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上場ベンチャー制作部4年で見た闇|タレントマインドの仮面文化と指名制リストラのリアル

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「私はあなたの味方です!頑張ってくださいね!」

笑顔でガッツポーズを送り出してくれた人事の方。

だが、入社初日、その人事は仏頂面で目を合わせてもくれませんでした。

これは就職氷河期の終わりに上場したてのベンチャー企業に入社した私が、4年間で見た「タレントマインド」と呼ばれる仮面文化のリアルな話です。

📌 体験者プロフィール

年代・性別:20代女性(体験当時22歳〜26歳)

業界・職種:上場したてのベンチャー企業・制作部(コピーライター)

雇用形態:正社員

企業規模:上場したてのベンチャー(中規模)

在籍期間:4年

当時の立場・役職:制作部 コピーライター

退職状況:退職済み

体験形態:実体験ベース

当時の年収:270万円(入社時)〜360万円(退職時)

※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。

就職氷河期にようやく掴んだ内定先

就職氷河期で、なかなか内定をもらえずに苦しんでいた私。

ようやく内定を勝ち取れたのが、上場したてのベンチャー企業でした。

面接時にアテンドしてくれた人事の方は、すごく明るい笑顔で対応してくれました。「私はあなたの味方です!頑張ってくださいね!」とガッツポーズで送り出してくれたその姿は、今でも鮮明に覚えています。

氷河期の中で内定を1社でも掴めた喜びと、温かく迎え入れてくれた人事の人柄に、私は希望を抱いて入社を決めました。

入社初日、笑顔だった人事の豹変

内定者研修という名のアルバイトで初めてオフィス内に足を踏み入れた時、私は驚きました。

面接時にあれだけ明るい笑顔だった人事の方が、仏頂面で活気のない目つきをしていたのです。

「〇〇さん!」と内定者たちが駆け寄って挨拶しても、笑顔も見せてくれない。あの時の温かさはどこに消えたのか、と戸惑いました。

「面接では仮面をかぶって演技していたんだな」

そう気づいた瞬間、私の中の何かが少しだけ冷めました。

「タレントマインド」という社内固有の仮面文化

入社後、私はこの会社に「タレントマインド」という行動規範があることを知りました。

簡単に言えば、TPOに合わせた振る舞いをすることが評価される文化です。面接で学生たちに明るい笑顔を見せるのは、タレントマインドに則った正しい行動。だから、入社後に仏頂面に戻ることは、彼らの中では何の矛盾もないのです。

「人事の人は嘘をついていたわけじゃない」

そう頭では理解できても、心はざらつきました。「相手の顔色を見て使い分ける」という文化が、会社全体に浸透していたのです。

見た目で決まる「あだ名」というハラスメント

新卒で入社した後は、全員が営業研修を受け、その後各部署に配属されます。私は制作部に配属されました。

制作部では、クリエイティブを気取っているのか、各拠点の上司が変なあだ名を付ける風習がありました。上司のタイプによっては付けない拠点もありましたが、私のいた拠点では日常的でした。

実際に付けられていたあだ名は「ぺぺ」「ビーバー」「坊主」「エイ」「ベンツ」など。出っ歯、目が離れている、目が細くて丸顔といった、外見の印象から付けられるあだ名がほとんどです。車好きの上司は、好きな車の名前をあだ名にすることもありました。

今思えば、明らかにハラスメントに値する風習でした。ですが、当時はそれが当たり前で、誰も声を上げられない空気がありました。

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上司の趣味知識マウントと「失敗100円貯金」

30代の上司が、20代の新卒に対して「こんなことも知らんのか」と知識のなさをバカにすることもよくありました。

問題は、その知識が仕事に直結する内容ではなかったこと。プロ野球の球団の本拠地、主要選手の名前、アクセサリーブランド、車のブランドなど、上司の趣味に関する話題ばかりでした。それを仕事中にみんなの前で言われるのです。

さらに「失敗100円貯金」という制度もありました。誤字脱字をする、クライアントへの電話で噛んでしまう、そういった失敗をした時に、100円を貯金箱に入れる仕組みです。貯まったお金は個人に還元されず、部署の飲み会で使われていました。

