「国民のため」は真っ赤な嘘でした
選挙演説で「国民の皆様のために」と何度も叫んでいた代議士。
その同じ口で、耳の遠いご老人への声かけを「体力の無駄だからやめろ」と私に注意してきた瞬間、私は理解しました。
これは表向きの言葉と、腹の中がまったく別物の世界なのだと。
これは、癌を克服した私が「人の役に立ちたい」と願って国会議員秘書になり、1年で逃げ出すまでの話です。
癌を克服して「人の役に立ちたい」と願った私
私が国会議員秘書になったきっかけは、知人からの強い紹介でした。
20代後半で癌を患い、克服した経験から、「生かされた命を人のために使いたい」という気持ちが強くありました。
政治の世界には多少興味があった程度で、自分が秘書になるなんて想像もしていませんでした。それでも知人の誘い方は半ば強引で、断り切れない雰囲気のまま受けることになったのです。
「これも何かのご縁、人生の流れなのだろう」
そう思って受け入れた職場が、想像を絶するブラックな場所だとは、当時の私には知る由もありませんでした。
仕事のすべてが「次の選挙」のためだった
入って驚いたのは、事務所の業務がほぼすべて「次の選挙のため」に動いていたことです。
・支援者まわり:次の選挙への布石
・支援者の通夜・葬儀への参列:次の選挙への布石
・後援会の会費徴収:次の選挙への資金
・政治塾・党員勧誘:次の選挙への組織固め
支援者から困りごとの相談があっても、事務所では一応話を聞くだけで、実際の対応は地元の市議会議員に丸投げ。本当に動くのは選挙が近づいた時期だけでした。
「国民のため」という看板の裏側は、徹底した票集めの仕組みだったのです。
代議士夫人が牛耳る事務所
代議士本人は国会の関係でほとんど東京におり、地元事務所を仕切っていたのは代議士夫人でした。
この夫人が、本当に強烈な人でした。
夫人の特徴を整理すると、
・気に入らないことがあると罵声を浴びせる
・反発する秘書には占い師に連れて行って洗脳
・自分のつきあいで秘書に物品を買わせる
・宗教団体の儀式への強制参加
・秘書のお給料から健康食品やネットワークビジネス商品を購入させる
すべて事務所内で日常的に行われていました。
公設秘書を「奥さんの奴隷」にする巧妙な仕組み
事務所には私のような私設秘書と、国から給料が出る公設秘書がいました。
公設秘書には、夫人が「昔から面倒を見てきた」社会的に弱い立場の女性を2人配置していたのです。
彼女たちは夫人に逆らえません。理由はシンプルで、夫人がいなければ生活基盤がないからです。
その立場を利用して、夫人は彼女たちに健康食品やネットワークビジネスの商品を強制的に買わせていました。代わりに、彼女たちが連れてきた知人を後援会・党の会員・政治塾に入れる、という交換取引です。
私自身も癌の既往歴があったため、何種類もの健康食品を買わされました。
「特殊な職場ならではの奴隷労働」は業界を問わず存在します。ビジネスホテル業界でも、お客様は神様という名のもとに従業員の人権が無視される奴隷労働構造が告発されています。詳しくは駅前ビジネスホテルでフロント10年|お客様は神様の地獄とボーナス返金システムの闇で解説しています。
宗教団体への強制参加
夫人はある宗教団体に深く関わっていて、秘書は全員強制的に入会させられました。
週に1回、代議士の自宅で行われる謎の儀式に参加しなければなりません。
休みの日でも例外なし。
参加しないと夫人からひどい暴言を浴びせられるのです。
「あなたのために言っているのよ」という建前で、人格を否定する言葉を延々と浴びせられる。
私は心の底まで傷つけられました。本気で「もう消えてしまいたい」と思った日もあります。
占い師による洗脳と先輩秘書のいじめ
夫人に反発すると、訳のわからない占い師のもとに連れて行かれました。
そこで占い料を払わされた挙句、占い師と夫人による説教と洗脳がセットで始まります。
「あなたは間違っている」
「夫人の言うことを聞かないと不幸になる」
延々とそんな言葉を浴びせられるのです。
