「表の帳簿をお願いね。私は裏をやるから」
ニコニコ顔のベテラン社員にそう言われたとき、私はもう、ウエイトレスではなく事務所の人になっていました。
これは、ウエイトレスとして入った店で、なぜか経理を任されることになった私の話です。
- 📌 体験者プロフィール
- 年を重ねてからの仕事探しは、思った以上に厳しかった
- 友人の親戚が経営するレストランで、ウエイトレスとして働き始めた
- ブルガリア料理の店は、のんびりしていて、自家製ヨーグルトが売りだった
- 一緒に働く人たちは、気さくな女性たちと、出稼ぎに来たミュージシャン
- 飲食店ならではの事故。熱いお湯とスープで、やけどをした
- 唯一の難点は、まかないがおいしくなかったこと
- 副社長に気に入られて、気がついたら事務所にいた
- 事務所はベテランの女性と二人きり。「表の帳簿をお願いね」
- 初めての経理で知った、お店とお金の裏側
- 学校で習うより、実践で覚えた。その経験は面接でも役に立った
- 5年ほど勤めて退職。収入面だけが、少しきつかった
- 飲食の現場から、事務や経理への道を考えている人へ
📌 体験者プロフィール
・年代:若くはない年齢(本人談「それなりに年を食っていた」)
・業界・職種:飲食店(ブルガリア料理のレストラン)のウエイトレス → 同社の事務所で経理・事務
・企業規模:個人経営(社長・副社長が兄姉で経営)
・在籍期間:約5年
・当時の立場・役職:ウエイトレス → 事務所で帳簿付けなどの事務
・退職状況:退職済み
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
年を重ねてからの仕事探しは、思った以上に厳しかった
結構以前のことです。
その時点でも、私はもう、それなりに年を食っていました。
年を食っている分、仕事探しはどうしても難しくなります。
でも、仕事がなければ収入は見込めません。収入がなければ、食べていけません。
だから当時は、とにかく何でもいいから仕事を、と必死でした。
知人や友人に声をかけて回って、仕事の口はないかと探していたんです。
友人の親戚が経営するレストランで、ウエイトレスとして働き始めた
そんなとき、大学時代に親しくしていた友人から連絡がありました。
その人の親戚がレストランを経営していて、ウエイトレスなら募集がかかっているよ、と。
渡りに船、とはこのことです。すぐに紹介をお願いしました。
面接に行ってみると、兄姉だという社長も副社長も、気さくな人たちでした。
話はあっさり進んで、すぐに雇ってもらえることになりました。
ウエイトレスなら経験もあります。何とかなるだろう。
そう思って、とにかく収入を確保することだけを考えて働き始めたんです。
ブルガリア料理の店は、のんびりしていて、自家製ヨーグルトが売りだった
入ってみると、ちょっと珍しいブルガリア料理のレストランでした。
日本ではあまり知られていない料理が多くて、最初は聞き慣れない名前ばかりでしたね。
ただ、メニュー自体はそれほど多くありません。覚えるのに苦労はしませんでした。
そしてブルガリアといえばヨーグルト。この店では、なんと自作のヨーグルトを販売していたんです。
従業員も、入れ物を持っていけば売ってもらえるというありがたさ。安くておいしいヨーグルトを、ずいぶん楽しませてもらいました。
仕事の中身は、注文を取って、運んで、片付ける。ごく普通のウエイトレスの仕事です。
ブルガリア料理は煮込みが多いらしく、出てくる料理はどれも地味な見た目でした。
お客さんも、ほとんどが常連さん。
忙しいのはランチタイムくらいで、それ以外の時間はのんびり。のんきに働かせてもらいました。
一緒に働く人たちは、気さくな女性たちと、出稼ぎに来たミュージシャン
一緒に働く人たちも、感じのいい人ばかりでした。
気さくな女性たちと、ブルガリアから出稼ぎに来ていた男性のミュージシャンたち。
ミュージシャンが店に立っている、というのも、今思えばなかなか珍しい職場です。
それでも人間関係で嫌な思いをした記憶は、ほとんどありません。
飲食店ならではの事故。熱いお湯とスープで、やけどをした
飲食店には、どうしても事故がつきものです。
片付けをしていたベテランのアルバイトのウエイトレスさんが、熱いお湯を脚にかけてしまいました。
運の悪い事故でした。
その人は危機管理のできる人で、すぐにホースの水を脚にかけて、とにかく冷やし続けたといいます。
そのとき、まわりには誰もいなかったんです。だから冷やして、冷やして、ひたすら冷やす。
その後で病院に行ったら、最初の手当てがよかったおかげで、大事には至りませんでした。