「身銭を切らせればミスは防げる」

そういう発想だったのでしょうが、実際にそれで誤字脱字や電話対応が改善された様子はありませんでした。最終的に部下がストレスを感じて、マネージャーに相談したことで、この風土は廃止されました。

月末駆け込みで椅子3つ並べた仮眠の日々

この会社は営業会社なので、制作部でも数字の目標がありました。月ごとの目標を達成すれば、5,000円のインセンティブが支給されます。

ただ、営業職にも数字の目標があるため、営業メンバーが月の目標を達成しようとして月末に駆け込み受注をかけ、月初は疲れて受注が鈍る、という悪循環が浸透していました。

制作部の仕事は、営業が受注してから発生します。だから自然と月末に仕事が立て込みます。

通常なら3日の制作期間が必要な案件でも、月の目標を達成するためには2日や1日といった短納期で仕上げなければいけません。自宅に帰る時間も惜しくて、私は会社に泊まり込んで仕事を続けました。椅子を3つ並べて仮眠を取り、トイレで顔を洗うのが当たり前の日々でした。

時には、一度退社した後に営業から受注の連絡があり、会社に戻って制作に取り掛かることもあったほどです。

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指名制リストラで消えていった新人たち

不景気の影響で会社の業績が厳しくなった時、さりげないリストラが始まりました。

法律上、退職勧告はできない。だから、会社が取った手段が「指名制」の導入でした。

クライアントが制作担当を指名するシステムに変更されたのです。指名が少なければ担当できる仕事も少なくなる。仕事が少なければ目標を達成できず、インセンティブも昇給も昇格にも繋がらない。

評価もされないので、評価面談で「この仕事は向いていないのではないか」「この先も昇給や昇格は期待できないよ」と伝えることで、自主退社に誘導するのです。

指名制は、構造的に社歴の長いメンバーに指名が集中する仕組みでした。だから新人はろくなスキルも経験も身に付かないまま、会社を去っていきました。入ったばかりの後輩たちが、何の力も付けられずに辞めていく姿を見るのは、本当に辛かったです。

4年で辞めた後に気づいたこと

4年間勤めて、私は退職を決めました。退職時の年収は360万円。入社時の270万円から少しは上がっていました。

辞めて気づいたのは、あの「タレントマインド」と呼ばれていた仮面文化が、自分の心をどれだけ削っていたかということです。

笑顔を作って演技する。本音は隠して表面だけ取り繕う。それを評価される会社では、自分が何を感じているのか、自分でも分からなくなる瞬間がありました。

転職後、相手の顔色を窺いすぎず、思ったことをそのまま伝えられる職場に変わったことで、心の奥が軽くなったのを覚えています。

これから就職活動をする方には、面接時の笑顔だけで会社を判断しないことをおすすめします。内定者研修や入社初日に、面接時とは違う顔を見せる人がいたら、その会社の「本当の文化」がそこに表れていると思います。

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編集部より

この体験談で最も不気味なのは、ハラスメントそのものより「タレントマインド」という言葉で態度の使い分けが正当化されていた点です。面接で味方だと言った人事が、入社初日には仏頂面になる——それが矛盾ではなく”正しい振る舞い”として運用される。相手の顔色で表情を切り替えることを評価される環境に長くいると、本人が振り返っているとおり、自分が何を感じているのかまで分からなくなっていきます。外見でつけるあだ名も、失敗100円貯金も、指名制リストラも、その”本音を消す”文化の上に乗っていたのだと読めます。

演技を評価される場所で自分の感情が麻痺していくのは、気の持ちようの問題ではありません。違和感が消えない職場ほど、抜け出した先で初めて「削られていた」と気づくものです。

困った時の選択肢

【広告制作・ベンチャーの仮面文化から抜け出したい20代の方へ】

「本音を出せないのが当たり前」になっている職場ほど、それが普通かどうかを社内では判断できません。新卒で入った会社しか知らない20代の方なら、第二新卒・若手の転職に強いエージェントに、ほかの職場の基準を一度見せてもらうのが近道です。

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