そして、夫人の奴隷のような先輩秘書も、自分自身が病んでいるため、後輩をいじめ倒します。
私が受けた具体的ないじめを挙げると、
・2階ほどの高さに看板を一人で立てに行かされる(一人では危険なので親戚に来てもらった)
・指導していないのに「指導した」と嘘をつかれて罵倒される
・後援会の会費を集金した袋から金額が抜き取られ、「管理不足」と責任を負わされて立て替えさせられる
これは「ちょっとした意地悪」がしょっちゅう起こる中での、特に陰湿な事例です。
私の前任の秘書の方は、市議会議員を目指していた立派な方だったそうですが、いじめに耐えられず、最終的に退職代行会社を通して辞めたと聞きました。
夫人から先輩秘書への信じられない言葉
その先輩秘書たちも、夫人からはひどい扱いを受けていました。
身体的な特徴をあげつらった屈辱的な発言。
ご主人を亡くされたばかりの先輩に対して「あんたが性格悪いから旦那さんがいなくなったんだ」という、人として言ってはいけない言葉。
そういった暴言が日常茶飯事だったのです。
支援者さんの悪口を延々と聞かされる時間も苦痛でした。「国民のために」と演説で叫ぶ代議士の妻が、その支援者を陰でこんなに悪く言うのかと、心が冷えていきました。
給料は手取り20万円、なのに貯金を切り崩す日々
私のお給料は手取り20万円ほどでした。
地方都市で一人暮らしなら、本来なら十分やっていける金額です。
ところが現実は違いました。
・支援者さんのお店で買い物させられる
・夫人のつきあいで物品を買わされる
・選挙カーや支援者まわりのガソリン代は自己負担
・週1回の休みも夫人に呼び出される
毎月、貯金を切り崩しながら生活していました。
それでも夫人や先輩秘書からは「給料泥棒」と罵られるのです。立て替えた経費を請求するとネチネチ嫌味を言われるので、結局請求できないこともしょっちゅうでした。
退職を申し出ても受け入れられない地獄
何度辞めたいと申し出ても、受け入れてもらえませんでした。
最後には地元の市議会議員から「党から出馬するなら退職を了承する」とまで言われました。秘書を辞めさせる代わりに、政治家にして使い続けるという提案です。
私は出馬要請の場に行かない選択をし、最後は両親と一緒に挨拶に行ってようやく退職できました。
ただ、退職後も嫌がらせは続きます。
・実際の退職月より前に辞めたことにされる
・その前月から保険を切られる
事務的な手続きの面で、最後まで嫌がらせを受けたのです。
救いはあった
劣悪な環境の中でも、本当に優しく素敵な支援者の方々に出会えたことが救いでした。
代議士や夫人とは関係のない、純粋に地域や政治を考えている方々がいて、その方々との会話で何度も心を取り戻せました。
本当に苦しかったあの日々を乗り越えられたのは、世の中にそんな人ばかりじゃないと教えてくれた方々がいたからです。
次の職場で救われた
退職後、別の職場に転職しました。
女性だけの職場だったので、当初は不安でした。前の事務所も女性が中心の環境で、それであの地獄だったからです。
ところが、ふつうの職場というのは、ふつうに優しい人たちで成り立っているのですね。
罵声も洗脳もなく、宗教強制もなく、休日は休日として過ごせる。
その「当たり前」が、こんなにありがたいものなのかと泣きそうになりました。
あの経験で得たこと
「人の役に立ちたい」と願って入った場所が、結果的には国民を駒のように扱う人々の集まりだったのは皮肉でした。
ただ、あの地獄のような日々があったからこそ、今のふつうの環境のありがたさを心から感じられています。
これから秘書職や、誰かの紹介で「人のため」を謳う仕事に飛び込もうとしている人がいたら、伝えたいことがあります。
看板に書かれた言葉と、内側にある現実は、別物のことが多々あります。
入る前に、できるだけ内部を見てください。退職した人の話を聞いてください。
そして、自分の心と身体を守れるかどうかを、何より優先してください。
人のために役に立ちたいという気持ちは尊いものですが、自分が壊れてしまっては誰の役にも立てません。