よかったよかった、と言いたいところですが、水をかけすぎて、やけどよりひどい風邪を引いてしまったんですよ。
実は私も、熱いスープを手にかけてしまって、やけどをしたことがあります。
すぐに冷やさなきゃと思いました。ところが、混雑している時間帯で、しかもギリギリの人数しかいなかったんです。
冷やすのが遅れて、今でも跡が残っています。
こういう事故は、飲食店ではよくあることなんです。
唯一の難点は、まかないがおいしくなかったこと
そんなこんなはありましたが、人間関係のいざこざもなくて、いい職場でした。
問題があるとしたら、ひとつだけ。
レストランなのに、まかないがあまりにもおいしくなかったことです。
いつも置いてあった味付け海苔が、いちばんおいしかった。
あまりのことですよね。
副社長に気に入られて、気がついたら事務所にいた
紹介してくれたのが社長たちの親戚だったこともあって、特に女性の副社長とは、ときどき言葉を交わしていました。
特別なことをしたつもりはありません。ごく普通に受け答えをしていただけです。
ところが、それが何やらお気に召したらしいんです。
友人にも、そう言われました。
そして気がついたら、私の職場は事務所に移っていました。
どこでどう間違ったのか、社内転職です。
正直なところ、これはありがたかったです。
体力の問題で、若い人にはどうしても追いつけず、立ち仕事が結構つらくなってきていた頃でしたから。
事務所への異動は、本当に助かりました。
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事務所はベテランの女性と二人きり。「表の帳簿をお願いね」
ただ、事務所にいるのは、ベテラン社員の女性と私の二人きり。
大丈夫かな、と思ったのも事実です。
でも、それは杞憂でした。類は友を呼ぶというのでしょうか、これまた気のいい、人のいい女性で、細かい事務の作業も丁寧に教えてくれたんです。
そしてニコニコしながら、こう言ってきました。
「表の帳簿をお願いね。私は裏をやるから」
そうか、と思いました。
大きな会社でなくても、こういう個人経営のお店でも、帳簿とかいろいろあるんだな、と。
私は早々に、納得してしまいました。
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初めての経理で知った、お店とお金の裏側
正直な話、経理は初めてでした。事務の仕事も、あまり経験がありません。
それでも、いい勉強になりました。
経理の勉強というよりも、飲食店や小売業の裏側ってこうなっているのか、と実感できたんです。
たとえば、ふだん何気なく使っているクレジットカード。
お客さんが使うたびに、お店のほうがカード会社に手数料を払っています。
だから、ある程度以上の金額の支払いでないと、お店は本当に損をするだけなんですね。
もちろん、経理というものの裏側も、できれば勉強したくなかったことまで含めて、勉強させてもらいました。
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学校で習うより、実践で覚えた。その経験は面接でも役に立った
学校で経理や帳簿付けを習うよりも、実践で身につけさせてもらったようなものです。
しかも、お金をもらいながら、勉強までさせてもらえる。
ありがたいなあと、しみじみ思いました。
簿記などの資格は、取っていません。
それでも、その後の仕事の面接で、こういう経験がありますと話すと、有利になったものです。
5年ほど勤めて退職。収入面だけが、少しきつかった
結局、この店というか会社には、5年ほど勤めて、退職しました。
楽しくて、ためになる仕事でした。
ただ、収入の面では、いささかきつかったのも事実です。
それでも、社内異動でいい勉強までさせてもらった、いい職場でした。
飲食の現場から、事務や経理への道を考えている人へ
ウエイトレスから経理へ移れたきっかけは、人柄を気に入られたという偶然に近いものでしたが、小さな会社だったからこそ、店の売上から帳簿までお金の流れを一続きで見られたことが、体験者にとって何よりの財産になったようです。
簿記の資格がなくても、どこで何を任されて何を学んだかを話せる経験は、面接でそのまま強みとして伝わります。
体力のつらさや収入への不安を感じているなら、社内で動けない場合も含めて、外の選択肢を知っておくだけで気持ちは軽くなるはずです。
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ホールに立ち続けた日の夜は、脚がずっしり重くなるもの。そんな一日の終わりに、足をほぐすフットマッサージャーで自分をねぎらう人もいます。

