返ってきた感想文に、社長の印が5つも押されていました。
ただし、私のではありません。同期の子のものに、です。
内容は、渡された本をひたすら褒めちぎっただけのものでした。
これは、社長を崇拝することだけが正解だった会社に、新卒で入ってしまった私の話です。
📌 体験者プロフィール
・年代・性別:20代女性(新卒入社当時)
・業界・職種:ワンマン経営の一般企業(総合職)
・雇用形態:正社員
・企業規模:中小企業(ワンフロアで全社員を見渡せる規模)
・在籍期間:約1年
・退職状況:退職済み(その後、大手不動産販売会社の事務職へ)
・体験形態:実体験ベース
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。
社訓の本を、毎朝みんなで読んでいた
私が新卒で入った会社は、いわゆるワンマン経営でした。
何もかもが、社長の思いのまま。
社長が自分で書いた社訓の本があって、毎朝の朝礼で、一人が一ページずつ交代で読み上げる。それが日課でした。
今思えばずいぶん独特な習慣ですけど、当時の私は「そういうものなのかな」と受け止めていました。社会に出たばかりで、比べる相手もいなかったので。
でも、これはまだかわいいほうだったんです。
一日に一人は、必ず誰かが怒鳴られていた
会社はワンフロアで、社長の席から社員全員が見渡せる作りになっていました。
だから、逃げ場がないんです。
必ず一日に一人は、社長に怒鳴られていました。誰かが標的になるのを、フロア全員が黙って見ている。明日は自分かもしれない、と思いながら。
あの、空気が張り詰める感じ。今でもなんとなく覚えています。
役員たちは、社長をまるで宗教のように崇拝していた
役員クラスの人たちは、みんな社長を崇拝していました。
大げさでなく、ある種の宗教のようでした。その世界に入信できなければ、会社での立場はない。そういう場所だったんです。
だから、社長に気に入られるかどうかがすべてでした。仕事の成果とか、まじめさとか、そういうものより先に、まず社長にどう見られているか。
私の同期の女の子は、そこがとても上手でした。
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入社前に渡された本の、感想文で
新入社員は入社前に一冊のビジネス本を渡されて、入社してから感想文を提出させられました。
私はまじめに読みました。そして、正直に書いたんです。
この本に書いてあることは勉強になるけれど、自分の考えとは少し違う、といったようなことを。
まだ会社のことを何も知らなくて、ただ自分の気持ちに正直に書いただけでした。
でも、それがいけなかった。
その本を批判するなんて、この会社では言語道断だったんです。
同期の子の感想文にだけ、印が5つ
返却された感想文には、社長の印が押されていました。
同期の女の子のレポートにだけ、印が5つも。そして社長が「よく書けている!」とベタ褒めしたんです。
何のことはない、その本の内容をとにかく称賛してあるだけの感想文に対して、でした。
もちろん、どの会社でも上司の意図をくみ取って、それに従うことは大事だと思います。それは、わかっているつもりです。
ただ、この会社で求められていたのは、自分の意見なんて消して、とにかく社長に心酔すること。
それ以外には、何もありませんでした。
初めてのボーナスで、金額に差をつけられた
社長のお気に入りになった同期の子とは、初めてのボーナスから、はっきり差がつきました。
研修も私はまじめにこなしていたし、社内試験の成績も、その子より私のほうが良かった。それでも、です。
まさか、入社して初めてのボーナスでそんなことをするとは思っていませんでした。
しかも、私の目の前で、社長がその子に言うんです。「君のは〇〇万円だよ」と。
自分のボーナスより、6〜7万円は高かったように記憶しています。
その場に、私がいるのに。
社員旅行の記念撮影、社長の隣はいつも彼女だった
年末の社員旅行でも、それははっきり出ていました。
お酒の席での立ち回りが上手なこともあって、記念撮影のとき、社長の隣はいつも彼女が独占していました。
私はそれを、少し離れたところから眺めていました。
年が明けて、彼女は私を無視するようになった
年が明けたころから、その同期の子は、だんだん私を無視するようになりました。
話しかけても、目も合わせようとしない。
社長のお気に入りという立場が、彼女を変えたのか。それとも、もともとそういう子だったのか。今となっては、わかりません。
