を落としてしまい、2回目のチャレンジで全科目をクリアしました。
実技試験のピアノと色鉛筆画の練習は、本当に大変でした。子どもが寝た後の深夜にピアノを練習する時間は限られていましたし、色鉛筆画は何枚も何枚も描き直しました。
それでも合格通知を受け取った瞬間、これまでの苦労がすべて報われた気がしたんです。
現在は、2歳児クラスの担任として
合格後、同じ職場で正社員の保育士として働き始めました。今は、2歳児クラスの担任です。
雑用ばかり押し付けてきた先輩保育士とも、今は対等に働ける立場になりました。資格という客観的な評価軸があると、職場での扱いがここまで変わるのかと、驚いたほどです。
子どもと関わる仕事は、本当に楽しい。毎日、子どもたちと一緒に自分も成長している感覚があります。
振り返って思うこと
まさか自分が、子どもの頃からの夢だった職業に、こんな形でたどり着くとは思いませんでした。潜在意識のどこかに、保育士になりたい気持ちが残っていたのかもしれません。
プログラマーの仕事がつまらなかったわけではありません。当時はあれが、間違いなく自分の天職でした。今も、あのときの達成感を忘れていません。
「もし自由にどちらか選べるなら、どちらを選ぶ?」
そう聞かれても、はっきり答えられません。体が2つあったらどちらもやりたい、というのが正直な気持ちです。
パワハラを2度経験して転職し、再就職先でもパワハラを受け、それでも資格試験にチャレンジして合格できた。すべての経験が、今の私につながっていると思っています。
これから先、何が起こるかは分かりません。でも、さまざまな人との出会いや、正の働きかけ・負の働きかけが、必ず自分の人生をいい方向に導いてくれる。そう確信できるようになったことが、何よりの財産です。
子育てと仕事の両立に、限界を感じている人へ
同じ人が同じように働いていても、立場や肩書きひとつで扱いはまるで変わります。「定時で帰りたい」と言った翌日から始まる未婚の上司の嫌味、子どもがいるだけで変わる面接の空気、正社員保育士の半分以下だった無資格パートの時給——それが資格を取った途端に対等な扱いへ一変したのは、本人の中身ではなく、見られ方だけが変わったからでした。
育児との両立は本人の頑張りより先に職場の事情が立ちはだかりがちですが、今いる場所が合わなくても、過去の経験は別の形で必ず生きてきます。
一人で抱え込まず、今の状況を一度、だれかに言葉にしてみてください。
困った時の選択肢
【子育てと両立しながら、保育の仕事で働きたい方へ】
この記事の体験者のように、保育士資格を取って子育てと両立しながら働く道があります。保育士資格をお持ちの方(ブランクからの復帰も歓迎)で、対応エリア(関東・関西・東海・北海道・中国・九州の一部など20都道府県)にお住まいなら、「ほいく畑」が保育専門のコーディネーターと一緒に、子育て事情も踏まえて無理なく働ける職場を探してくれます。
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そのほか、状況に合わせて選べる窓口を挙げておきます。
・心や身体が限界に近いと感じる方は、抱え込む前に、自分の気持ちを整理するセルフケアから
→ 心のAIパートナー【Awarefy】(自己理解・セルフケアアプリ)
育児中のハラスメントや長時間労働など、労働条件の問題は、総合労働相談コーナー(厚生労働省)で無料で相談できます。心身がつらいときは、よりそいホットライン(0120-279-338)も24時間無料で相談に乗ってくれます。
子育ての合間に、働き方や資格の本を読む(KU)/聴く(Audible)で気軽に取り入れる方法もあります。
・読んでみる → Kindle Unlimited(30日間無料体験)
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一日じゅう立ったりしゃがんだり、子どもを抱っこする保育の仕事には、立ち仕事向けの着圧ソックスを履いて働く人も多く、定番の備えになっています。

