わたしの親は、小学校の先生をしています。
教員歴は、もう30年くらいになります。
その親が、仕事で疲れた顔をしているところを、わたしは一度も見たことがありませんでした。30年です。それなのに今年の4月から、急にどっと疲れた様子を見せるようになりました。
📌 体験者プロフィール
・職種:小学校教諭(学級担任)
・教員歴:約30年
・雇用形態:教員(常勤)
・就業状況:現職継続中(退職はしていません)
・体験形態:教員である親から聞き取った話を、子であるわたしがまとめたものです
・体験時期:コロナ禍の年度
※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で一部の詳細を変更しています。
ゴールデンウィークに、親が初めてこぼした「クラスにモンペが2人いる」
親はもともと、あまり愚痴を言うタイプではありません。だからこそ、その疲れ方が気になって。
ゴールデンウィークに一緒にお酒を飲んだとき、思いきって「最近、どうしたの」と聞いてみました。
すると、ぽつりと言ったんです。
「今のクラスに、モンスターペアレントが2人いる」と。
しかも、その2人がやけに仲が良くて。連携して、一緒にクレームを言ってくることがある。それでもう、クタクタなんだと。
30年やってきた人が、子どものことではなく、親のことでここまで参っている。わたしは、それが少し怖くなりました。
給食を残しただけで激怒した、過保護なモンペ①
1人目の親は、とにかく子どもへの愛情が強すぎる人らしいです。過保護で、クレームの量がすごい。
たとえば、給食の話。その日は、その子の嫌いなものばかりが並んでいたそうです。
うちの親の学校では、アレルギー以外は基本的に出す方針で。量が多ければ、口をつける前なら戻していい、というルールになっています。
その子は戻さなかったので、「食べられるのかな」と思って見ていたら、結局そのまま残してしまった。
ただ、それだけの話です。
でも、家に帰ってそのことを親に報告したら、その親が激怒して、学校に電話をかけてきたそうです。
一体、家ではどんなものを食べさせているんだろう。話を聞きながら、わたしはそんなことを思っていました。
「友達に突き飛ばされた」転んだだけの膝で、クレームの電話
もう1人の親も、同じく過保護で大変だといいます。
その子は、昼休みに友達と外で追いかけっこをしていて。転んで、膝から血が出てしまった。
それを家で見つけた親が、「友達に突き飛ばされたんじゃないか」と言って、クレームの電話をかけてきたそうです。
自分で転んだだけ、なんですけどね。
うちの親は対応に追われて、「突き飛ばした」と名指しされた子の親にまで連絡を取って、間を取り持たなければいけませんでした。
学校で、親同士の話し合いになったそうです。
突き飛ばしたと言われた側の親は、すごくいい人で。何度も何度も、ペコペコと頭を下げていたといいます。
その横で、子どもたちはというと。何が起きているのか分かっていなくて、また一緒に、笑いながら追いかけっこをしていたそうです。
それを見ているのが、いちばん気の毒だった。親は、そう言っていました。
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体験学習のリーダーを決める投票で、2人の子が同時に落ちた
そして、その2人の親が連携したときが、今までで一番大変だった。親は、そう言っていました。
きっかけは、体験学習のリーダー決めです。立候補が5人ほど出て、そのなかから誰がやるかを決めることになった。
じゃんけんではなく、誰が誰に入れたか分からない、無記名の投票方式で。枠は2人。5人のうち、2人しか選ばれません。
そして、なんと。そのモンスターペアレントの子が、2人とも落ちてしまった。
うちの親も、結果を見た時点で「これはクレームが来るな」と思っていたそうです。
案の定、その子たちが家に帰り着いた途端、学校に電話が鳴りました。
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「多数決をやり直せ」連携した親が、学校に乗り込んできた
片方の親は、こう言ったそうです。
「娘の良いところを、クラスのみんなは分かっていない。それをアピールさせられていない先生が問題だ」と。
もう片方の親は、もっと直接的で。
「うちの息子が、多数決で負けるわけがない。投票結果を表に出してくれ。先生が贔屓で決めたんだろう」
この2人、もともと幼稚園のころから子ども同士が一緒で、知り合いで、仲が良かったそうです。それまでも、学校の対応について、ずっとLINEでやりとりをしていた。
そして、お互いに火がついて。「この多数決は不公平だ」「やり直すか、じゃんけんでやり直せ」という話になり、次の日の夕方、2人そろって学校に乗り込んできたそうです。
うちの親は、さすがに多数決のやり直しはできないこと、一度決めたことは変えられないことを説明して。代わりに、2人にもサブリーダーという役割を与えると伝えたそうです。
それでも、納得しない。ずっと、ずっと、クレームを言い続けていたといいます。
最後は、子どもたち自身が場を収めた
結局、その場を収めたのは、親でも先生でもありませんでした。
子どもたち2人が、「サブリーダーでいいよ」と、自分の親に直接言ってくれたんだそうです。
それでようやく、親たちも文句を言わずに、その話は終わりました。
なんというか。モンスターペアレントの子どもも、親に気を遣わなきゃいけなくて、大変だな、と思って。
家では、どんな親なんだろう。話を聞きながら、わたしはずっと、そのことを考えていました。
週に1回のクレーム、コロナ、そして初めて見る親の疲れた顔
この投票の件ほど大きくはなくても、些細なクレームは週に1回は入る。親は、そう言っていました。
長く教師をやってきた親が、ここまで疲れた顔をしているのを見たのは、わたしは初めてで。正直、心底心配になりました。
しかも今年は、コロナのこともあって。親も先生も、より神経質になっていたそうです。
感染対策で、常に気を張っていないといけない。少しでもミスをすれば、それがクレームや炎上につながる。そういう緊張感のなかで、毎日を過ごしていたといいます。
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もうすぐ解放される。でも来年は、誰かが当たる
もうすぐ、1年が経ちます。ようやく、あのクラスから、あの親たちから解放される。うちの親も、それを喜んでいました。
来年は、その親たちがいないクラスになれたらいい。わたしも、そう思っています。
でも、です。
うちの親が担任を外れるということは、その分、誰か別の先生が、あの2人を受け持つということでもあって。それを考えると、なんだか、その先生がとてもかわいそうに思えてくるんです。
せめて。あの2人のモンスターペアレントが、また連携してしまわないように。同じクラスにはしないように。学校側がそこだけでも対応してくれたら、と。
そんなことを、願わずにはいられません。
保護者対応に、ひとりで気を張り続けている先生へ
今回の話でいちばん印象に残ったのは、モンスターペアレント本人ではなく、その子どもたちが最後に場を収めたという一点でした。理不尽の渦中で消耗していくのは、たいてい正面で受け止め続ける担任ひとりです。子どもが好きという気持ちと、職場の構造に削られていくことは、本来まったく別の話なのだと思います。
困った時の選択肢
【今の職場以外の働き方も、少し知っておきたい先生へ】
毎日クレームに気を張り続けていると、視野がその職場だけになっていきます。すぐ動かなくても、教員以外の仕事の年収や口コミ、選考の進み方を眺めておくだけで、気持ちに逃げ場ができることがあります。
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気を張り続けた一日の終わりには、目元や首元をじんわり温めるアイマスクのような道具で、ひと息つく時間も大切にしてください。

