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電機メーカー子会社の開発設計を10年で退職|妻の「私か会社か」で目が覚めた

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月100時間のサービス残業と、10年間ほとんど変わらなかった給料。

それでも「エンジニアとして偉くなってやる」と意気込んでいた新人時代の自分を、今も少し愛おしく思います。

これは、そんな地元の電機メーカー子会社で10年働き、妻の一言で目が覚めた私の話です。

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📌 体験者プロフィール

・年代・性別:50代男性(体験当時22歳〜32歳)

・業界・職種:電機機器メーカーの開発設計エンジニア(モータ・発電機等の開発設計)

・雇用形態:正社員(大手電機メーカーの子会社)

・在籍期間:10年

・当時の立場・役職:開発設計エンジニア(勤続6年で主任)

・退職状況:退職済み(競合の大手電機メーカーへ転職)

※プライバシー保護のため、個人が特定されない範囲で仮名化・一部詳細を変更しています。

共通一次とセンター試験の狭間で、地元の電機メーカーに拾われた

大学は上京して、電気電子工学を専攻しました。

でも思い返すと、最初のボタンの掛け違いは大学受験からだったのかもしれません。現役の年が共通一次試験の最後の年で、私は一浪したので、その次の年から始まったセンター試験の一期生になりました。制度の変わり目に、ちょうど当たってしまったわけです。

就職活動もそうでした。現役で入った同級生たちは、景気のいいうちに大手企業へすんなり決まっていきました。私は一浪した分だけ卒業が一年遅れ、しかもそこにバブル崩壊が重なりました。新卒採用を絞り始めた企業が、地元志向の学生から順に切り捨てていくような空気があった年です。

実家は農家で、百姓仕事も手伝いながら通える範囲で、専門も活かせる。そういう条件で選んだのが、地元の電機機器メーカーでした。大手電機メーカーの子会社で、親会社が手を焼くような面倒な電機製品を一手に引き受けている会社です。担当はモータや発電機など、電機機器の開発設計でした。

本当はもっと大きな会社に行きたかった。それでも当時はまだ世間知らずで、この会社で偉くなってやろうと、変に意気込んでいたのを覚えています。

新人1年目、現場実習という名の洗礼

その意気込みは、社会人1年目でいきなり揺さぶられました。

前の年までは景気がまだ良く、新人研修は2ヶ月で終わって現場に配属されていたそうです。ところが私の代からバブル崩壊で現場の派遣スタッフを切ったせいで、代わりに新人が丸1年、現場実習という名目で応援に回されることになりました。しかも夜勤付きです。

今なら間違いなく問題になる話だと思います。ただ当時は知る由もなく、大学まで出てライン作業をやらされることへの不満はありつつも、若くて体力もあったし、夜勤手当が思いのほか良くて、悪くないなとすら感じていました。

その間には一時帰休もありましたし、賞与が現金でなく親会社のお下がりのパソコンで支給されたこともあります。今振り返れば最悪の時期だったはずなのに、当時はまだそれをどこかで受け入れていたんです。

「優良企業」の正体は、親会社からの天下り先だった

勤続2年目からようやく正規に開発設計の仕事に就けて、喜んだのもつかの間でした。

外向きには電機機器の開発設計エンジニアという肩書きは、格好よく聞こえます。実際、当初はこの会社で出世してやるという気持ちを、まだどこかで持ち続けていました。

その気持ちが揺らいだのは、3年ほど働いた頃です。子会社というのはこういうものかと、初めて実態が見えてきました。戦前から地元にある「優良企業」の正体は、国内最大手クラスの電機メーカーの子会社。社長から部長まで全員が親会社からの天下り出向で、生え抜きの人間がたどり着けるのは課長止まりという現実です。

それでも腐らずにいられたのは、エンジニアという肩書きに、まだ意地を張っていたからだと思います。

関連記事:電機メーカー開発設計10年で退職|月100時間サービス残業と手取り20万のブラック企業

月100時間のサービス残業と、辞めていく先輩たち

現実の厳しさは、そこからが本番でした。

表向きは電機機器設計開発エンジニアという格好いい仕事です。でも実態は、月100時間程度のサービス残業が当たり前で、残業代はゼロ。これも立派な違法行為ですが、90年代の中小企業では、そういうサービス残業がどこも当然のようにまかり通っていた時代でした。そしてそれを先輩たちと一緒になって、当たり前のようにやってしまった自分も、大馬鹿者だったと思います。サービス残業は絶対にやってはいけない違法行為で、結果として誰の得にもなりません。

