試作品ばかり作ってる会社にいる。
「今日も仕事、ない。」
朝、更衣室で着替えながら、そんな声が聞こえてくることが増えた。
俺が働いているのは、自動車の試作品をつくる会社だ。新しく出る車の、まだ世に出ていない部品を、図面から一つひとつ形にしていく。
聞こえは悪くないが、現実はかなり泥臭い。
📌 体験者プロフィール
・業界・職種:自動車部品の試作品製造(溶接・板金加工)
・雇用形態:正社員
・企業規模:中小企業(大手自動車メーカー系列の親会社を持つ試作専門メーカー)
・当時の立場・役職:現場作業員(入社2年目に新設備の立ち上げ担当に抜擢、現在は後輩指導も担当)
・退職状況:転職を検討中(現職継続中)
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
うまくいかないことだらけの現場で、完成の瞬間に感じるもの
試作の仕事は、正直うまくいかないことの方が圧倒的に多い。
お客さんの要望に応えるのが仕事だから、可能性が1パーセントでもある限り、答えを出すまでやめるわけにはいかない。
今までの経験を全部洗い出して、うまくいかない原因を突き止めて、また試す。その繰り返し。
それでも、お客さんが求めていたものをようやく完成させた瞬間がある。
出来上がった試作品を見て、お客さんが本当に感動した顔をして、感謝の言葉をかけてくれる。あの瞬間だけは、この仕事をやっていてよかったと思える。
うまくいかなかった過程を全部踏まえて完成させたときのやりがいと達成感は、正直、言葉にしづらい。楽しさを感じるのも、大抵そういう瞬間だ。
残業ありきの薄い給料、そして親会社の方針転換で仕事が消えた
うちの会社には「残業して稼ぐ」という風習がある。基本給はかなり低めに設定されていて、残業代込みでようやく人並みになる給料設計だ。
試作をやってる会社だから、新しい依頼が入らなければ仕事がない。忙しいときは残業まみれになるし、暇なときは残業がほとんどなくなる。
それに合わせて給料も大きく上下するから、生活のバランスを保つのがなかなか大変だ。昇給も毎年あるにはあるが、雀の涙程度で、実質ほとんど上がった感じがしない。
そこに追い打ちをかけたのが、去年からの親会社の経営方針の変更だった。試作の生産数そのものが見直されて、仕事の量が一気に減った。
残業がなくなったのはまだいい方で、定時割れする日や、会社に行っても本当に何もない日が続くようになった。
ここまで来ると、バイトでもしないと生計が立てられない。さすがにこのままじゃまずいと思って、転職を決めた。
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鉄粉が舞う現場と、昔ながらの古い食堂
鉄やアルミを削る作業がある以上、塵肺になる危険性はある。
食堂なんかもあるにはあるが、昔からある会社なので、正直きれいとは言えない。古びた雰囲気で、清潔さを期待して入ると裏切られる。
早くに一人立ちできる代わりに、基準の曖昧な昇格とトップダウンの風土
仕事は割と早い段階で一人立ちさせてもらえる。溶接や、鉄・アルミの板金加工をやるんだが、正直「手に職がついた」と言えるかというと微妙なところがある。
かなり特殊な分野だから、よそで生かせる技術かと言われると、あまりイメージが湧かない。
ただ、溶接や板金の技術に関しては、世界に誇れるものが身につく環境ではある。職人になれる場所ではあるんだ。
一方で、昇格に関しては「これができるから昇格する」という明確な基準がない。だから、班長より仕事ができる平社員がゴロゴロいる。グループとしてのマネジメントは、はっきり言ってほとんど機能していない。
基本トップダウンの会社だから、現場が「こうしたい」と思っても、上の決断ですべて決まってしまう。最悪の場合、上が決めたやりにくいやり方で、そのまま作業をやらされることになる。
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部署を超えれば良好、でも縦割りの壁は厚かった人間関係
人間関係は、変な人はいるものの、かなり良好だと思う。
年齢が近い人はあまりいなかったが、仕事で困ったときはすぐに手を差し伸べてくれたり、ヒントをくれる人が多い。困ったらすぐ相談できる環境は整っている。仕事以外でも飲み会に誘ってもらえたりして、課内での関係はいい方だ。
ただ、部署同士は多少ギクシャクしていた。お互い自分たちさえよければいい、という風潮があるのか、手を取り合って寄り添うということがない。会社としてのチームワークは、正直あまりないと感じていた。