ただ、こんな環境ではもう仕事を続けられない、と思いました。
ちょうど入社して一年。私は、退社を決めました。
それでも、救われたことがひとつだけあった
つらいことばかりの会社でしたが、救われたことも、ひとつだけありました。
一つ上の先輩の女性が、本当によくしてくれたんです。
仕事の教え方もとても丁寧で、私がいつもつまずくところでは、「こうすればいいよ」と、そのつど直し方を教えてくれました。
辞めることを一番はじめに相談したのも、同期ではなく、その先輩でした。
先輩はもう察してくれていて、「私が会社に辞めることを伝えてあげるから、何もしなくていいよ」と言ってくれました。
そこまで甘えるわけにはいかない、と思ったんです。でも先輩は、私の辞意を自分の責任のようにまで考えていたらしくて、すぐに上司に報告してくれました。
本当に、感謝してもしきれないくらい、ありがたいことでした。
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辞める直前、上司が言った一言
先輩が上司に報告してくれたことで、その上司から、形だけの引き止めがありました。
辞める意思が固いことを確認すると、上司はこう言ったんです。
「次年度の新入社員の入社日前に、退社日を決めてほしい。先輩がすぐに辞めるのを見るのは、ショックだから」
その言葉に、私は衝撃を受けました。
辞めていく人間よりも、これから入ってくる人間のほうが大事。それは、わかります。会社なんてそういうものだと、頭では理解できます。
でも私は、出勤時間の前に、毎日欠かさず社内の清掃をしていました。自分なりに、この会社に尽くしてきたつもりでいたんです。
それなのに、最後の最後まで、自分の気持ちを打ち砕かれたような思いでした。
もう、この人たちにとって私は、いてもいなくても同じなんだな、と。
辞めた日、「せいせいした」と口をついて出た
退社の日まで、本当に指折り数えました。
あと三日。あと二日。あと一日……。
当日、会社を後にしたときの、あの開放感。おそらくもう、人生に二度はないと思います。
「せいせいした」
そんな言葉が、何のためらいもなく口をついて出ました。
うらみつらみは、今でもたくさんあります。でも今となっては、社会の闇みたいなものを早い段階で見せてもらったおかげで、いろいろと耐性がついたようにも思うんです。
……というか、そうでも思わないと、やってられないんですけどね。
あのあと、同期の子ほどではないにしても、上司に対してうまく立ち回れるようにもなりました。たいていの出来事には、動じずに対処できるようにもなった気がします。
大手不動産の事務職と、今の仕事
最初の会社を辞めたあと、次は大手の不動産販売会社に、事務職として就職しました。
結婚して退職するまでの三年弱。この会社でも紆余曲折はありましたが、順風満帆とまではいかなくても、つつがなく業務を終えることができました。
今は子どももいるので、社員ではなくアルバイトとして、設計会社のサポートをしています。これまでのことを教訓に、楽しく仕事をしています。
何よりも、仕事に対して正当な評価さえあれば、人は多少の困難は乗り越えられるものだと思います。
理不尽なことがまかり通るのは、この社会の常なのかもしれません。それでも、自分だけは他人に対して誠実でありたい。そう思う日々です。
理不尽な会社で消耗している人へ
この方の会社を息苦しくしていたのは、長時間労働そのものよりも「社長に気に入られたかどうか」だけで評価が決まる仕組みでした。
まじめに成果を出しても、心酔していなければ報われない——そういう場所では、正しくいようとする人ほど消耗していきます。
辞めるのは逃げではなく、自分をまともに評価してくれる場所を探し直すことでもあります。
今の環境が「普通ではない」と気づけたなら、それだけでもう、大きな一歩だと思います。
困った時の選択肢
【自分の口からは、もう辞めると言い出せない方へ】
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→ 会社と話さずに辞めたい方は、弁護士法人ガイアの退職代行へ
そのほか、状況に合わせて選べる窓口も挙げておきます。
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張り詰めた一日の終わりには、目もとを温めて力を抜く時間があると、気持ちの切り替えがしやすくなります。デスクワークで目や頭が重い日に、蒸気で目もとを温めるホットアイマスクを使っている人もいます。