顧客から求められるのは、難しい新型機器を、とにかく早く仕上げることばかり。納期に追われる毎日でした。

そうしているうちに、ある程度は想像がつく話が起きはじめます。優秀な先輩や同僚から、次々と、止めどなく辞めていくんです。

それでも20代は、本当に楽しかった

勤続4年目あたりから、専任で大手企業のエンジニアと技術交渉をさせてもらえるようになりました。正直に言うと、この頃は本当に楽しかった。

もうお金とか仕事とか、理屈じゃなかったんです。ただただ、自分が主担当として大手のエンジニアと技術のやり取りができる、その喜びに満ちていました。車載から事務機器、産業用、農機具に至るまで、ありとあらゆるタイプのモータや発電機を開発しているというだけで、楽しくてしかたがなかった。

あの頃にあった、若さゆえの無限のパワーみたいなものは、歳を取ってからでは分からないものだと思います。あの経験は今の自分の礎になっていて、その後の人生にもずいぶん役立っています。

そうやって年月が過ぎていきました。給料は低いままでしたが、仕事は楽しく、サービス残業も何とも思わず、黙々と真面目に働いていたんです。

主任昇進、そしてお見合い結婚

入社6年目で主任になり、手当がわずかに付いたことで、浮かれていた時期がありました。

その頃、地元の女性とのお見合い話があって、結婚することになりました。でも今にして思えば、これも自分の会社がブラック企業であることを、あらためて突きつけられるきっかけになったんです。

「私か会社か、選んでください」

新婚なのに毎晩帰宅が遅く、それでいて手取りは20万そこそこ。妻でなくても、それはおかしいと感じるはずです。妻は「残業代が出ていないんじゃないの」と、だんだん気づき始めていました。

そして結婚から3年目、その時がやってきます。妻からこう切り出されました。

「こんな安い給与で子供なんて持てないでしょ? 貴方は仕事ばかりで殆ど家に居ないし、なのに給与は安いし、どうやって生きていくつもりなの? 私か会社か、どっちか選んで下さい」

今にして思えば、当然のことを言われただけです。自分が妻の立場でも、同じことを聞いたと思います。不安にさせて、心身ともに貧しい生活を強いてしまった。その責任は自分にあると感じました。

私はこう答えました。

「分かった! もっとまともな会社に転職するよ。それでいいかな?」

妻は納得してくれました。

10年目の退職と、今の暮らし

それからは仕事を少しずつ抑えて、妻と二人三脚で転職活動を始めました。会社側もうすうす感づいていたと思います。でも辞めていった先輩たちのときと同じで、そもそも会社自体がブラックなわけですから、辞める人間が悪いというより、会社として引き止める術がなかったんだと思います。

最初の会社に勤めて10年目の年に、退職届を出しました。運よく、大手の競合他社の研究所に再就職が決まりました。モータや発電機の開発設計で積み上げてきた経験を、高く評価してもらえたんです。

今は大手電機メーカーで安泰に働きながら、子供も増えて、家族4人で仲良く暮らしています。

振り返って思うのは、サービス残業を当たり前だと思うことが、どれほど危険かということです。家族を持ちたいなら、給料が安定していて、ちゃんと守ってくれる組織を選ぶべきでした。そして、立場の弱い組織には最初から入らないこと。入ってしまえば、そこは簡単には抜け出せない場所になります。下手な中小企業で消耗するくらいなら、自営業のほうがまだましだったかもしれません。

関連記事:電気設計エンジニア30年目|ホワイト企業だったはずの会社が不正会計で崩れていった話

「サービス残業が当たり前」の職場から抜け出せずにいる人へ

「業績が厳しいから」のひと言で据え置かれた給料と、月100時間のサービス残業を当たり前だと思い込んでしまうのが、こうした職場の一番厄介なところです。エンジニアとしての誇りや地元に残るという選択が、逃げ遅れの一因になることも少なくありません。辞めどきは、案外、家族の一言で見えてくるものです。

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