そのせいか、部署の垣根を超えた飲み会などを開催して、風通しのいい職場作りに力を入れようとする動きもあった。
入社2年目、いきなり任された「ロボット立ち上げ」という試練
入社2年目に、新しく導入されるロボットの立ち上げ担当に任命された。
まだ製品のことを完璧に把握できていない段階だった。だから、正直めちゃくちゃ不安だった。
「あいつで大丈夫なのか」——上司がそんな話をしているのが、風の噂で耳に入ってきた。案の定、懸念されていたわけだ。
そんな中でも立ち上げは始まっていく。ただひたすら業者の言うことをメモして、必死についていくしかなかった。
会社からは「3ヶ月で業務を覚えて、内製化できるようにしたい」と言われていた。でも、業者の基準では、一人立ちできるレベルになるまで約1年はかかると聞かされていた。
残された時間で本当に間に合うのか、すごく不安だった。
それでも、「上司を見返してやりたい」——その一心で、仕事が終わったあとも一人で残って、反復練習と復習を繰り返した。3ヶ月で完璧にできるようになろうと決めて、必死にやった。
結果、最初は一人での立ち上げにかなり時間がかかっていたが、今では自分なりに改善を重ねて、自社に特化した立ち上げ方法を編み出した。今では、業者が立ち上げるより早く、自分で立ち上げられるようになっている。
今は後輩に教える立場だ。自分が教わっていたときにいまいち分かりにくかったところを、どうすれば分かりやすく伝えられるか、考えながら教えている。
辛かった経験ではあるけど、今となっては、若いうちにいい経験ができたと感謝している。
年収360万円、家庭を持つには心もとない収入
基本給は、高卒で現場仕事をしている人の平均くらいだと思う。
残業がなければ、年収は360万円くらい。福利厚生としては扶養手当・通勤手当・家賃手当などがあるにはあるが、正直微々たるものだ。
家庭を持つとなると、この給料では少し厳しくなるイメージがある。
向いているのは、体力と細かい作業が得意で、同じ作業の繰り返しが苦にならない人
新規の立ち上げ以外は基本的に量産だから、同じことの繰り返しが苦にならない人が向いている。
高重量を扱う仕事だから、体力に自信がある人。忙しいときは残業が多くなるから、そこでも体力勝負になる。
図面を見て、それをそのまま再現していかなきゃいけない仕事だから、細かい作業が得意な人。プラモデルや工作が好きな人にも向いていると思う。
たまにパソコン業務もあるから、エクセルの知識がある人だと、なおいい。
仕事量に振り回されている人へ
試作の現場でどれだけ技術を磨いても、仕事量そのものは親会社の経営判断ひとつで大きく揺れてしまう。
個人の頑張りではコントロールできない部分だからこそ、収入が不安定になったタイミングで、今の技術がほかでも活きる道を一度考えてみるのも手だと思う。
困った時の選択肢
【製造業での転職を考えている方へ】
未経験からでも製造業へのキャリアチェンジを支援してくれるサービスがある。月収30万円以上・住宅手当や寮完備の案件も多く、アドバイザーが面接対策やキャリア相談にのってくれる。
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そのほか、状況に合わせて選べる窓口を挙げておきます。
・寮に入って生活を立て直したい、地元を離れて働き直したいという方は
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・会社と話し合わずに辞めたい、引き止めが不安という方は
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・今の年収が世間と比べてどうなのか気になる方は
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公的な窓口としては、総合労働相談コーナー(厚生労働省)や、よりそいホットライン(0120-279-338)が無料で相談に乗ってくれます。
気になった一冊を、まず無料で試す方法もあります。次の現場を考えるとき、経験者の本から学べることも多いはずです。
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鉄の部品を持ち上げて運ぶたびに、腰にじわっと負担がたまっていく。その負担を逃すために、腰用のサポーターを着けている人もいる。

